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チュ・ジンモ

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

真田広之と金城武を足して2で割ったようなハンサムガイ。何といっても映画『ハッピーエンド』でチョン・ドヨンと全裸で激しいラブシーンを演じたのが強烈に印象に残る。

昔の恋人が結婚してしまったあとも思いを断ち切れず、関係を続ける男。やがてその関係が夫に知れるところとなり、物語は悲劇へと進んでいく。

チョン・ドヨンとチェ・ミンシクの2大スターに絡むチュ・ジンモは、甘いマスクと美しい体つきで注目を集めた。

その『ハッピーエンド』が、映画祭で日本で公開された時、舞台挨拶のため来日もしている。当初チェ・ミンシクが来ることになっていたのだが、急遽キャンセルになり、その代わりにやってきた形となったが、チェ・ミンシク目当てに来ていたファンも生チュ・ジンモが姿を現したとたんに客席は「うわー、素敵!」と目がハートマークになり、皆チェ・ミンシク用に持ってきていた花束を嬉しそうにチュ・ジンモに手渡していたのが面白かった。そのくらい格好良かったのだ。

すらーっとした体型はモデルのようで、線が細く、顔もギリシャ彫刻のように美しい。あまりにも美しすぎると現実感がでないから役の幅も狭まってしまうが、チュ・ジンモの場合、画面では骨太に映るので俳優としては得なタイプだ。

もとは舞台に出ていたが99年の『ダンスダンス』で映画デビューした。これはある女性の踊る姿に一目惚れして彼女のいるダンス教室に入ることになるという医学生の姿を描いた青春版『Shall weダンス?』だ。

チュ・ジンモはこの頃は髪も短くてまだ青さの残るまじめ君という感じ。顔はいいけど、どこかヌボーっとしている。そのまじめ君が踊るのだ。少々鈍くさいながらもレッスンの成果を示すように、みんなと一緒に踊るシーンも出てくる。

2000年には実験的映画制作方法を用いたキム・ギドク監督の『実際状況』に出演。これは撮影時間200分の間フィルムを止めずに15のシーンを演じていくというもの。

内容は、人間の心の中に隠されている危険な動物的本能がどのように爆発していくかの過程を見せるという作品で、チュ・ジンモはほぼ出ずっぱりの主役だ。演じる側にとっては舞台と同じようなものすごい緊張感の中終始画面を引っ張っていったのは大きな自信になったであろう。

2001年はアン・ソンギ、チョン・ウソンらと共演の時代劇『MUSA-武士-』。中国大陸で数ヶ月に渡ってロケをしたという大作だ。将軍というプライドで虚勢を張るが、窮地に陥り、だんだん弱さを露呈していくという役どころ。

そういえば、チュ・ジンモのイメージってどこかに虚無感を抱えた江戸時代の「素浪人」という感じだ。そんなやつれた感じがセクシーに目に映る。

水彩画のような作品と称された『ワニとジュナ』では、同棲中の恋人が他の男を思う様子にとまどいながらも、静かに見守っている役だった。

この人の場合、女性を力ずくで振り向かせようとか、包み込もうとするよりも、気がついて振り返ったらそこにいたというような役どころが多い。そうしたところが「俺について来い」タイプが多い韓国スターの中にあっては貴重な存在感だと思う。

映画にキャスティングされるもいつもキャンセルの憂き目に遭い、不遇な時期が続いていたが、2003年に出たドラマ『パンチ』で久々に活動を再開した。対戦相手を死なせてしまうという傷を抱えたボクサーが、死なせた男の妹をボクサーに育てながらも愛を感じていくストーリーで、チュ・ジンモは珍しく、男っぽく気骨ある青年を演じて新たな魅力を打ち出した。