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シン・ヒョンジュン

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

彫りの深い、エキゾチックな顔立ち。シェイクスピアの舞台などが似合いそうな役者系の顔だが、キャリアのスタートは映画だった。

延世大学体育教育学科在学中に、イム・グォンテク監督の『将軍の息子』の一般公開オーディションを受けて合格。主人公と敵対する日本人やくざの親分役でデビューを飾った。当初は父親からものすごい反対を受け、映画を撮影している間ほとんど顔を合わせなかったそうだが、『将軍の息子』の試写会の席で和解し、今は最も心強い後援者だそうだ。

デビュー作からして新人らしからぬ威圧感で存在を印象づけ、続く『将軍の息子2』の演技で大鐘賞新人男優賞を獲得した。

劇的な愛を演じさせたらこの人の右に出る人はいない。大きく見開いた目に愛と悲しみをたたえる様は女心を切なくさせて止まない。濃い顔が見るものに強い印象を残すが、それだけに日常的な普通の話には適さないのか、フィルモグラフィーを見ると時代物や、ゴッシクロマン物といった非現実的な空間で、影のあるヒーロー的な役柄を演じることが多い。

『銀杏のベッド』での、時空を超えて愛する女性を追いかけてきたファン将軍役はいってみれば悪役なのだが、恋焦がれてたまらない姫を1000年も追いかけ続けるというその一途さは主役のハン・ソッキュよりも見るものの心を動かした。この作品の成功でシン・ヒョンジュンの人気もアップした。

『ソウルガーディアンズ-退魔録-』では悪魔を退治する退魔師で、これも報われなかった悲しい愛を抱え、芽生えた新たな愛にも悲しく決着をつけなければならないという役どころだった。

また、歌手チョ・ソンモのミュージックビデオの中ではチェ・ジウ演じる恋人を目の前で亡くす警察官役など、強面なのに、報われぬ愛を演じさせたら絶品なのだ。そういう役ばかりだったので、シン・ヒョンジュンというと、愛を失って天に向かって絶叫している場面がフッと浮かんでくるのだ。

その風貌からみるとタフガイであるが、上に3人のお姉さんがいて、姪っ子もみんな女の子というように、周囲を女性に囲まれているせいか、女性に近い感性の持ち主なのだそうだ。親しい友人の中にも女性が多いのだとか。

悲恋が似合う男シン・ヒョンジュンのお薦め作は、『アウトライブ-飛天舞-』。韓国の人気時代漫画が原作だが、シン・ヒョンジュンは大学1年の時友人に借りて読んでからというもの、この漫画の虜となり、映画化するなら絶対に主役は自分がやるのだと思ってきたそうだ。だから念願かなっての出演である。というよりは、思いが高じてついに自分で映画化を企画して、制作者や監督も自分で探してきたというのが本当のところらしい。相当な入れ込みようである。

幼なじみの男女が敵対する関係となるが、相手を思い続けるという、ロミオとジュリエットのような設定。長い髪を垂らし、寡黙で孤独な殺し屋となった男が、その深い瞳に愛をたたえる劇的な愛にすっかり吸い込まれてしまう。

そんな彼が大絶賛を浴びたのが『ガン&トークス』。4人の殺し屋を束ねる兄貴分の役で、いつもの瞳に力が入ったような演技をがらりと脱ぎ捨て、飄々とすっとぼけた味を出して、「やるじゃないかシン・ヒョンジュン」という評価を勝ち取った。チャン・ジン監督によれば、お酒の席でいつも楽しくていい感じなのに、演技では決まりきった役柄ばかりで、彼の新たな面を引き出してあげたかったという。拳銃の音を一番怖がっていたのもシン・ヒョンジュンだというし、そんな外見と繊細な内面のギャップが面白い。

『天国の階段』では再び熱い愛に生きる男を熱演。激情がほとばしっていた。