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2世俳優たちの活躍

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2008年1月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

韓国では最近有名人を親に持つ2世俳優たちの活躍が著しい。だが親の七光りが通用しないのは芸能界の常。今回ご紹介する俳優たちも、地道に段階を踏みながら知名度を上げてきた。

10月に行われた東京国際映画祭で、『永遠の魂』の主演俳優として来日したチョン・ギョンホ。彼は日本では『ごめん、愛してる』で、マザコンのアイドル歌手の役を演じたことでもおなじみだ。彼の父親は、有名なドラマの監督。イ・ヨンエが主演し、台湾に韓国ドラマブームを呼んだ『火花』や、『拝啓ご両親様』などのヒットドラマを多く手がけている。でも俳優という仕事の大変さを誰よりもわかっているからこそ、息子が俳優になるのは反対だったそうだ。

それでチョン・ギョンホは父親に内緒でKBS放送局のオーディションに応募して合格した。また、俳優や監督を目指す人たちにとっての名門、中央大学の演劇科に進学する時も父親には相談しなかったという。さすがに今では父親も反対することもなく、作品が終わると「よくやった、お疲れさま」と言ってくれるそうだが、それでもいまだにチョン・ギョンホは自分から「僕の演技はどうだった?」とは、なんだか生意気な気がして父親に聞くことができないのだとか。その後も着実に作品に出演して映画界の有望株という評価をもらうようになっている。

『永遠の魂』は、インディペンデントな作品ではあるが、もともと面識があったという監督を始め、普段から一緒に仕事をしたいと思っていた先輩たちとの作業だったということと、面白そうな内容に惹かれて出演したのだという。そんな彼の目標はずっと今までどうり俳優を続けることだそうだ。

 

もう1人は時代劇ドラマ『朱蒙』でおなじみのソン・イルグク。彼は、お祖父さんがキム・ドゥハンという、韓国庶民の英雄的存在で‘将軍の息子’と呼ばれていた人物。母親も女優のキム・ウルドンという家系だ。しかし、母親が忙しすぎて嫌だったからという理由で、俳優にだけはなりたくないと思っていたそうだ。それが、97年、母の時代劇ドラマのロケ現場を訪ねた際に主演俳優から後押しされたのをきっかけに気持ちが変わり、MBC放送局のタレントオーディションを受けて合格し、デビューした。

しかし2世だからといってすぐに注目されたわけではない。デビュー後しばらくはぱっとせずにいたのだが、2004年のドラマ『愛情の条件』で、愛する妻の過去に苦悩する夫を演じてようやく大注目の存在になった。続く『海神』では、主人公たちの恋路を邪魔する役どころながら、1人の女性に報われない思いを抱き続ける、憎みきれない切ない男を演じ、女性ファンを多いに増やした。ここでの好演が翌年の、時代劇『朱蒙』の主役への抜擢につながったわけだ。演技も‘新鮮だ’と大好評、視聴率50%を超える大ヒットで、現在は国民スターという感じになっている。

他にも最近は映画、ドラマで2世たちの頑張りが目立っているが、いずれも演技力が備わっていてこそ話題になっている。みんな身近で芸能界の厳しさを見て育ったせいか、俳優としての地に足の着いた‘有り方’がきちんとしていて好感が持てるのである。

延長戦コラム

今年の東京国際映画祭の提携企画として、香港映画祭も開かれた。このオープニングに駆けつけたのが、警察と犯罪組織の対決を描くアクション映画『男兒本色』の主演俳優たち。そのうちのニコラス・ツェーとジェイシー・チェンがやはり2世俳優だ。ニコラスは両親共に有名スターの息子で、7歳でカナダに移住し海外で教育を受けたが、16歳でデビューする直前は「いよいよ彼らの息子がデビューする!」という感じで話題騒然だった。ジェイシーは、これまた、世界のトップスター、ジャッキー・チェンと台湾の大女優との間の息子なものだから、ひっそりとデビューするわけにも行かず。幼い頃から音楽方面の教育を受けてきたそうで、まず歌手でデビューし、次いで『花都大戦』で映画にもデビューした。ニコラスもジェイシーもデビュー当時は思いっきり親の七光りと言われまくったところが、韓国とのお国柄の違いか。香港はその辺が派手なのである。

ところで、『男兒本色』の中でジェイシーは警察官の役どころ、当然アクションシーンも出てくるが、舞台挨拶で「アクションからはなるべく遠ざかっていたのですが、頑張りました。でもやっぱり自分はアクションではないドラマで頑張ります」と語り、どうやっても比べられてしまう偉大な父親を意識して、アクションは避けたいのかなと匂わせる発言をしていた。