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チョン・ドヨン

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

愛くるしい笑顔、かわいらしい甘ったるい話し方。隣のお姉さんのように安らかな魅力。「いやし系」タイプである。

高校卒業後雑誌のモデルになったのが編集長の目に留まり、カバーモデルになった。それがきっかけでジョンソンアンドジョンソンのCFに抜擢されて芸能界デビュー。

TVドラマは93年『我らの天国』から始まって『恋の香り』『総合病院』などに出演を重ねるが、平凡で無難な女優という評価でしかなく、それほど脚光を浴びなかったという。日本の韓国ドラマファンの間では『星に願いを』での、チェ・ジンシル演じる主人公の、歌手を夢見る友達役がおなじみだろう。

そんなチョン・ドヨンがブレイクしたのは97年。ハン・ソッキュと共演した映画『接続』がきっかけだった。それまでに培ってきた演技力で監督の要求を100%理解したのはキャスティング候補の女優の中でもチョン・ドヨンだけだったということでの抜擢。映画デビューにしてその年の韓国映画の観客動員数トップを飾る大ヒット作となり青龍賞の新人女優賞も獲得するなど演技者としての大きな転換点となった。

98年『約束』ではパク・シニャン演じるやくざのボスと恋に落ちる女医役で切ない愛を繰り広げ観客の涙を振り絞った。これで「人間催涙弾」とまで呼ばれるようになる。この2作品の成功で、韓国映画を率いるトップ女優の一人となった。テレビ界から映画界へ転身して成功した例は珍しく、彼女は映画界の掘り出し物といわれているらしい。

99年には1960年代の田舎の小学校を舞台にした『私の心のオルガン』で、何と17歳の小学生役に挑んだ。新しく赴任してきた21歳の、イ・ビョンホン扮する先生に恋心を抱く田舎娘を、ノーメークで弾むように演じていて、これは見事な化けぶりだった。かわいいウサギの着ぐるみ姿も披露していてかわいらしいこと。小学校の運動会のシーンの撮影現場を訪れた記者たちもあまりにチョン・ドヨンが周りの子供たちの中にとけ込んでいてどこに彼女がいるのかわからなかったというエピソードもある。

そこから一転、今度は『ハッピーエンド』で乳飲み子がいるにもかかわらず夫に隠れて不倫に身を焦がす女性に挑戦。少女から熟女まで、もう何でも来いだ。この映画ではかなり濃厚なベッドシーンもあり、「ここまでやっちゃっていいのかしら」と見ているこちらがドキドキするほど。しかし、雑誌のインタビューには「演技しながら初めて開放感を味わった作品」と答えており、自身の演技の更なる転機となったようだ。

身体は華奢だが何を演じても存在にどっしりとした迫力がある。男を引き立てるヒロインというよりは、ピンで立つ、主張を持った主人公が似合う。何よりも女っぷりのよさが魅力。

トップの映画女優として君臨するも、2002年には実に5年ぶりにドラマに復帰した。男性スター中心の韓国映画界にあってはどうしても女優の役の選択の幅が狭くなるそうで、久々にドラマの世界で水を得た魚のように生き生きした姿を見せてくれた。結婚の夢破れた女が、マネージャーとしてスター志望の青年をサポートするうちに恋に落ちていくという物語で、どんなにひどい目に会おうとも、恋する男のために常に明るく頑張るチョン・ドヨンの笑顔は、見ていてこちらの心まで弾んでくるようだった。

そして2003年に挑んだのが『スキャンダル』。ペ・ヨンジュンと一糸まとわぬベッドシーンを演じたことで話題になったが、身持ちの硬い女性が気持ちを押さえ込もうと耐えながら愛に陥っていく様子は艶っぽくて、愛に震えるような眼差しは、女性が見てもそそられる魅力を放っていた。