映画解説
強力おすすめ
タイトル | 炎のように蝶のように |
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韓国公開年 | 2009年 |
出演者 | チョ・スンウ スエ チョン・ホジン チェ・ジェウン キム・ヨンミン |
監督 | キム・ヨンギュン |
【 映画紹介 】
『炎のように蝶のように』は、
19世紀の末の朝鮮時代26代王、高宗の妃、明成皇后と、
彼女を愛し抜いた1人の護衛武士との愛の物語です。
明成皇后といえば、西洋文化が入り込んできた時代、
列強各国の勢力争いの中で嵐のような生活を送り、
夫である国王には愛されず、舅とも政治的な葛藤ゆえに対立し、
その結果に悲劇的な死に至った皇后として有名です。
そんな歴史上有名な彼女をヒロインに据えて、皇后であると同時に
1人の女性であったミン・ジャヨンとしての姿をも映し出し、
炎のように熱く、蝶のように純粋に皇后を愛した護衛武士の
激しくも悲しい愛を感性たっぷりに描いていきます。
ヤ・ソルロクの同名の武侠小説の映画化で、
『ワニとジュナ』のキム・ヨンギュン監督がメガホンを取りました。
『ワニとジュナ』でもコンビを組んだチョ・スンウを主演に、
明成皇后にはスエが抜擢されました。
チョ・スンウが演じるのは
身よりもなく殺し屋として生きてきた男の役で、
王に嫁ぐことが決まっていたミン・ジャヨンと出会い、
彼女のことが忘れられず「彼女が得られないなら守る立場になろう」と、
命をかけて護衛武士の座を勝ち取り、そばで守り続けます。
本作の見どころはなんといってもチョ・スンウ!
愛への情熱がほとばしり、
ケレン味たっぷりに「俺を見ろ!」的な演技を見せ、
愛に命をかける男のかっこよさを炸裂させています。
凛として美しく、孤独な明成皇后を演じたスエは、
柔らかな外見に似合わぬ低音の声が
皇后の毅然とした威厳をかもし出し、
強くならねば生き残れなかった皇后の哀切を伝えています。
チョ・スンウの皇后をおぶって逃げる姿、
愛する彼女が王に抱かれているのを
そばで見ていなければならない男の苦悩、
彼女のために命を捨てる覚悟で大軍に向かっていく背中、
洞窟の中で彼女を温めてあげる様子など、
キム・ヨンギュン監督の愛の描写がいちいちツボで、
「ひゃー!」と言いたくなるほど萌えました(笑)。
決して越えることの出来ない
‘身分’ という壁を隔てた二人の愛の物語で、
個人的に大変 ‘萌えた’ 作品です。
2人の関係には “オスカルとアンドレ” のような
主従萌えな感じもあるので、
宝塚が好きな人なども楽しめるのではないかと思います。
1人の男に命がけで愛されるのが女にとっての永遠のロマンとすれば、
1人の女を命がけで守り抜くというのも男のロマン。
そんな女と男のロマンが炸裂している作品です。
韓国で人気の武侠小説が原作のせいか、
途中でゲームのようなアクションシーンが登場するのですが、
そこはさらっと流していただいて(笑)、
狂おしいまでの激しい愛の世界に身を委ねてほしいですね。
この映画は、歴史的事実とそこに映画的想像力を膨らませて劇的なドラマを作り出し見るものの好奇心を刺激していくジャンルで、韓国では‘ファクション映画’といわれています。実際、明成皇后は、16歳で宮に入り、40代半ばで殺害されています。そうした30年にわたるドラマを映画ではひと時に集約して見せています。また護衛武士ムミョンにもモデルがいまして、1882年の軍乱があった当時、明成皇后を背負って逃げ、日本軍が攻め込んできたときにはこれを阻んで結局殉国した洪啓薫(ホン・ゲフン)将軍です。その実在の人物からインスピレーションを受けて皇后のために全てを捧げた人物として献身的な愛が描かれました。