スター列伝・スターコラム

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略歴

イ・ナヨン

すーっと切れ上がった瞳、すらっと伸びた手足が印象的な美少女。女性というよりは少女という形容の方がピンとくる、スレておらず、清潔感溢れる雰囲気だ。

実は既に日本の映画にも出ていて、長渕剛主演映画『英二』のヒロイン役として、韓国では「日本映画進出第1号の女優」として注目度が高まった。

大学2年の時、街を歩いていてカメラマンにスカウトされファッションカタログのモデルをするようになったのがこの世界に入るきっかけだった。その後、タレントとして演技練習や発声訓練を積み、98年春『男女6人恋物語』のゲストでドラマに顔を出し始める。

ドラマ出演と並行して次々とCFに登場し一気に茶の間に親しまれるようになった。そんなCF女王が、99年1月から始まったドラマ『愛の群像』で本格的女優に挑んだ。この作品ではペ・ヨンジュンの妹役として、貧しさから脱しようと金持ち娘を引っ掛けることを目標にしている兄とは対照的に、兄が紹介する育ちのいい金持ちの友達には目もくれず、結局は幼なじみで問題ばかりを起こす兄の悪友との愛に価値を見いだす女性を演じた。ペ・ヨンジュンびいきで見ていると、この妹は純粋さが過ぎて結果的に兄に迷惑をかけることになっていくので、「もっとお兄さんのことを考えてあげて!」と歯がゆく感じる役どころだった。

ちょうどこの時に日本映画『英二』の撮影のために日本にも行かねばならず、行ったり来たりしながらこなしていたという。

この『英二』は、韓国・中国・香港・日本で行った国際オーディションで「透明な魅力の持ち主」ということで勝ち抜いた。やくざに騙されて日本に密航して来たいたいけな中国人少女を演じている。外見は中国人にぴったりなんだけど、やはり中国語が…。肝になる中国語のセリフ「愛してる」が、声調が違うから気になる!まあそれは小さいことか。

現場では契約書にはなかった上半身裸を要求されたそうで、この清純派になんということを要求するのだという感じだが、そこはなんとか後ろ姿だけならということで乗り切ったという。しかし、殴られるは、ベルトで打たれるは、それはそれは痛々しい。

韓国びいきの香港歌手レオン・ライのミュージックビデオにも登場し、そのさわやかな美少女ぶりは中華圏でも知られた存在になっている。

韓国での映画デビューはレオン・ライ主演の『天使夢』というSF映画で、女戦士をりりしく演じた。ちなみにこの作品、イ・ナヨンのきつい眼差しが戦いに挑む女戦士にぴったりでとてもいい存在感なのだが、いかんせん内容がチャチなので映画としては大コケしてしまい、彼女には残念な結果となった。

しかしそんなことでは彼女は商品価値は下がらなかった。映画『フーアーユー』では、水族館で人魚ショーをやる耳の不自由な泳ぎ手という、ナイーブで複雑な役どころを演じたかと思えば、ドラマでは『勝手にしやがれ』で、余命いくばくもない男と恋に落ちた少女を好演、内容自体も熱烈なファンが数多く生まれる佳作で、もはや‘人気CFタレント’というだけの呼び名ではなく、しっかりと‘女優’と呼ばれるにふさわしいスターに成長した。

2003年には『英語完全制服』で、きれいな顔に大きな眼鏡をかけていも臭い女性になりきり、チャン・ヒョクにかわいくも調子はずれに迫っていく一途な乙女をコミカルに演じて思い切ったイメチェンを図った。

造作が大きい顔立ちで華やかなのに、どこかはかなげな雰囲気を漂わせている。そこが大女優になる可能性大だ。凛とした雰囲気をいつまでも失わずにいて欲しい人だ。

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
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略 歴

1979年生まれのイ・ナヨンは、街中でスカウトされ、98年にモデルからスタートしました。妖精のような透明感のある純粋なイメージで人気ものになりました。実は、日本映画『英二』が映画デビュー作。ドラマでは『愛の群像』でペ・ヨンジュンの妹役などを演じていました。しばらくは‘CMで人気のアイドル’の域を出ていませんでしたが、彼女に転機をもたらした作品は、2002年の『フー・アー・ユー?』と、ドラマ、『勝手にしやがれ』。特にドラマでは、純粋に愛に向かうヒロインを演じて、存在感、演技力共に高く評価されました。翌年の映画『英語完全征服』では眼鏡をかけてコミカル演技に挑戦。続く『知り合いの女』では一人の男性を思い続ける、ユニークな存在感の女性を好演し、昨年の青龍映画賞で主演女優賞を受賞。思いもかけなかったのか、大粒の涙を流して喜んでいたのが印象的でした。
(05年6月)