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ペパーミント・キャンディー

『ペパーミント・キャンディー』は、ある一人の男の20年史を、時間を遡って描いた作品です。

1999年。株式投資に失敗し、友人に裏切られ、あげく妻子にも捨てられた40歳のキム・ヨンホ(ソル・ギョング)。絶望して自殺を試みようと線路に立ったその時、フィルムは逆戻りし始め、この男の20年間にいったい何があったのかを、3日前、5年前、12年前…というように時間に逆行して、ヨンホの決定的な人生の瞬間を描いていきます。そして同時に韓国の政治状況、社会情勢がいかに彼の人生に影響を与えてしまったかを浮き彫りにしていきます。

あのときああしていれば…、誰もが秘かに感じる遠い日への後悔を刺激し、見終わったあとはとても切なくなるヒューマンドラマです。

メガホンを取ったのは、教師、小説家、舞台演出家として活躍し、この2年前に『グリーン・フィッシュ』で映画監督デビューしたイ・チャンドン監督です。

純粋な20歳の頃から、心がすれきった40歳までを見事に演じきったのはソル・ギョング。この作品は彼の存在を一躍世に知らしめることとなった出世作です。

韓国の人にとっては心の痛みとなっている光州事件が話の根幹に関わっていて、多かれ少なかれ主人公と同様の思いをした人が多かったのでしょう。公開当時、韓国の30代半ばぐらいの人は皆この映画を「僕たちの映画だ」と言っていました。それだけ観客に共感を与えたこの作品は、当初細々と封切られましたが、感動した大衆による口コミで上映館がどんどん増えていくという異例の社会現象をも巻き起こしました。

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