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イ・ミヨン

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より

ミスロッテ出身で、高校1年の時からハイティーンスターとして人気を得ていたイ・ミヨン。その人気絶頂の95年3月、まださして売れていなかった俳優のキム・スンウと結婚して周囲を驚かせた。

しかし当時の韓国で結婚は、「女優の墓場」と言われていたほど仕事にマイナス影響を与えるものだった。

95年の映画『サイの角のように一人で行け』では演技的にも評価を受けたものの、既婚女優だからということでその後2年間は次の作品の声がかからなかったという。若い頃からスターになり挫折を知らないで来ただけにこの時期はとてもつらかったそうだ。しかも皮肉にも夫であるキム・スンウは結婚後からめきめきとスターになってきた時期でもあり、そばで見ていてどんな気持だったんだろうと察するにあまりある。

その後ようやく映画にキャスティングされるようになったのは97年の『ナンバー3』から。この中ではやくざの妻役で、ちょっとおバカな詩人志望のかわいいホステスを演じている。

98年には『囁く廊下~女校怪談~』では母校に赴任して様々な奇怪な事件に接しながら自分の高校時代を思い出し事件解決の糸口を探し出していく知的な教師役で、99年の『私の心のオルガン』では若き教師イ・ビョンホンからあこがれられるマドンナ的女教師役で共に青龍賞最優秀助演女優賞を獲得した。

それにしても結婚前は主役級だったであろうに結婚後は助演級の役ばかり。しかし着実に演技力を身につけ、スターとして以上に演技者として認められるようになってきた。

そんな彼女にとって2000年は本領発揮の年だった。まずドラマ『ラブストーリー』で、不治の病で死んでいく女性が年下の男と恋に落ちるものの、最後までお互いに愛を告白できないという悲しい愛の話のヒロインを演じ、表面は明るく強がっていても心は悲しく泣いているという心情演技がとてもいじらしかった。

映画『チョ・ノミョンのベーカリー』は二組の夫婦がそれぞれ相手のパートナーと恋に落ちるというお話だが、イ・ミヨンは日常に疲れたしっかりものの保険会社の外交員役で、家では夫を足で蹴とばしちゃったりするきつーい妻なのに、チェ・ミンス演じるパン屋の主人と出会ってから徐々に心を開き、恋する女に変わっていくという微妙な女心を演じている。

そして久しぶりの主役となった『魚座』はビデオショップの女店主が客として店に来る無名のミュージシャンに恋をするというお話し。愛を諦められなくなった女の演技は高く評価された。続いても『インディアンサマー』で、暴力夫を殺した女囚のイ・ミヨンが弁護士のパク・シニャンと切ない愛を交わすというメロドラマ。イ・ミヨンのがんばりの結果、結婚から5年で、ミセスでも堂々とメロドラマの主役が回ってくるようになったのだ。だってやっぱりイ・ミヨンはメロドラマがいいもの。

しかし、ようやく結婚がハンディにならなくなってきたと思ったら、2000年の11月、何とキム・スンウとの離婚が発表された。仕事に対する欲と性格の差が2人の距離を広げていった…ということが理由にあげられていたが、映画のオファーが何もないという苦しい時期を乗り越えて今日まで来ただけに、もうただの妻には戻れないのだろう。

そんな離婚発表のあとに行われた2000年の青龍映画賞では『魚座』の演技で主演女優賞を受賞した。受賞のスピーチで「2人一緒だったときにこういう賞がもらえたら本当に良かったんですが…」とちょっと寂しげに述べていたが、妻としてより女優として生きる方を選んだ彼女に何よりの励ましになったのではないだろうか。