映画解説

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タイトル
韓国公開年 2005年
出演者 ハン・アルム チョン・ソンファン ソ・ジソク
監督 キム・ギドク

【 映画紹介 】

『弓』は、船の上で暮らす老人と少女の幻想的な愛の物語です。

海の上に浮かぶ釣り船。そこには老人(チョン・ソンファン)と、幼いときに拾われてきて以来、10年ものあいだ外の世界を知らずに育った少女(ハン・アルム)が2人で暮らしていました。老人は少女のために弓で音楽を奏で、ときおり訪れる釣り客たちのいやらしい誘惑から少女を守るために威嚇の弓を放ち、そして客に請われれば弓で占いもします。老人は少女が17歳になったら結婚しようと少しづつ婚礼衣装を買い集め、純情な少年のようにその日を心待ちにしていたのでした。それが老人と少女の日常でした。

そんなある日、若者(ソ・ジソク)が釣り人として船に乗って来たときから、少女の心には、若い男性への、そして広い世界への憧れが芽生えてくるのでした。

監督は、『サマリア』でベルリン映画祭、『うつせみ』でヴェネチア映画祭でともに監督賞を受賞するという快挙を成し遂げたキム・ギドク監督。本作でも、‘弓’をモチーフに、人間の欲望と希望、そして残酷な本能を、ヘグムという韓国の伝統楽器の調べに乗せて、ほのかにエロチシズムが漂う一編のおとぎ話のような世界に作り上げました。

老人には舞台俳優出身のチョン・ソンファン。舞台で鍛えた圧倒的な声量を誇る人ですが、ここでは一切セリフのない役を演じています。『サマリア』のハン・ヨルムが、無垢でありながらも魅惑の微笑みで男たちを惑わす少女を演じ、ドラマ『19の純情』のソ・ジソクが青年に扮しています。

tashiro

いかがでしたか? この作品はキム・ギドク監督の12作目に当たりますが、キム監督の映画をずっと見続けてきた人にとっては、そこここにこれまでの映画に登場してきたイメージが出てくることが感じられるでしょう。
ところで、普通映画の公開前にはマスコミ向けに試写を行い評を書いてもらったりPR活動を行うのですが、この『弓』のときは監督の意向で試写会を一切行わず、ポスターとスチール写真をそれぞれ1枚づつ公開するのみで初日を迎えました。「観客がマスコミで報道された内容で先入観を持たずに映画を見てもらいたい」とのこと。韓国で異端児とも言われているキム監督だけに、とことん独自の道を進んでいるという感じですね。