＜ストーリー＞
偉大なピアニストを目指していたものの、
現実はしがないピアノ教師をしているキム・ジス（オム・ジョンファ）と
環境に恵まれない天性の才能を持つ少年（シン・ウィジェ）が、
音楽を通してお互いの傷を癒していく映画です。
ジスは音大の教授になったり留学したりした友人たちに
コンプレックスを抱きながら、郊外でピアノ教師を続けています。
そんな彼女が出会ったのが、家庭環境に恵まれず
貧しい祖母との二人暮らしの少年。
成り行きで少年の面倒を見ることになったものの
実は彼は天性の音感の持ち主でピアノの才能があることを見抜き、
彼を育てれば自分のピアノ教師としての名声が上がるともくろんで
少年に熱心に訓練を施していくのでした。
＜感想＞
これまでマスコミ試写会で大泣きしてしまった映画が
『初恋のきた道』『ラブストーリー』『北京バイオリン』でしたが、
この『私の～』もその一本になりました。
ピアニストの夢に挫折した女性が郊外でピアノ教師となり、
母を亡くした少年と出会ってピアノを教えていくのですが、
ヒロインは自分の欲のために少年をいわば利用しようとしていたのに、
やはり本当の才能を目の当たりにすると、
そんな自分の欲など吹っ飛んで、
芸術家としての良心が、その才能の芽が摘まれてしまうことを
許さなくなるのだなあとつくづく感じます。
韓国映画にありがちなくどさがなく、
２、３の情報をちりばめるだけで、あとは観客の想像にゆだねていくので、
この監督と脚本家はセンスがいいなと思いました。
一番感動したのは、ピアノ教師であるヒロインも、
そして少年のおばあさんも、みんな事情があって
少年に対して気持ちとは裏腹なことを言うのですが、
それでもそれぞれの本当の気持ちがちゃんと少年に伝わっているところです。
そしてすべてがラストのラフマニノフのピアノ協奏曲第２番の演奏に
集約されてきて、この曲のドラマチックなメロディーが後押しをして、
思わず号泣してしまいました。