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ソン・イェジン

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

純粋で透明感を持ち、どこかしっとりとした古典的な雰囲気も感じさせる。ソン・イェジンはそうした存在感で、韓国で‘清純美人’の代名詞となっている。

そのイメージを十二分に生かした作品が映画『ラブストーリー』だった。1960年代の母親の初恋と現代の娘の初恋を結ぶ、2世代にわたる愛の奇跡を描いた作品で、現代っ子のはつらつさも持ち合わせながらも恋に奥手な古きよき時代の女性。か弱そうでいて、でも芯は強い、守ってあげたくなる女性像だ。

韓国映画界は男性スターが中心にキャスティングされるため、女優が全体をひっぱって行く作品と言うのはまだまだ珍しいのだが、『ラブストーリー』はヒロインのソン・イェジンがほぼ出ずっぱり状態。まだ21歳と若い新人女優にはかなりのプレッシャーだったであろうことが伺えるが、『ラブストーリー』は彼女が演技について新たに考え直すきっかけを与えてくれた作品になったそうだ。

この『ラブストーリー』路線を受け継ぐのが『夏の香り』。『冬のソナタ』のユン・ソクホ監督の作品だけに純愛を描いたドラマ。彼女はふわふわとした雰囲気で、柔らかそうで、白いパラソルが似合いそうで、誰もが頭に思い描く‘女の子’像そのものだ。ゆるいウェーブのかかった長い髪に大きな瞳が背景の美しい新緑に溶け合って、見とれてしまうみずみずしさで画面に現れた。この2作品で清純可憐美女のイメージは決定的なものとなった。

ソン・イェジンは顔があどけないベビーフェイスだが、化粧が濃く人工的な美女も多い韓国にあっては、そのどこか素朴で整いすぎていない感じがとても新鮮に目に映る人だ。

芸能界を志したのは中学の頃だったという。内向的な性格だったそうだが、「演技をすれば違う世界を覗くことが出来ると思ったから」という理由で演技者を目指すようになった。高校3年のときに現在のマネージャーを紹介され、大学はソウル芸術大学の映画科に進学。1年間、演技の様々な勉強期間を経て、休学して具体的な活動に入った。

そして2001年に『おいしいプロポーズ』でドラマデビュー。韓国では新人でありながらドラマで主役を務めることは非常に珍しいことだが、初出演にして初主演という快挙だった。デビューから既に清純可憐なお金持ちのお嬢様役。それ以降は映画、ドラマに引っ張りだこの順調な女優人生であるが、演じるのはか弱げな役が多かった。

韓国の巨匠イム・グォンテク監督がカンヌ映画祭で監督賞を受賞した『酔画仙』でも主人公の憧れの女性として出てくるが、病気で亡くなってしまう役だったし、『永遠の片思い』でも幼い頃から持病があるというはかなげな設定だった。

そんな中にあって『大望』という朝鮮時代の商人を扱った時代劇だけは、男装の女性というサバサバしたキャラクターを演じて驚かされた。好きな男が他の女性を思い続ける姿をそばで見守っていく切ない役どころだったが、生き生き、はつらつとし、時にはコミカルな部分も見せながら中世的な魅力を振りまいた。

か弱そうに見えても実は女優根性が据わった人だ。大変な状況にもサラッと慣れ、適応してしまうという。それというのも最初のドラマ『おいしいプロポーズ』があまりにも大変でシャワーを浴びる時間もないほど忙しいという経験を最初に味わったためにその後は「あの時よりはまし」というように乗り切れるのだという。

インタビューをした時にも、ずいぶんしっかりとした考えに基づく成熟した言葉が次々と出てきて感心してしまった。

2004年はチョン・ウソンと催涙性のメロドラマ映画に挑戦しており、観客の紅涙を絞る予定だという。