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パク・シニャン

※2000年6月発刊「韓国はドラマチック」(東洋経済新報社)より

今やハン・ソッキュに次ぐ韓国映画界を背負って立つ男である。決してハンサムというわけではないけれど、その演技力と味のあるかげり漂う雰囲気が魅力だ。

1992年東国大学演劇映画科を卒業して友人達と一緒にロシアのシェーフキン演劇大学へ留学する。その理由が「体制の崩れゆくロシアで芝居をする人々はどんな考えで勉強しているのか興味があったから」ということで、まるで哲学者のようである。そんなロシアで勉強中、東国大学で同期だったヤン・ユノ監督からオファーを受けて芸術性の高い映画『ユリ』に出演するために韓国に帰国した。それにしてもこの『ユリ』は青年修行僧のユリが壮絶な修行の末に悟りを開くという哲学的な作品で、パク・シニャンもヌードにまでなって熱演しているのだが、うーん、映画全体のメッセージが強烈すぎて、私にはエロ・グロにしか写らなくて辛かった。でもこの根底を流れる哲学的なところに惹かれてパク・シニャンも出演することにしたのだろうか。なんてったってこの作品はカンヌ映画祭を始め海外の映画祭にも出品されたくらいだし。とにかくもこの演技で第17回青龍賞新人男優賞を授賞し、その演技力は認められるところとなった。その後撮影を終えてロシアに戻ろうとしたがお金が無くて困っていたところ、テレビドラマ『りんごの花の香り』、映画『プワゾン』から声がかかり韓国にとどまってそのまま芸能界で仕事をするようになった。

超前衛映画でデビューするというインパクトの強いスタートを切ったパク・シニャンが女性からの熱い支持を受けるようになったのは、テレビドラマ『愛すればこそ』から。その後1997年の大ヒット映画『手紙』と並んで、ソフトで暖かいキャラクター、愛する女性のために自分の痛みを隠す男のイメージが定着したためだ。涙無くしては見られない『手紙』では、愛情に溢れた好青年の明るさと、病気になってからの、壮絶に病と闘いながらも深く静かに妻を愛する男の姿に心打たれる。この作品で名実ともにトップスターの座を手に入れた。そして『約束』ではやくざのボスというこれまでのイメージとは違う役を引き受けたが、やはりここでも愛する女性のためにあえて別れを選ぶという男の切ない演技は絶好調だ。この人は、対女性相手のシーンで魅力がひときわ光る。顔は大江千里みたいだけど、何とも言えない優しさとストイックさがいいんだなあ。しかし最新作はそのイメージを打ち壊すようなノワールものの映画『キリマンジャロ』。対女性でなく全編対男の鬼気迫る演技でアン・ソンギを相手に役者の凄みを出している。

パク・シニャンのあだ名は「まじめマン」。テレビのトークショーでもまじめすぎてぎこちない雰囲気が漂ってしまうようだ。またそのあたりが人々に信頼感を与えているらしい。彼は多趣味で知られているが、これも大学時代演劇科の先生から俳優はあらゆる事ができなければならないと教えられ、バレー、器械体操、テコンドー、歌、踊りなどみんな習ったというからいかにまじめかがわかるというものだ。