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『ブラザーフッド』出演で注目されたコン・ヒョンジン

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2004年9月号より※掲載元の許可を得て載せています)

6月に公開され大きな話題を呼んだ韓国映画『ブラザーフッド』で、チャン・ドンゴン、ウォンビンといった美男俳優の中にあって、コミカルで、場を和ませる韓国兵士ヨンマン役を演じたコン・ヒョンジン。彼は大学生だった90年に映画でデビューし、その翌年にSBS放送局のタレント養成の1期生として芸能活動を始めた役者だが、長年無名時代を送っていた。それがここ数年で味のある助演者として注目を浴びるようになり、そして去年からはついに主演を張るまでになった。

そんな彼の哲学を聞いてみた。「私は少なくとも自分が出る作品はすべて自分がある意味主演だと思って取り組んでいます。基本的には映画を作るということ、俳優として表現するという意味では主演か助演かはさほど重要な問題ではないと思います。とにかくいい作品で、いい俳優たちと共に演じていきたいと思っています。大前提となるのは俳優はまず演技がうまいということ。そうすればスタッフを始め観客からも信頼されます。私も周りの人たちから信頼を得られる俳優になりたいと思っています」

そもそも大学では演出を専攻していたというが、演劇の勉強も始めながら、俳優はとてもカリスマのある職業だと思い志すようになったという。


演技の勉強で大事にしていることは、「演技は何よりも自分自身が体験すること、そこから何かを学んでいくことが非常に大事。普段の生活の中で、いろんなことやいろんな人に関心を持って観察をすること。もし自分がその人だったらどうするだろうということを常に考えておくことは俳優としての基本的な宿題だと思います。その宿題を自分でこなし結論を受け入れ、それを応用して俳優として表現していく。その表現がうまくできれば、観客もあの俳優はとても自然に演技が出来て信頼が出来ると受け入れてくれるんだと思います」と熱く語る。

そうした日々の努力が実を結び、映画界でも引っ張りだこの存在に成長した。そして、大作『ブラザーフッド』への出演。

「カン・ジェギュ監督は私のデビュー作でシナリオを書いて下さった方で、もう知り合って15年ほどになります。『シュリ』に出たかったんですが、いろいろ努力しましたがそのときはダメでした。次は絶対に監督の作品に参加したいと思っていたのですが、それまでに他の作品で少しずつ私にも光が当たり始めた段階で、監督はこのシナリオを、ヨンマン役はコン・ヒョンジンにやらせようと念頭に置きながら書いて下さったそうです。だからこの役を頂いたときには本当に嬉しかったですし、監督が下さった分、私もしっかりと演じなくてはと思いました」

彼は現場ではムードメーカーとしても知られている。

「私は、現場の雰囲気がいい作品は必ず成功するという鉄則を持っているんです。私がもう少しエネルギーを余分に出して俳優陣とスタッフとの潤滑油になることで現場がよりよい雰囲気になるのなら自分はそれをやろうと思っています」と、こういう気遣いも彼を輝かせている一因なのだ。

延長戦コラム

コン・ヒョンジンの大きな転機となった作品は無条件で『ラブ・レター~パイランより』(01年)だそう。ここでは主人公の弟分のチンピラ、ギョンス役を演じたが、なんといってもチェ・ミンシクとの共演で学んだことが大きかったと言う。

「彼は俳優とはこうあるべきだという姿を私に見せてくれましたし、私が今までしてきたこと、思っていたことが、ここが間違っていたんだなということを感じることができました。実際現場では彼がいてくれたからこそ自分ひとりでも身を引き締めて集中しながら演技をすることが出来ましたし、その結果私自身に対してもいい評価を得ることが出来ました。本当にチェ・ミンシクさんは最高の俳優です」

特に印象に残っているのは、「俳優は演技を頭でするのではなく、心でしなければならない」ということだという。

「ある日電話でチェ・ミンシクさんに演技についての相談をしたんです。そうしたら1分30秒も黙ったままで、電話を切られてしまったのか、あるいは自分が間違ったことを言ってしまったのかと恐怖に駆られたのですが、その後ポツリと一言、「お前はギョンスになればいいんだ」と言われました。「君がギョンスになっていれば、どういう動きをしようと全く問題ではない」ということでした。それくらいに彼と言う人は劇中人物に成りきる人で、そういうことを学びました」

 

関連作品(リンク先)→→『ラブ・レター~パイランより~