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映画『トンマッコルへようこそ』ヒロイン カン・ヘジョンインタビュー

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2006年11月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

カンヌ映画祭で監督賞を受賞した映画『オールド・ボーイ』(03年)で、童顔ながら大胆な演技を見せて一躍脚光を浴びた女優カン・ヘジョン。以降映画に引っ張りだこで、映画界を牽引する次世代女優の地位を着々と固めている。

「ちいさーい」「かわいいー」と思わず声が出そうなほど、本当に小柄で小顔で、子供のようなのに、いざスクリーンに映るとしっかりとした存在感が出てくるところがさすが個性派女優だ。

デビューは97年、高校1年の時と早かった。

「私自身は芸能界に関心はなかったのですが、両親に勧められたんです。というのも、ほかの兄弟に比べてこれといったとりえもなかったので、芸能のほうの仕事をやってみたらと言ってくれたんです」


そこで始めたのが雑誌のモデルだった。

「でも雑誌に出たといってもちょっとだけなので、自分ではモデル出身と呼ばれることがなんだかかみ合わないです。演技の学校にも通いませんでしたが、ちょうど『ウンシリ』というドラマのオーディションを受ける機会がありました。とくに準備なども何もせず、ただ行っただけだったんですが、縁があったのか、これに合格して俳優になりました」

そんな彼女がブレイクするきっかけとなったのが、2003年の『オールド・ボーイ』。まだ新人だった彼女は公開オーディションに参加し、参加者の中で唯一、刺し身包丁などの小道具を準備して大胆にヒロインを演じて見せたという。

このときはパク・チャヌク監督の他に、主演のチェ・ミンシクに、『力道山』などのソル・ギョング、『甘い人生』のキム・ジウン監督ら4人が審査に当たったそうだが、カン・ヘジョンの演技が際立っていたということで、見事300人の候補の中から満場一致で選ばれたそうだ。

「『オールド・ボーイ』は内容が極秘だったので、誰も全体の台本は見られなかったと思います。私もオーディションを受けるシーンの部分だけの台本をもらったんですが、それを見て必要だなと思った小道具が刺し身包丁と解熱剤だったので本番さながらに持って行って演技したんです。でもそんなことをしたのはこのときだけでした」

露出演技も辞さない大胆さで観客に強烈な印象を与え、これ以降も一風変わった、つかみ所のないような役どころを得意としている。

「最初はこの仕事になんの欲も思い入れもありませんでしたが、今は違います。1本目の映画を撮った時、‘女優’になりたいと思い、2本目でもっと演技がうまくなりたいと思うようになりました。それ以降もずっと演技の勉強を一生懸命頑張って、人に見せたときに恥ずかしくない演技をしたいという気持ちが日に日に強まっています。まだ‘女優’カン・ヘジョンと呼ばれるのがしっくりきません。道のりは長いですが、‘女優’という肩書きをちゃんといただけるようにこれからも頑張っていかなくてはと思います」

壊れてしまいそうな繊細さと感受性の強そうな瞳が、このときは一層力強く輝いた。

延長戦コラム

『トンマッコルへようこそ』への起用理由は意外にも…

カン・ヘジョンが出演している『トンマッコルへようこそ』は、朝鮮戦争のさなか、山の中で、戦争が起こっていることも知らず、平和に幸せに暮らしている‘トンマッコル’という村を舞台に描いたヒューマンドラマ。北朝鮮の兵士と韓国の兵士、そしてアメリカの兵士が迷った末に偶然この村で出会ってしまい、共同生活をするうちに、敵味方関係なく人間愛を育むようになるという一種ファンタジーのようなお話だ。殺伐とした世の中で「これこそがまさに理想の人々の暮らしであり、関係性だ」と思わせてくれる感動の一本となっている。韓国で昨年公開され、800万人という、国民の6人に1人が見るほどの観客を動員する大ヒットとなった。

ここでカン・ヘジョンが演じているのが、一見頭が弱いのかと思えるほどの純粋の極地にいる少女だ。監督いわく、しっくりくる人を探したもののなかなか見つからなかったときに、たまたま遊びに行ったCM撮影現場で、カン・ヘジョンが休憩中にとても普通とは思えないような行動をしていたのを見て役にぴったりだと思い、全力を注いでオファーしたのだそう。なにがキャスティングにつながるか分かったものじゃない(笑)。