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略歴

ソ・ジソブ 

ソ・ジソブ  律儀で義理がたい人

主演映画『映画は映画だ』(原題、08年)での圧倒的に放たれる男の色香はどうだろう。
静謐にたたずんでいてもにじみ出てきてしまう、むせかえるようなオーラ。
兵役から戻り、演技への渇望感を貪欲に満たさんが如く、溜めてきたエネルギーを放っている感じ。
前から素敵だったけど、着実にいい男になっている。
そんな画面での強烈なインパクトとは裏腹に、‘ソ・ジソブは’律儀で義理のある人’、というのが私の彼への印象だ。
二〇〇七年の四月で二年二カ月の兵役を終え、除隊後すぐ、五月に来日したのだが、その時、短い時間ながら話をする機会があった。
実は入隊前に初の公式来日をしたときにインタビューをしたのだが、そのときに他の取材のアレンジもお手伝いしたことがあった。
それを、スターであるソ・ジソブ本人が覚えていてくれて、「初来日のときにお世話になった方だから、除隊後絶対にご挨拶をしたかった」ということで、「あのときはありがとうございました」とお礼を言ってくれたのだ。
表立って手伝ったわけでもないのに、これにはびっくりした。

『ごめん、愛してる』(04年)が日本で放送された今ではとても人気者なので、自然と取材は殺到する彼だが、それ以前のことを忘れずにいるなんて、となんて律儀で義理がたい人なんだろうと感激した。
「軍隊生活はいかがでしたか」との私の問いに、
「僕はもともと水泳の選手だったから体育会系で、規則正しい団体生活を送っていたから慣れていました」
と語り、無口なことで有名な彼だが、なんとか一生懸命しゃべろうという気持ちが伝わってきた。
「以前お会いしたときよりも元気な感じになりましたね」などとも言われ、「えー!? 私の顔の表情まで覚えていてくれたのかしら?」とうれしくもなった。
そして、横浜での『ごめん、愛してる』イベントでの歌のうまさに驚いた話をすると、「イベントの前日は眠れないほど、ステージに上がる直前は心臓が飛び出しそうなほど緊張するんですよ」
とシャイな顔をのぞかせた。
「次は誰のイベントをやるんですか?」と聞かれ、「まさに明日ヒョンビンさんやイ・ヒョンミン監督の『雪の女王』のイベントをやります」と答えると、「がんばってください!」と日本語で、しかも握りこぶしのジェスチャー付きで励ましてくれた。
そして、最後に大きな体を、私の目線にあわせるように、背中をかがめて握手してくれて、短い時間は終わったのだった。
相変わらず笑顔は優しく、無口ながらも意外に人なつっこい人だった。
社交的なほうではないと前に本人が言っていたので、親しくもない人に会うのは気が疲れることだったと思うが、それでもあえて会って感謝の念を示そうという今どき珍しい誠実な姿勢には、感動を通り越して驚いてしまった。
彼のような人はこれからも更なるいい仕事、いい人との出会いが待っていることだろう。

※2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版より)
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略 歴

ソ・ジソブは1977年生まれ。小さい頃から水泳が得意で、国家代表選手に選ばれたこともある本格的な腕前です。
95年にアパレルブランドのカタログモデルとしてデビューし、97年からドラマの『モデル』で演技者の道に進みました。
その後シチュエーションコメディドラマの『男女6人恋物語』に出演して顔を知られるようになり2002年の『ガラスの靴』で、ヒロインを一途に愛しぬく、喧嘩っ早くて情にもろい男を演じ、人気が急上昇しました。2004年は『バリでの出来事』と年末の『ごめん愛してる』で大ブレイク。孤独な男の悲壮な愛に多くの女性が涙し、ソ・ジソブシンドロームまで引き起こすほどになりました。この作品ではKBS演技大賞の優秀演技賞と人気賞に、そして百想芸術大賞ではテレビドラマ部門の最優秀演技賞に輝き、名実共にトップスターとなりました。その人気を背負ったまま軍に入隊しましたが、2007年春の除隊後は『ゲゲゲの鬼太郎~千年呪い歌』での妖怪の役で日本映画への出演を果たしたほか、『映画は映画だ』で俳優を夢見るヤクザに扮してむせ返るようなオーラを発散する演技で主要映画賞で新人男優賞を獲得しました。
2009年は『カインとアベル』でドラマに出演。深みを増した演技で兄に裏切られた弟役を演じ、SBS演技大賞最優秀男子演技賞と10大スター賞の2冠に輝きました。
チャン・ツィーイー主演のラブコメ映画『ソフィーの復讐』では中国語の演技にも挑戦。日本の携帯配信ドラマ『I am GHOST』で殺し屋も演じるなど、国境を越えて活発な活動を繰り広げています。
今年は、朝鮮戦争60周年を記念して制作される6月放送予定の大型ドラマ『ロードナンバーワン』で、キム・ハヌル、ユン・ゲサンらと共演で韓国軍人の役を演じています。

(2010年4月)