コラム・取材レポ・ブログ

コラム・取材レポ一覧に戻る

【韓国人を熱狂させた人気ドラマの10年史】⑤

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

2000

2000年の平均視聴率年度別番組トップ5

①ホジュン(ドラマ)MBC 54.1%

②真実(ドラマ)MBC 42.1%

③王と妃(ドラマ)KBS 34.8%

④太祖王権(ドラマ)KBS 33.5%

⑤いつも幸せ(ドラマ)MBC 31.3%

2000年は金大中大統領と金正日総書記の南北首脳会談が実現。一気に和睦ムードが高まった。歴史的な出来事を目の当たりにしてか、ドラマでもこの年から時代劇ブームが本格的になってきた。

『ホジュン』は朝鮮時代中期に実在した医師ホ・ジュンの一代記。妾の子というハンデを背負いながらも、数々の苦難、逆境を乗り越えて出世していく。偉くなってもいつも人々を思いやる心を忘れず、完成度の高い医学書「東医宝鑑」を記すという偉業を成し遂げた。そんなホ・ジュンの生き様が、IMF以降沈鬱ムードが漂っていた韓国人たちに勇気と希望を与えた。ドラマ人気と共に漢方薬ブームが起こり、原作の書籍「東医宝鑑」がベストセラーになるなど社会現象になった。

『真実』は議員の運転手の娘と財閥2世の男性の恋物語に、横槍を入れる議員の娘の陰謀が描かれるシンデレラストーリー。大学入試の替え玉受験や、交通事故の濡れ衣などが大きくストーリーにかかわってくるというちょっと変わった味付けがなされた。しかし、「善と悪の対立、シンデレラ」という素材は相変わらずだったため、新聞などの批評ではまたこのパターンかと批判されながらも、高い視聴率を維持し続けた。

『王と妃』は朝鮮王朝4代目、ハングル文字の創始者として名高い世宗大王の末期から、暴君として知られる10代目の燕山君までの時代が語られる歴史大河ドラマ。『龍の涙』からの続きの時代である。「王のあとは妃が政治をし、その後また王が政治をするというように、絶えずつながる因果応報を描いてみようという意味でつけたタイトル」だそうだ。父王、文宗の死により幼くして6代目端宗(タンジョン)が王位についたものの、おじの世祖(セジョ)に王位を奪われた。前半は、世祖の人間像を中心に、悲劇の幼王、端宗の復位を図った臣下たちの行動といった有名な逸話が描かれる。ドラマでは世祖を多角的観点から描いたため、美化しすぎていると論争になった。後半は、世祖の息子の嫁インス大妃をメインに、インス大妃が、息子成宗の嫁、燕山君の母のユン妃を死に追いやったエピソードから、燕山君が狂気に走っていくまでの劇的な歴史を描いている。

『太祖王権』は、後三国を統一に導き、高麗国家を打ち立てた王権(在位918-943年)を描いた歴史大河ドラマ。いまだに分断国家となっている韓国民に、和合の精神で初めて民族の統一を成し遂げた太祖王権の姿を提示しようという企画意図で始まった。撮影は、敷地面積2万坪、工事費30億ウォンという韓国ドラマ史上最大規模の野外セットで行い注目を浴びた。

『いつも幸せ』は、ひょんなことから一つ屋根の下に暮らすことになった二つの母子家族の対立とその子供たちの恋愛を明るくコミカルに描くファミリードラマ。

『ホジュン』
PD:イ・ビョンフン
脚本:チェ・ワンギュ
出演:チョン・グァンリョル、ファン・スジョン

『真実』
PD:ソ・ヒョンギョン
脚本: キム・イニョン
出演: リュ・シウォン チェ・ジウ パク・ソニョン ソン・ジチャン

『王と妃』
PD:キム・ジョンソン
脚本:チョン・ハヨン
出演:チェ・シラ、アン・ジェモ

『太祖王権』
PD:キム・ジョンソン
脚本:イ・ファンギョン
出演:チェ・スジョン、キム・ヨンチョル、キム・ヘリ

『いつも幸せ』
PD:チャン・スボン
脚本:イ・チョンソン
出演:キム・サンギョン、イ・テラン、イ・フン、キム・ジョンウン

2000年の主な出来事

・第3次日本大衆文化解禁項目発表。日本語歌謡公演が全面開放となったほか、劇場用アニメの一部とすべての一般映画の上映が可に(18歳未満鑑賞不可除く)。放送はスポーツ、ドキュメンタリー、報道番組のみ開放(ドラマや歌は含まず)。

・ソウル中央病院で世界初の二人の肝臓を一人の患者に部分移植する手術に成功。

・金大中(キム・デジュン)大統領平壌を訪問し、金正日総書記との初の南北首脳会談を開く。

・南北離散家族200人がソウルと平壌で再会。

・IMF理事会、韓国経済IMFからの‘卒業’を宣言。

・シドニーオリンピックで南北選手団が統一旗を掲げて入場行進。

・金大中(キム・デジュン)大統領ノーベル平和賞受賞。

・国立ソウル大学、入試科目の外国語に日本語を採用。

・高速インターネット加入世帯300万突破。

・[流行語]「お元気ですか~」 前年に公開された日本映画『Love Letter』のクライマックスで主演の中山美穂が叫ぶセリフ。日本人を見かけるとこの言葉をしゃべりかける韓国人が続出。

2001年

2001年の平均視聴率年度別番組トップ5

①太祖王権(ドラマ)KBS 40.3%

②女人天下(ドラマ)SBS 36.0%

③母よ姉よ(ドラマ)MBC 31.5%

④3人友達(ドラマ)MBC 31.2%

⑤おばさん(ドラマ)MBC 30.1%

サッカーワールドカップを翌年に控え、放送界に日韓合作ブームが起きる。SBSのバラエティー番組の中に日韓女性サッカーチームのコーナーが出来たり、2002年放送を目指してKBSがBS朝日とドキュメンタリーの制作を行ったり、ドラマでもTBSがMBCプロダクションと共同で日韓合作ドラマ『フレンズ』の制作に入った。

21世紀に入り、92年から続いてきた新世代を中心とする大衆文化の方向性にも変化が見られるようになってきた。それは、それまでの10代、20代の恋物語から脱して、30代向けのドラマが制作されるようになってきたことからも伺える。その成人ドラマの地平を開いたと評価されたのが、『おばさん』だった。

『おばさん』は、家父長的な家の従順な専業主婦が、夫の浮気をきっかけに自分の人生を見つめ直し、第2の人生を歩んでいこうとする姿をコミカルに描いた作品。ダサくて、ずうずうしくて、周りの空気が読めなくて、世界が狭くて・・・という典型的な‘おばさん’像だったヒロインが華麗に力強く変化していく様に代理満足を覚えた主婦たちが多かったが、もう一方の、夫ジャン・ジングのだめ男ぶりも話題を集めた。大学教授のジングは高卒の妻をいつも蔑んでいたが、実は自分のその地位は金で買ったものだった。知識人ぶっていながら中身がない、偽善的、虚偽的な姿が視聴者にインパクトを与え、当時の一番の悪口として「お前、ジャン・ジングのような奴だな」という言葉が流行した。このおばさん主婦は、浮気した夫にすがらず、離婚して食堂を始め、新たな人生を歩き始めるのだが、この結末は韓国では革命的で、ドラマを見て離婚を決心したという視聴者も現れたほどだったという。またこのドラマは30代、40代の男性らの視聴率も高く、ジャン・ジングの姿を見て身につまされながら、男性たちが集まる席でもドラマのことが話題に上ったという。このように、『おばさん』は実にさまざまな社会的影響を与えた。

『女人天下』は、朝鮮時代の3大妖女と称されているうちの一人、チョン・ナンジョンという実在の人物の生き様を描いた大河ドラマ。下女の娘に生まれながらも高官の妻の座を射止めたが、暴政を敷いて自滅した波乱万丈の女の一生が、政治的策略、ラブストーリーなどを盛り込みながら描かれる。当初50話の予定が好評につき150話まで延ばされるという、韓国ドラマの臨機応変さが遺憾なく発揮された。とくに40代以上の女性から好まれたドラマだった。

『母よ姉よ』は、代理母から生まれた二卵性双生児の兄妹が、性別の差ゆえにそれぞれ違う家庭で育てられ、成長後、運命的な再会を果たしながら体験する葛藤を描いたドラマ。

『三人友達』は、高校時代の同窓生で、現在31歳の独身男性3人組が繰り広げるコミカルな日常を描いたシチュエーションコメディー。シートコムは家族向けというのが定番だったが、開始時間も夜の11時からにし、30代の、しかも男性ばかりが主役という初の成人向けを目指した。主役の3人には、ヘルスクラブのマネージャーのユン・ダフン、精神化クリニックの院長チョン・ウンイン、ブティックで名前だけの営業室長のパク・サンミョンという個性派俳優を配して、彼らを軸に、職場の同僚や、家族らが入り乱れて物語りが展開する。

 『女人天下』
PD:キム・ジェヒョン
脚本:ユ・ドンユン
出演:カン・スヨン、パク・サンミン、チョン・インファ、イ・ドッカ

『母よ姉よ』
PD:イ・グァンヒ
脚本:チョ・ソヘ
出演:キム・ソヨン、コス、アン・ジェウク、ファン・スジョン

 『3人友達』
PD:ソン・チャンイ
脚本:イ・ソンウン、モク・ヨンヒ、キム・ソントク
出演:ユン・ダフン、チョン・ウンイン、パク・サンミョン

 『おばさん』
PD:アン・バンソク
脚本:チョン・ソンジュ
出演:ウォン・ミギョン、カン・ソクウ、シム・ヘジン、ソンスンファン

2001年の主な出来事

・歴史教科書問題、小泉総理大臣の靖国神社参拝をめぐり日韓の間で歴史認識摩擦が起こる。

・仁川新国際空港開港

・ソウル大学日本語科目を開設

・公正取引委員会、マスコミ13社を不正内部取引で摘発、総額242億ウォンの課徴金を課す。

・『JSA』がソウルでの観客245万人を突破。『友へチング』が全国で800万人を動員、韓国映画史上最高の大ヒットになる。ほかにも『猟奇的な彼女』『花嫁はギャングスタ―』など国産映画の大ヒットが続く。韓国映画の輸出が初めて1000万ドルを突破。

・日本のアニメ「ドラえもん」、日本アニメとして始めて放映される。

・[ヒット商品]猟奇ウサギ「マシマロ」

2002年

2002年の平均視聴率年度別番組トップ5

①野人時代(ドラマ)SBS 42.1%

②太祖王権(ドラマ)KBS 39.4%

③明朗少女成功記(ドラマ)SBS 35.0%

④キツネと綿菓子(ドラマ)MBC 33.9%

⑤人魚姫(ドラマ)MBC 32.6%

2002年はなんといってもサッカーワールドカップの日韓共催。ベスト4にまで躍進した韓国は応援も過熱。もともと強かった愛国心に火がついた。ドラマでも韓国人であることに自尊心を見出すドラマ『野人時代』が大人気となった。

『野人時代』は1930年代の日本占領下の京城(現在のソウル)の鐘路を舞台に、やくざの親分として社会の弱者たちを守ってきた義侠心の厚いキム・ドゥハンの一代記。キム・ドゥハンは、日本の植民地時代の独立軍将軍・キム・サジンの息子に生まれ、後に国会議員まで務めた。民族意識に目覚め、植民地支配に暴力で抵抗したとしていまだに人気がある歴史上実在の人物だ。イム・ゴォンテク監督の映画『将軍の息子』でも知られるように、映像化されるときにはアクションの面が重視されるが、このドラマでは、より人間的な側面を重視して恋などもちりばめてじっくりと描かれている。大人気の背景について、ある社会学者は「大統領選を控えた政局の中、国民は陰謀と裏切りが横行する政界に嫌気がさしている。暴力団とはいえ、正々堂々と勝負するドラマの登場人物にカタルシスを感じているようだ」と解説していた。日帝支配下の話だけにどうしても日本人が悪く描かれるので、日本人の私としては見ていて多少つらいものがあるが、筋の通った男気のあるキム・ドゥハンが弱きを助け強気をくじく姿を見ていると、すっきりさせられる。それに、日本人の中にも武士道を重んじ、キム・ドゥファンと義兄弟になるような男気のある日本人の存在も出てくるので、ちょっとほっとさせられる。

『明朗少女成功記』

『キツネと綿菓子』は、モダンな家庭と超保守的な家庭という二つの対照的な家族の男女が恋に落ちて結婚し、ほかの家族を巻き込んで起こる騒動を楽しく描いたファミリードラマ。92年に大ヒットした人気ドラマ『愛が何だ』の作者キム・スヒョンから、パクリだと訴えられ、裁判でも剽窃だと認められてしまった作品。しかし、楽しんで見られる明るい雰囲気で人気が高く、裁判以後もそれほど数字は落ちなかった。

『人魚姫』は、シナリオ作家が主人公の復讐メロドラマ。母を捨て女優と一緒になった父親を恨んできた娘は、父のせいでショックが重なり失明してしまった母親と二人暮しをしている。自分の書く新しいドラマに母から父を奪った女優をキャスティングし、かつての彼女が行った仕打ちをドラマで演じさせようと嫌がらせをする一方、この女優の娘で自分とは異母姉妹になる女性から恋人をも奪おうと恋を仕掛けるが、いつしかその恋に本気になってしまい・・・という激しい愛憎渦巻くドラマ。ドラマの企画意図には「血縁に向けた緻密で冷静な復讐劇と彼女の運命的な愛を通して‘結婚’に含まれた神聖な義務と‘愛’に含まれた真実について考えようとするドラマ」とある。夜8時半からの日日劇はだいたいが家族で見られる大家族話だが、『人魚姫』はそこに復讐という強烈なコンセプトを加えることで従来の日日ドラマとは差別化を図ったという。主演を務めるチャン・ソヒは子役出身の女優だが、それまでずっと助演の立場だったが、このドラマで初めて主演に抜擢された。怒りの演技で本当に失神してしまいそうなほどの熱演振りが話題になって、2002年下半期のMBCの顔的存在となった。

『野人時代』
PD:チャン・ヒョンイル
脚本:イ・ファンギョン
出演:アン・ジェモ、キム・ヨンチョル

 『明朗少女成功記』
PD:チャン・ギホン
脚本: イ・ヒミョン
出演: チャン・ナラ チャン・ヒョク リュ・スヨン ハン・ウンジョン

『キツネと綿菓子』
PD:チョン・イン
脚本: キム・ボヨン
出演: ユ・ジュンサン ソ・ユジン コ・ドゥシム

 『人魚姫』
PD:イ・ジュファン
脚本:イム・ソンハン
出演:チャン・ソヒ、キム・ソンテク、ウ・ヒジン

 2002年の主な出来事

・韓日ワールドカップ開催。韓国ベスト4、日本はベスト16に。

・北方限界線を侵犯した北朝鮮軍の警備艇が韓国の高速艇を奇襲攻撃し、乗船していた海軍全員が死亡、または負傷し、高速艇は沈没した。太陽政策に大きな打撃を与える。

・芸能界不正事件。一部大手芸能プロダクションは所属スターの広報のため、テレビ局やスポーツ新聞の一部関係者に現金、株式、外車や高級物品まで提供するなど、不法接待を繰り広げた。

・釜山アジア大会開催。北朝鮮美女応援団が大人気になる。

・台風15号、過去最大の被害に及ぶ。死亡、行方不明者約270人、財産被害は6兆ウォン台に達する。

・女子中学生二人が米軍の装甲車に引かれ死亡。反米ムード高まる。

・金大中大統領の次男と三男が利権の見返りに企業から金を受け取った斡旋収賄容疑で逮捕。

・[ヒット商品]韓日ワールドカップ

 

<参考>

  • 92年から2001年までの10年間の一日の最高視聴率

(番組名)(視聴率) (記録した日)      (占有率)

①『初恋』65.8%(97年4月20日:日曜)・・・82%

②『愛が何だ』64.9%(92年5月24日:日曜)・・・82%

③『砂時計』64.5%(95年2月16日:木曜)・・・76%

④『ホジュン』63.5%(2000年4月24日:月曜)・・・79%

⑤『若者の陽地』62.7%(95年11月12日:日曜)・・・74%

⑥『あなたそして私』62.4%(98年4月12日:日曜)・・・76%

⑦『息子と娘』61.1%(93年3月21日:日曜)・・・75%

⑧『太祖王権』60.4%(2001年5月20日:日曜)・・・69%

⑨『黎明の瞳』58.4%(92年2月6日:木曜)・・・81%

⑩『見てまた見て』57.3%(98年10月12日:月曜)・・・73%

視聴率の資料はすべて「ニールセンメディアリサーチ」による。1992年から2001年までの数字と一日最高視聴率は2002年6月20日発表のプレスリリースによる。2002年の数字は2002年の週間視聴率から計算して出したもの。

 

<ドラマを巡る動き>

2002年の11月から地上波キー局の3社で放送されるテレビドラマに本格的に等級制が導入されることになった。内容によって、15歳以上視聴可、19歳以上視聴可というように等級が決められる。不適切な言葉遣いや、煽情性、暴力性などがその判断基準となる。ゴールデンタイムのドラマは大体15歳以上視聴可という感じ。暴力シーンがあったり、ラブシーンが出てきたりするともう15歳以上じゃなきゃ見てはだめということになったりする。ただし同じドラマでもその回ごとに等級がつけられるため、昨日はだめだったけど、今日は見られるというようなことが起きる。

また同年12月から、KBSでは青少年らへの悪影響を考えて、ドラマの中で喫煙シーンをなくすという方針を始めた。2003年からは、これをドラマ以外の番組にも範囲を広げ、また喫煙だけでなく、飲酒シーンも削減する方向で検討していると言う。韓国の10代の男子学生の喫煙率は2001年は35%で、日本の青少年の5倍だったという。女子学生も8%と日本の約4倍だそうだ。こういう実態がある以上、喫煙シーンのカットもやむをえない措置なのだろう。