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『ファントム』キャストコンプリート!

 

 

クリスマス時期に再びソウルに行って
ミュージカル『ファントム』の
主役の3人づつのファントムとクリスティーンを
コンプリートできたので、感想を綴ってみます。

 

今回パク・ウンテさんのファントムを
25日の昼公演で見たのですが、
すっごく良かったです。

仮面の下に見える口角は美しく引き締まり、
動きもしゃべり方も切れが良く、
たたずまいが凛々しくて、
まるで美しい宝塚の男役のファントムのように感じました。

丁寧な演技で、もうビンビン感情が伝わって来て
2階席で見たのですが、
距離の遠さもなんのその、
私の中では興奮するほどよかったです!

特に1幕のクリスティーンとのレッスン中のデュエットの場面や、
2幕の、私の愛を信じてあなたの顔を見せて欲しい~
と歌うシーンの二人の場面はうっとり。

ウンテさんとキム・ソヒョンさんが
感情がどっぷり入り込んでいて、
見ていて、今日は特別にいいんじゃないかしら?
と思ってしまうくらいに素晴らしかったです。

ウンテファントムの片想いぶりがかわいそうでかわいそうで~
胸が痛くなりました。

 

が、しかし、

こんなにウンテさん良かった~と思っても、

でもやっぱり
パク・ヒョシンのファントムは別格~と感じてしまうので、
パク・ヒョシン、どれだけすごいんだと思います。

パク・ヒョシンは、
声も存在も、体中が震えているかのよう。
ハハハという笑い声もどこか切なく乾いていて、自信なさげで。

美しい母親に育てられ、ひといち倍美意識が高いから、
余計に自分の醜さに嫌悪を感じて
自分の顔が許せないのであろうなと。
だからこそ、ヒョシンファントムは、
深い絶望の中に身を置いている感じなんです。

湿地帯のような湿った空気感満載の歌声で、
バズーカ砲のように歌い上げるので、
声の振動が鼓膜にビンビン響き、
それと共に悲しみの情緒がズシンと胸に響いてきます。

上手いとかを超えて、もうすごい!!!

 

クリスマスデートのために、彼女にいい顔したくて、
ミュージカルに興味ないけど見に来ました~
という風な男性たちが私の周りに点在していたのですが、
彼らがヒョシンの歌声を聞いて、
うぁあ、と感嘆の声を漏らしていましたから。

 

ウンテファントムは、
今は片想いだけど、
相手に気持ちが通じれば、
しっかりお付き合いしていきそうな感じ?

わりと健全な精神を持った感じというか、
孤独な芸術家の片想い~的な。
危ない感じというか、一歩引いた感じは薄いです。

でもそれはそれで素敵なファントムなのでいいのです。
好きです、そういうのも。

 

それに比べるとヒョシンファントムは、
どうにも覆せない負を抱え、
いろいろなことをあきらめていて、内向的で、
クリスティーンが自分を愛してくれたとしても
絶対に手を出さなそうなんです。
彼女をあがめて神聖視して過ごしそう。

 

ああ、ウンテさん、
彼だけを見たら絶賛されてもいいくらいなのに、
パク・ヒョシンという、
まさにこの役そのものの人がいるために、
2番手に甘んじざるを得なくて、
同時代に天才がいるとつらいというのを
目の当たりにした感じでした。

あ、これは、好みはそれぞれなので、
あくまでも『ファントム』におけるチケットパワーの観点でいうと
2番手になっている~ということです。

で、ドンソクさんは、
朗々たる帝王の歌声という感じで耳に心地よく、
本来、オペラ座のファントムの声のイメージで言えば
一番ふさわしいかもと思いました。

自分に自信も持ってる感じで、
けっこう強気な天才というファントム像でした。
なんか堂々としているというか(笑)。

 

私の好みとしては、
もっとナイーブさを出してほしいと思ってしまい、
ちょっと情緒が足りないというか、
情感に欠けるという印象を受けてしまいました。
動きも力強いんですよね。

 

『フランケンシュタイン』なんかはぴったりだったし、
私は見られませんでしたが、
『モーツァルト』は絶賛されていましたから、
波があるというか、
彼に似合う役、そうでない役ってあるんだなあと
これまた実感。

あ、でもこれも私の好みの観点で言えばっていうことです。

立ち姿はかっこいいし、見栄えがしますし、
なんといっても歌が素晴らしいので、
カーテンコールでは熱い歓声を浴びていましたから。

 

ファンの方ごめんなさい。
いかんせん、私の中では、
パク・ヒョシンのファントムが理想像になっているので、
それと離れていると、
自分の中でちょっと点が辛くなってしまうのです。

 

ヒョシンのは魔力にとりつかれてしまいそうな、
クセになる魅力があります。
霧に包まれて抜け出せなくなるような。
で、そう思う女子が圧倒的に多いということですよね。

 

 

ヒロインはそれぞれに良くって、
それも組み合わせの相手によって
またその時によって感情の入り方とか、
デュエットシーンのシンクロ率が違うので
一概に言えないですね。

キム・スンヨンさんは現役のオペラ歌手なので、
高音に行った時の声の力強さと安定感が素晴らしくて、
特にビストロの場面が聞きごたえがあります。
落ち着きのあるしっとりとしたクリスティーンという感じ。

キム・ソヒョンさんは3人の中で最も年上ですが、
可憐な少女のような雰囲気と甘く華やかな女らしさが
ありますね。
今回は若いヒロイン役ということで
意識してしゃべり方を甘やかにしているのかもしれませんが、
その辺で好みが別れるところかもですね。

イ・ジヘさんは90年生まれと若いので
ヒロインらしいはつらつさと少女性が最も良く出ていたかも。
キム・ソヒョンさんが声楽出身というのは有名ですが、
イ・ジヘさんも中央大学の声楽科出身なので、
オペラ歌手を目指すヒロインに不足はなく、
ビストロオーディションのシーンも
十分に上手に歌ってました。

私の個人的な好みでは、
声の質と歌声の強さでキム・スンヨンさんが好きでしたけど。


しかし、男子も女子もレベルの高い戦いですね。
って、誰も戦っているわけではないですが(笑)、

みんなで刺激し合って、
あと2か月近く、
さらに舞台に磨きがかかっていくのだろうなあと思うと、
それを見届けたくて、また通ってしまうのでしょうね(苦笑)。

 

でも、初演と比べると
ラストの方のすごく好きだった切ないセリフがなくなっていたり、
曲もカットされているのもあったりして、
やっぱり再演されても、同じものは見られないのだと思うと
今この舞台との出会いを大切にして、
見られるときに見ておきたいという気持ちに駆られます。

 

 

(2016年12月27日執筆)