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チ・チャンウク in『兄弟は勇敢だった』韓国ミュージカルの現場その①

7月30日~9月1日まで
東京六本木のアミューズ・ミュージカルシアターで上演されている
『兄弟は勇敢だった?!』。

日本公演を前に7月16日に
ソウルで公演の練習風景を取材して来ました。

この公演は、前半と後半で主演の兄弟がダブルキャストされていて、
取材したこの日が全員で顔を合わせる初めての日だったそうです。

演出・台本は、手がけた作品全てがヒットしている
人気女性演出家のチャン・ユジョン。

彼女を中心に俳優たちが円陣を組んで気合いが入れられたあと、
最初のいくつかの場面を実際のように演じてみることになりました。

兄役が、
既に4月に日本で『カフェ・イン』の公演をした
キム・ドヒョンで、
弟役が、『笑ってトンヘ』『ペク・ドンス』『蒼のピアニスト』など、
ドラマでも人気のチ・チャンウク。

彼は今年は既にミュージカル『あの日々』に出演していて、
先日のミュージカル・アワードで新人賞を受賞してノッているところ。
その時に信頼関係を築いたチャン・ユジョン演出家から、
『兄弟~』も是非一緒にやろうと誘われ、
やはりミュージカルの『ジャック・ザ・リッパー』と
時期的に重なるスケジュールではあるものの、
とっても嬉しく光栄だと思って挑戦することにしたとのことです。

いやあ、このへんが韓国俳優のタフなところです。
初めての役のミュージカルを2作品掛け持ちするのですから。

でも演出家に「あなたなら出来るわよ」と励まされて
やる決断をしたそうです。

しかし、この練習日の翌日は
その『ジャック~』での彼の登場する初日だというではありませんか。

だから、この日はインタビューの時間だけの参加になるかも…
と事前に言われていたのですが、
しっかり最初から『兄弟~』の稽古に参加していて、
逆にこちらが、
「大丈夫なのかしら?」
と驚いてしまいました。

でもやはり忙しくて大変だそうで、
今は医者と仲良しになっているのだとか。

日本公演が決まった時、真っ先に
「病院は近くにありますか?」
と聞いたほどだそうです。

今も、右腕にも左腕にも点滴の針のあとがありました。

「チケットを買ってわざわざ見に来てくれる人に
どう楽しんでもらえるか緊張しますが、
その緊張から練習を一生懸命にやって、
それが良い成果につながるとわかっているので、
自己管理をきちんとして本番に臨みたいです。
沢山の人に見てもらい、喜んでもらうことが望みです」

と抱負を語っていました。

『兄弟は勇敢だった?!』ですが、
私は去年見ているのですが、
とってもよくて、心に残った作品だったんですね。

父親の葬儀で久しぶりに故郷に戻った、
仲の悪い兄と弟が、顔を合わせるやケンカを始めるのですが、
ドタバタと随所で笑いを取って面白く見せていきながら
終盤では両親の愛にじ~んとさせられるという
よくできた作品なんです。

で、一年ぶりに、練習ではありますが、
その舞台のさわりを拝見して思い出しました。

これ、人物たちの動きが面白くて、
メロディーもよくて、
もう最初から舞台に引きこまれたんだったということを。

宗家の葬式が舞台なので、
とっても韓国的な雰囲気で、
国学チックな曲調や舞いも取りいれながら、
元気が良いアンサンブルのパワーが感じられるんです。

で、チ・チャンウクももうしっかり演技も歌も出来上がっていて、
演出家からも「その感じでいいわ、110点!」
と褒められていました。

コメディー要素もあるので、
チ・チャンウクもテンションの高い、
面白い動きとしっかりした歌声で、とにかくよく動くこと。
みるみる汗があふれ出て、
ちょっとした休憩時間に
テーブルの上に置かれていたトイレットパーパーを
グルグルと巻きとってそれで汗を拭いていました。

そもそも、この作品、
従来の韓国のミュージカルの客層である
20代、30代の女性だけでなく、
もっと韓国的で家族的で、
笑いあり感動ありの息長く続けられる作品を目指して作ったそうで、
2008年の初演の時から既に大評判となった作品した。

大学路という中小の劇場がひしめき合っている演劇の街で
観客が選ぶ一番人気のあるミュージカルにも選ばれたほどなんです。
かつては SHINeeのオンユや
昨年はB1A4のサンドゥルも演じたことがあります。

チ・チャンウクとコンビを組む兄役のキム・ドヒョンは、
演劇俳優からミュージカルに進出した人。
2年間舞台活動を休止して自分の声に合う先生を探して
みっちりとレッスンを積み重ねただけあって、
安定した歌唱力と演技力に定評があります。

チ・チャンウクさん以外は
去年も『兄弟は~』に参加したメンバー。
ドヒョンさんいわく、
「去年と同じメンバーという既に出来上がっているカンパニーの中に
チ・チャンウクさんは一人、一番年下として参加しているので、
萎縮してしまうんじゃないかと心配したけど、
彼はとっても積極的に構えずに飛び込んできてくれたので、
本当に勇敢な人だと思う」と褒めていました。

その言葉通り、チ・チャンウクは
休憩時間も皆の輪の中に入って楽しそうに笑っていましたし、
演技も動きも歌も
もう本番を迎えても遜色ないくらいの仕上がりになっていましたから。
チャン・ユジョン演出家も
「チ・チャンウクという良い役者に出会えたことは大きな宝物です」
とべた褒めでした。

そして、『兄弟は~』のもう一組のペアが、
話題の創作ミュージカルには
ほとんど出ているんじゃないかしらくらいな人気ミュージカル俳優で、
来日公演の『風月主』でも日本ファンを増やしたキム・ジェボムと、

去年のミュージカルアワードで新人賞に輝き、
今年はミュージカル版『太陽を抱く月』で陽明君役を演じた
チョ・ガンヒョンというこれまた楽しみな組み合わせになっています。
コンビによって味わいが随分と変わってきますので、
これはぜひ二組とも見たいところです。

ちなみに、6月から7月にかけて
アミューズ・ミュージカルシアターで上演していて
私も大好きだった『風月主』は
9月に衛星劇場で放送になります。

その前の8月には超新星のソンジェと
SS501のホ・ヨンセンが出演したミュージカル
『summer snow』も完全収録の状態で衛星劇場で放送されますので、
韓国のミュージカルってどんなものなんだろうと興味がある方は、まずテレビ放送でご覧になってみるといいと思います。

『summer snow』は
アイドルの魅力を見せることに力を注いだアイドル全面押しの作品ですが、
家族愛や心臓病を抱える少女との純粋な愛が描かれる
じんわり感動系の作品。

『風月主』は
新羅時代に男性キーセンがいたという架空の設定のもとで、
2人の美青年と女王が織りなすボーイズラブの要素を含んだ、
悲劇的な世界観がたまらないドラマチックミュージカルです。

一口に韓国ミュージカルといっても
ジャンルによって全くテイストが変わるので、
いろいろと見ていくときっと琴線に触れるものが出てくると思います。

去年から今年にかけて様々な韓国ミュージカルが来日公演をしています。
特にアミューズ・ミュージカルシアターでは、
韓国で評判の良かった小劇場系の創作ミュージカルを
継続的に上演してくれるという、
演劇やミュージカル好きにはたまらない企画なので、
この機会をのがす手はないです。

また大型作品では今月の10日から
オム・ギジュンや2PMのJun.Kらが出る『三銃士』も始まります。

今、韓国のミュージカルは本当に熱いので、
その勢いを日本に居ながらにして感じられるチャンスなので
是非ご覧になってみてはいかがでしょうか?

 

※放送情報 衛星劇場「summer snow」
8月2日午後11時~//8月8日午後1時30分~

「風月主」は9月予定

 

(2013年7月23日執筆)