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キム・ハヌル

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

濃厚メークゆえみんなが同じ顔に見えてしまうことも少なくない韓国女性タレントの中にあって、化粧が自然な女優さん。それがはかなげな微笑みを引き立たせている。透明感漂う雰囲気が魅力的。

2000年に出演した映画『リメンバー・ミー』で、自分の恋心を抑え、友に譲るという古風な女性のイメージが強く印象に残る。

キム・ハヌルは高校3年の時、ダンス音楽グループDeuxのメンバー、キム・ソンジェに夢中になり、「その彼とCMを撮れる」という衣料ブランド「ストーム」の告知を見て即座に写真を送った。

しかし2500人もの応募者の中から選ばれた時には肝心のキム・ソンジェは不慮の事故で亡くなってしまったという悲しい思い出があるそうだ。運命の皮肉ではあるがキム・ハヌルにとってはこの「ストーム」のCMで芸能界デビューし、人気が出始めた。

ソウル芸術専門大学映画科に通っていた当時、学校での授業の一環として『ソウルへ行く道』『ノルウェーの森』などの短編映画にも出演したが、商業映画へのデビューは1997年の『バイジュン』から。これは観客が1万人にも満たないという寂しいデビューとなった。

キム・ハヌルの存在が広く知れ渡ったのはその年、新人歌手チョ・ソンモのミュージックビデオ「To Heaven」へ出演したことが大きい。ミュージックビデオでありながらも映画並みのドラマ性とお金をかけたことで評判を呼んだこのMVクリップの中で、彼女は、訳有りで人を殺したイ・ビョンホンと恋に落ちたために抗争に巻き込まれ、恋人の目の前で炎に包まれて死んでいく女性の役をはかなげに演じ、見るものに強い印象を与えた。

映画2作目の『ドクターK』では脳腫瘍の19歳の少女役。病気のために人生を諦め心を閉ざした少女がチャ・インピョ演じる謎の医者にほのかな恋心をぶつけていく様子を丁寧に演じていて好評を得た。

テレビドラマの『Happy together』では再びイ・ビョンホンと共演。長年の恋人ソン・スンホンの将来のために自ら身を引こうとする幼稚園の先生役で、そんな彼女にビョンホンが思いを寄せるという、ここでもやはり、はかなげな耐える女を演じている。

どうもどこか寂しげな顔立ちが「男を影でひっそり思う」というキャラクターにマッチしすぎて他のイメージが思い浮かばない。

99年はもう1本『日射しの中へ』で金銭的には恵まれた財閥令嬢ながらも、退廃的で、生活が荒れている女性を演じている。この人はやはり不健康美が似合う。

キム・ハヌルが再び脚光を浴びるようになったのはドラマ『ピアノ』から。

釜山を舞台に父親の無償の愛を描いた感動ドラマで、血のつながらない弟への恋心を必死に抑えようとする姉の役だった。常に滂沱の涙を流す役で、‘人間蛇口’と呼ばれたほど。

ここまでは相変わらずのしとやかなお嬢様路線だったが、この次に出た『ロマンス』から芸風が変わってきた。

高校教師と生徒との恋の物語だが、キム・ハヌルが演じたのはお転婆でおっちょこちょいの明るいキャラクター。あまり見慣れない姿に最初はちょっと無理が感じられたが、この作品を機に壊れる演技が続くことになった。

映画『同い年の家庭教師』で演じたのは悪ガキ高校生を相手に家庭教師をする元気な大学生。顔をくしゃくしゃにして男言葉をしゃべるなど、『猟奇的な彼女』を髣髴とさせる役柄で、大ヒットを記録した。

イメージ変身が見事に成功したが、個人的にはしっとり路線のほうがしっくり来るかな。