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次世代を担う注目の若手映画スターたち

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2005年9月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

今日本の韓流ブームを担っているのは、ドラマで素敵なキャラクターを演じている美男俳優たち。次から次へと登場する花のように美しい男優たちの存在は、日本女性たちの目に潤いを与えている。

一方、目を映画のほうに転じると、ドラマスターとは少々異なり、ビジュアル重視というよりも、演技力に比重を置いた、存在感のある俳優がスターとして君臨している。現在の韓国映画界の3人の看板スターといわれているのは、『殺人の追憶』『JSA』のソン・ガンホ、『オールド・ボーイ』『シュリ』のチェ・ミンシク、『オアシス』『シルミド』のソル・ギョングだ。


そして今、彼らに続く、次世代トロイカ(3頭立ての馬車のことで、ここでは3本柱という意味で使われている)と呼ばれている3人の若手映画俳優がいる。『マラソン』『ラブストーリー』のチョ・スンウ、『殺人の追憶』『菊花の香り~世界で一番愛されたひと』のパク・ヘイル、『品行ゼロ』などのリュ・スンボムだ。いずれも特に顔が目を引くハンサムというわけではないが、見ていくうちに、この人なんかいいなあと思わせる魅力を持っているのだ。映画の世界で描かれる、人間味のある、内面に様々なものを抱えた姿を体現するのに適した演技力と、彼ら特有の個性溢れる存在感を感じさせてくれる面々なのだ。

今日に至るまでの道のりはそれぞれだ。

チョ・スンウはミュージカル俳優を目指していたときに『春香伝』のオーディションに合格して映画の世界に入ったが、注目を浴びても、浮き足立つことなく、ドラマなどのオファーも断り、小劇場に活動の場を求めて演技の研鑽を積んだという。ミュージカルと映画の世界を横断しながら、ソフトに柔軟に、どんな役にでも溶け込める実力を身につけている。『ラブストーリー』の純粋な恋に生きる素朴な青年や、『H』での猟奇殺人犯、『マラソン』での自閉症の青年などの演じわけを見れば、その実力と魅力が分かるだろう。近年はそこにカリスマ性も加わり、特に昨年から今年にかけては主演した作品が軒並み大ヒットし、‘チョ・スンウブーム’が巻き起こるほどの人気を博している。

パク・ヘイルは演劇畑出身。舞台での演技を監督に見初められて映画デビュー。演劇の舞台で培われた内面心理の表現力に定評がある。デビュー当時は中性的で、植物的な印象を受ける物静かな男性のイメージだったが、この夏韓国で公開された『恋愛の目的』では、女垂らしでずうずうしい男を演じて、気だるいセクシーさを見せてくれた。かつて彼を演出した監督は、セリフをちゃんと自分の言葉にして表現することのできる演技者だと彼のことを褒めていた。

もうひとり、リュ・スンボムは、ひときわ個性が強い。一目見たら忘れられないような、ジャガイモのようなごつい顔立ちをしている。デビューのきっかけは、映画監督の兄リュ・スンワンが、自主映画のノリで作ったデビュー作の主演に弟のリュ・スンボムを使ったのがきっかけ。それ以降、コミカルでもあり、切実でもあり、ぶっきらぼうな優しさがにじむ男性像を演じ、引っ張りだこの存在に。前出の2人と違い、リュ・スンボムはドラマで主演を務めることもあり、花美男が主役を演じる傾向の多いドラマ枠で、希望を与える存在になっている。

韓国で求められるのは、まず実力。そして映画スターになるには、カリスマ性が必要になってくる。当初はこの3人も地味な印象だったが、主演作を一つ一つヒットに導いていくにつれ、自信が余裕につながり、実直な姿勢は失わないまま、自然とカリスマが身についてくるようになった。是非彼らの作品・演技にご注目あれ。