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読めばさらに楽しんで見られる『オールド・ボーイ』『天国の階段』の注目俳優の㊙エピソード

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2004年12月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

この秋も続々と公開されている韓国映画、ドラマの中で、目を引く俳優たちのエピソードを紹介したい。

11月公開予定の『オールド・ボーイ』は、チェ・ミンシクの鬼気迫るような怪演が話題となり、数々の主演男優賞を獲得したが、若手のユ・ジテの演技もとても印象的だった。

それまでのユ・ジテといえば、『リメンバー・ミー』『春の日は過ぎゆく』などで、素朴な味を残す、純粋な心を持った柔らかな面差しの青年というイメージだったし、実際の本人もそうした雰囲気の人なのだが、『オールド・ボーイ』では、その印象を覆す悪役を演じきっている。大企業のトップに君臨し、すべてに恵まれているかのように見えるが、精神的にどこか病んでいる男。一人の男を15年も監禁し解き放ったあと、もてあそぶかのように生死をかけたゲームを提案し、何を考えているのかわからない不気味さを漂わせている。


パク・チャヌク監督いわく、この役は「この映画の中の最大のやりがいだった」ということで、表情やセリフの一言一言までユ・ジテと討論しながら一緒にキャラクターを作り上げていったのだそうだ。

チェ・ミンシクというずば抜けた演技力を誇る大俳優を相手にする悪役だけに、引けをとらない存在感を出し、強い印象を与えなければならない。キャスティングも難航したそうだが、決定した後は、ユ・ジテは深夜にもセリフの練習を見て欲しいと監督に申し出るほど熱心に取り組み、期待にこたえた。羊のような柔和な顔から生まれる笑顔ひとつとっても、瞳が笑っていないような、相手に恐ろしさを与える微笑をうまく生み出している。

また劇中で、ユ・ジテがヨガの‘バッタのポーズ’をとりながら涙を流すシーンが出てくる。これは背中を反り返るという大変難しいポーズだが、ビジュアル的に非常にインパクトがあり、この人物の空虚な心のうちを如実に表す名場面なのだが、ユ・ジテはこのポーズができるようになるために、たったワンシーンのために3ヶ月ヨガの訓練を受けたそうだ。186センチの長身の彼の手足の長さがまた不気味さを増幅し、とにかく作りこまれたキャラクターなので、是非見てみて欲しい。

もう一人の注目の俳優は『天国の階段』の1話から3話までの主人公たちの少年時代に登場してくるイワン。彼はキャスティングされた経緯が面白い。彼の実の姉のキム・テヒが同ドラマでヒロインのライバル役で出てくるが、その彼女の手帳に貼ってあった弟の写真を見た監督が一目で気に入り、電撃キャスティングしたのだ。反抗的で、孤独な心を抱えた少年という設定だけに、特に彼の放つカリスマ漂う強烈な瞳がキャスティングの決め手だった。

当時の彼は、大学の体育学科に通う、演技の経験など全く無しのずぶの素人。だから決まってから撮影本番までの間、監督直々にスパルタ特訓を行ったという。イワンにとって、今までにこれほどつらい思いをしたことはなかったというくらいだったそうだから、いかに厳しい演技指導だったかがうかがえる。

どんなにポッと出に見えても、実は数年演技を勉強した経験があるという人が多い韓国で、こうしたケースは珍しいが、やはり彼も監督の期待にこたえて強烈な印象を残し、その後は別のドラマで主役の一人に抜擢され、一気にスター街道をまっしぐらとなっている。

制作陣はもちろん、視聴者も演技に対する要求が高い韓国なので、俳優たちもこうした厳しい目に育てられていくのだ。

延長戦コラム

『冬ソナ』ではペ・ヨンジュンのピアノシーンの代役も。韓国で最も注目される23歳の作曲家

カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した『オールド・ボーイ』は、日本の、土屋ガロン原作、嶺岸信明画による全8巻の同名漫画(双葉社刊)が原作だ。映画化するに当たっては、主人公を監禁した理由と、その監禁の年月という決定的な部分を変えてあるが、他の細かいエピソードなどは比較的忠実に入れ込んでいる。

ところで、映画『オールド・ボーイ』で印象的なのは、役者たちの演技のほかに、音楽がある。いつまでも頭の中に残る曲の数々は3人の作曲家によって制作されたが、中でもメインに使われるワルツ調の曲を作曲したイ・ジスはまだソウル大学作曲学科に在学中の23歳。『冬のソナタ』の「初めて」という曲の作曲者でもあり、ペ・ヨンジュンがピアノを弾くときの手の代役をしたのも彼だ。

『JSA』、『ラブストーリー』などの映画音楽で知られる有名なチョ・ヨンウク音楽監督に才能を認められ、無名の新人ながら『オールド・ボーイ』や、他に『シルミド/SILMIDO』でも音楽を任され、荘厳でハードな曲を作っている。韓国の映画界はプロデューサーも監督も若いが、こうした無名の者にもいいと思ったらどんどん任していくという勇気や決断が次世代の才能を伸ばしていくのだろう。

 

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天国の階段