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キム・ソヨン

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

『イヴのすべて』でのクレバーな悪女ぶりに惚れました。

中学生の時演技学校で授業を受けていたとき、SBSのPDの目に留まり、ドラマ『恐竜先生』でデビューした。中学生であったが、与えられた役は高校3年生。デビュー時からして同じ歳の子よりも遙かに成熟した雰囲気を持っていたことがうかがえる。

目元の涼しげな美貌ゆえ恵まれたスタートを切り次々とドラマ出演を重ね、高校2年の時にはドラマ『イエスタディ』で早くもメロドラマのヒロインとして登場し、視聴者をびっくりさせたという。

大人びた美人なのでどうしても実年齢よりも年上の「女おんな」した役にキャスティングされることが多かったが、何せまだ高校生、当時は大人の女性が感じるであろう感情をまだわからないまま演じていたということで自分なりに残念な部分があったようだ。そんなことから、与えられる役柄に演技が付いて行けていないと悟り、演技から一旦離れたという。

そして歌番組の「SBS人気歌謡」でMCなどを務める傍ら、1年間、改めて演技の勉強をしていたのである。そんなところに彼女の演技人生の転機となるような悪女役のオファーがあった。『イヴのすべて』だ。この中で、キム・ソヨンは主役の一人、貧乏で親の愛情に恵まれない悲惨な子供時代を経てきたせいで、表面は哀れで優しい女を演じながらも、その実、果てしない欲望のためなら手段を選ばず次々と男を騙していくという裏表の激しいアナウンサー、ホ・ヨンミ役を演じた。

その悪女ぶりは恐ろしく、下手すると人気に影響を与えやしないかとも思える役だった。しかしキム・ソヨン自身はテレビのインタビューで「すごく気に入ってます。このように喜びを感じる役は初めて」と嬉しそうに答えている。その言葉を裏付けるように乗りに乗った悪女ぶりで、私は目が釘付けだった。善と悪の目つきの表現力がすごく上手で、悪としてしか生きられないホ・ヨンミに哀れさまで感じるようになる程だった。キム・ソヨンはこの悪女演技で非常に注目される女優の一人になった。

まあそんな役だからドラマの中では主に化粧も濃いめできついイメージだったが、化粧が薄いととても感じのいいお嬢さんになる。そもそもこの人は清純可憐で売っていた人だったのだ。

映画デビュー作のハイティーン向け作品『チェンジ』は、落雷のショックで男の子と女の子が入れ替わってしまうという韓国版『転校生』のような映画で、そのなかで、外見は女の子だけど実は男の子という主役を演じている。こんな設定だから、キム・ソヨンは、大股開きで、がに股で歩くわ、長い髪をうっとおしそうに掻き上げてぼさぼさにするわといった飾り気の全くない男っぽい感じがすごくいかしていた。いいじゃん!キム・ソヨン!こうした役から女を前面に押し出した大人っぽい姿まで、いろいろな顔を見せられる俳優である。

『その陽射しが私に…』では、悪女をすっかり返上し、へこたれずに頑張る前向きな少女を演じてすがすがしいほどだった。

彼女について書かれている様々な記事から浮かび上がってくるキム・ソヨン像は、謙譲の美徳を持っている慎ましやかな人らしい。『その陽射しが…』で共演したリュ・シウォンも、「仕事への意欲がすごくて非常に一生懸命で礼儀正しい人」とべた褒めしていた。

『イヴのすべて』のプロモーションで来日したときも、好奇心で瞳をキラキラさせて、かわいらしい雰囲気だったから、人から愛されるキャラクターのようだ。

そして意外にも漫画が大好きな漫画博士なのだそうだ。そんなところにも親近感が沸いてくる。