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キム・スンウ

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

大きくて深みのある瞳、ソフトで、甘いムードが魅力的。そして人を温かく包み込むような安心感を与える声の持ち主である。そんなイメージのためにメロドラマへの出演が多いが、デビューは、90年のイム・グォンテク監督の『将軍の息子』だった。

94年、『結婚を作る』という、男女が会って結婚し、新婚生活につながる過程を扱った結婚ガイド用の広報ビデオ映画に出演するが、この撮影で共演した女優イ・ミヨンと恋に落ちた。その後キム・スンウは兵役に行き、軍に服役中の95年3月に電撃的に結婚式を挙げたのである。当時、イ・ミヨンはスターとして人気を博していた頃。一方のキム・スンウは自身も俳優なのに、いつも「イ・ミヨンの夫」としてしか呼ばれないことに挫折感を感じていたという。

しかし、軍除隊後から徐々に真価が発揮されるようになってきた。まず映画『金を持って高飛びしろ』の助演で人気を得、ドラマデビュー作『恋愛の基礎』で、幼い頃からキム・ヘスにひそかに思いを寄せ見守る純粋な青年を演じて、メロドラマ俳優として注目を浴びるようになった。

ちなみにこの『恋愛の基礎』は、韓国のドラマに詳しい人たちに話を聞くと必ずおすすめのドラマとして名前が挙がる作品である。

96年、チェ・ジンシルと共演した『ゴーストマンマ』が大ヒットし、初の興行俳優と見なされるようになった。妻に先立たれてなかなか立ち直れない夫が、ゴーストになって現れた妻の助けを借りて新しい出発をするという内容のこの映画は多くの観客に涙を流させた。キム・スンウのちょっと頼りなげな感じがうまいのだ。

そして97年のドラマ『シンデレラ』でキム・スンウは確実なトップスターの座を手に入れた。このドラマでは、‘万人の恋人’、‘理想の男性’とまで称されるようになったのである。私としては『ゴーストマンマ』などを見ても、あたたかそうないい感じの人だなと思いこそすれ、素敵とまでは思えなかったのだが、『シンデレラ』で途中からスーツ姿になり、苦悩を抱えるようになったあたりから男の色気が出てきて、「やっぱり素敵だわ」と認識を新たにした。

ほかに好きなのは98年の映画『男の香り』。それまでの役はどちらかと言えばストレートに甘いメロ演技だったが、この作品では一人の男の命を懸けた至高な愛を描いているだけに、静かに深く、抑制の利いた演技が良いのだ。12歳の時に妹として家に連れてこられた少女のために全てを捧げる男。異性としての恋心を抑えて兄として妹を見守り続ける切ない思い。眼の表現力が素晴らしいからこういう抑えた演技の方が返って胸を打つ。

目の演技といえば、映画『秘密』を抜きには語れない。人生に疲れた男が超能力を持つ少女と出会い愛情を感じていくという内容だが、少女と言葉でなく、目と目で会話するという場面が多いので、「うつろな目」、「はかなんだ目」「とまどいの目」「優しい眼差し」と、一つ一つの意味ありげな瞳の表情がものすごく豊かなことに改めて驚かされる。

ここまでくると「なんていい男だ」と株も更に上がってきた。要はこの人の場合、笑わない方がかっこいいのだ(笑)。

一転『新貴公子』はチェ・ジウ演じるお嬢様とミネラルウォーターの配達員のロマンティックラブコメディー。男版シンデレラ物語として好評を博し、メロドラマ俳優としての面目を保った。

俳優としては順調な彼も、私生活では2000年11月、妻のイ・ミヨンとの5年7か月に及んだ結婚生活に終止符を打つことになった。芸能界のおしどりカップルと言われていたが、お互いの仕事に対する欲と性格の差が原因ということだ。