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魚と寝る女

『魚と寝る女』は、ヨーロッパ映画を思わせる美しい映像をバックに、生々しい男女の愛の営みとその愛への執着の果てが描かれる衝撃作です。

もやの立ち込める湖。その上に点々と浮かぶつり小屋。そして釣り客を運ぶ魅惑的な釣り場の女主人。何かが起きそうな予感ただよう空間が、見るものを一気に物語の世界に引き込んでいきます。

キム・ギドク監督は映画を独学で学んだ変り種で、美術センスが素晴しく、この作品でも監督、脚本のほかに美術も自ら担当しています。低予算でスターを使わない映画づくりで作家性の高い作品を作り上げることで定評があり、海外の映画祭の常連です。

身寄りなどいなさそうな釣り場の女主人は釣り客らに飲食物を売り、時には夜の相手もして生計を立てています。そんなある日、愛情のもつれから恋人を殺してしまった男がこの釣り場に逃げこんできて自殺を図りますが女主人に止められ、それをきっかけにしてこの二人の男女は親密になり、愛を交わすようになります。しかし、女の愛がやがて執着に変わっていき、悲劇を招くことになるという物語です。

ヒロインを演じているソ・ジョンは原始的なものを感じさせる個性派女優で、劇中一言もしゃべらず、目と表情だけで愛と悲しみを表現し、百想(ペクサン)芸術大賞の新人賞を受賞しました。かたや逃げ込んでくる男を演じるキム・ユソクはドラマ、映画に活躍し、大学で演技の講義も受け持っている実力派の俳優です。

そして同じキム・キドク監督の『悪い男』に出ていたチョ・ジェヒョンとソウォンが、コーヒーを運びに来る女とその雇い人という関係で出てきます。

この映画がベネチア映画祭で上映されたときには失神する女性客も出たと言うほどショッキングでちょっとえぐいシーンも出てきます。様々な意味で痛々しい映画です。

 

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