取材レポ・コラム

コラム・取材レポ一覧に戻る

ブレイクまでのイ・ジュンギの道のり

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2007年6月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

昨年、映画『王の男』でブレイクし、一躍‘時の人’となったイ・ジュンギ。彼が主演した映画『フライ・ダディ』が4月に日本公開されたのに続いて、5月にも日韓合作映画『初雪の恋~ヴァージン・スノー』が封切られる。今、日韓で注目を集めている彼の映画俳優としてのトークショーが先日大阪で行われたので、その内容を少々ご紹介しよう。

高校を卒業後、俳優を志したイ・ジュンギは、30万ウォン(だいたい当時のレートで3万円くらい)だけを手に故郷のプサンからソウルに上京した。


「両親からは反対されましたが、そこで自分の人生をあきらめたくないと思って。やらないで後悔するよりもやりたい気持ちの方が強かった」と、このときの気持ちを語る。そして数々のアルバイトをしながら、2004年に俳優デビューを果たした。それが、SMAPの草なぎ剛主演の日本映画『ホテルヴィーナス』だった。ここで殺し屋にあこがれる少年役に2000人の中から抜擢されたという。初めての撮影のことを覚えているかと聞くと、泣くシーンがうまく出来なかったのが忘れられないという。

「大勢のスタッフが自分のために涙が出るのを待っているのに、なかなか泣けなくて。段々周りもイライラしてくるのがわかっても、できない自分が悔しかった…」。でもその時に監督から演技というものを教わり、その悔しさをバネに、今ではもっと短時間で泣くことが出来るようになったそうだ。

幾度となくオーディションに落ちたが、一番悔しかった経験として、「大作映画の主役にキャスティングが決まって、3ヶ月くらい時間をかけて準備していたのに、直前でやっぱり他の子のほうがこの役には合うからと役を降ろされてしまったんです。悔しくて悲しくて夜も眠れなかった経験でした」と秘話を披露。ちなみにその映画は皮肉にも大ヒットしてしまったそうだ。もしかしたらイ・ジュンギのブレイクはもっと早まっていたのかもしれないと思わせるエピソードだ。

こうした数々の悔しい体験が彼を役者に育てていったに違いない。新作映画『初雪の恋』での撮影現場での評判を聞くと、「アイドルなのかと思っていたけど、わがままも言わず、役者の心得がしっかり出来ている、演技者としてすごく誠実な青年だ」との答えが返ってくる。彼自身の心持ちに加え、これまで彼が経験してきた現場でいい先輩たちに恵まれていたのだろう。「僕にしてみれば、先輩俳優も監督もみんなスターのような存在です。先輩たちと共演して、なぜ今の地位にいる方たちなのか、いろいろ学ばせてもらうことが多かったです」

この謙虚な姿勢がある限り、俳優イ・ジュンギは着実に大きくなって行けることだろう。

延長戦コラム

『王の男』で王から寵愛を受ける女形の旅芸人を演じたイ・ジュンギが、念願だったというラブストーリーに挑戦。それが日韓合作映画の『初雪の恋~ヴァージン・スノー』だ。強烈なインパクトを残した役柄から一転、一目ぼれから日本女性と恋に落ちる、元気で明るい、いまどきの韓国青年を好演している。イ・ジュンギ本人が、「この作品での僕が一番素に近くて、最大限自分を出そうとした作品」と語っているだけに、等身大の彼の魅力が堪能できる。

日本の京都と韓国で撮影が行われたが、『王の男』の時は、現場でも無口で1人でいることが多かったという評判を聞いていた日本スタッフは、当初、イ・ジュンギがうまく日本の現場に溶け込めるか心配したそうだ。だがそんな心配も杞憂に終わり、『初雪の恋』の現場では、彼が率先して歌ったり踊ったり、スタッフに話しかけたりするムードメーカーとなっていたそうだ。

「『王の男』の時は役の性質上神秘的でなくてはいけないから、周りと距離を置いて役に入っていきました。でも、『フライ・ダディ』の時は男ばかりだったので、お酒をたくさん飲んだり、悪い言葉もたくさん使ったりして(笑)。『初雪の恋』は、天真爛漫な役だったので、みんなを笑わせようと努力しました」と、撮影期間中は常に役を引きずって行動していることをうかがわせた。