映画解説

映画解説一覧に戻る

noimage

おすすめ

タイトル 黒水仙
韓国公開年 2001年
出演者 イ・ジョンジェ アン・ソンギ イ・ミヨン チョン・ジュノ
監督 ぺ・チャンホ

【 映画紹介 】

『黒水仙』は、連続殺人事件に潜む、歴史の悲劇に引き裂かれた切ないまでの愛を描いたミステリー・アクションです。

メガホンを取ったのはペ・チャンホ監督。『鯨とり~コレサニャン』『ディープ・ブルー・ナイト』などの作品で80年代最高の興行監督と言われた人気監督。90年代に入り、興行重視ではない、テーマ性の強い作品作りをしていたのですが、久々に大手資本の下、オールスターーキャストで取り上げたのが『黒水仙』です。

物語は、現代のソウル。連続殺人事件が発生し、それを追う刑事が、事件の背景に朝鮮戦争時代、韓国の南端にあるコジェ島にあった北朝鮮軍捕虜収容所での出来事が関係していることを突き止め、真実に迫っていくというストーリーです。

タイトルの「黒水仙」とは、捕虜たちを逃がす使命を負った女性労働党員の暗号名のことで、この女性と、小作人との50年に及ぶ愛が作品の核になっています。

捜査の過程で日本に飛ぶシーンがあり、宮崎県がロケに使われています。

キャストは、『シルミド』『MUSA武士』などのアン・ソンギ。彼は80年代ずっとペ・チャンホ監督と一緒に作品を撮ってきた盟友で、久々の共同作業となっています。そして刑事役として物語の狂言回しのような役どころになるのはイ・ジョンジェ。ラブストーリーが多い人ですが、ここではスタイリッシュな刑事に扮してハードな魅力を打ち出しています。そしてヒロインに『純愛中毒』のイ・ミヨン、ほかに、チョン・ジュノが事件の鍵を握る人物に扮しています。

tashiro

互いを思い続けた二人の男女の胸痛む愛の絆。最後の、男の「誰も触るな!」という叫びが圧巻でしたが、この言葉は当時若者のあいだで流行したそうです。
ミステリーの形式をとりながら、描いているのは、朝鮮戦争とそのさなかの悲劇的な人間たちの運命と愛の物語で、ペ・チャンホ監督いわく、50年経った今でも朝鮮戦争は多くの人たちの心に傷を残しており、そういう人たちへのレクイエムにしたいという気持ちで制作したということです。一貫して人間と真摯に向き合うヒューマニズムあふれる作品を撮り続けてきたぺ・チャンホ監督だからこそ、強烈な映像の中にも、暖かさ、強い思いが伝わってくる作品に仕上がっていると思いました。