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映画&ドラマで見るドラマチック韓国

⑲年上女はタブーではない

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

これまでにも述べてきたように、韓国は儒教社会だけに、上下関係、男性尊重という観念が強かった。それゆえ、それが揺らいでしまう年上女性と年下の男性との恋には世間的にタブー視する傾向が強かった。

だからドラマでも、「年上女性に恋する男とそれに反対する周囲の人たち」という構図で、いかに年上の女性が世間的に体裁が悪いものかということが語られている。恋される女性側も、年下男性からの求愛なんてとても受け入れられないという感じで描かれてきた。

98年のドラマ『LOVE サラン』では、27歳の男性が、自分の学生時代の先生の恋人で、子持ちの35歳の未亡人に恋をする。男はスイス留学帰りの車のデザイナーで、女はカメラマン。何度か一緒に過ごすうちに男は女に一途な想いを寄せ始める。

女「欧米では若い男性がおばさんを誘うの? 人と違ったことをするのがそんなに面白い?」

男「やめてくれ。男が女を好きになるのに理由は要らない。人の考えなんて気にしない。僕自身驚いてる」

女「どこがいいの?」

男「好きだから。先輩の手も耳も声も、目じりのしわさえも君のすべてが好きだ」

女「あなたがいえばいうほど惨めになるだけよ」

男「そんなつもりじゃ……」

と、女性のほうは8歳という年の差に、しかも長い付き合いの恋人の教え子ということで始めは相手にしないが、あまりにストレートな告白に次第に心が動かされていく。

まあなんてったって演じているのがチャン・ドンゴンというすこぶるいい男だから見ていてもそりゃ無理もないと思うが。ドラマは、女性がようやく男の愛を受け入れようとした矢先に自分が病気で余命いくばくもないことを知り、恋は成就しないで終わりを告げる。

2000年のドラマ『コッチ』は、1970年代を背景に、9歳の少女コッチの目を通して、ある家族の一代記を描いた作品。

このメインとなる家族の3人兄弟の末っ子ミョンテ(ウォンビン扮)は、根は優しいが、喧嘩っ早く、チンピラのような仕事をしていたが、兄の友人の8歳年上のカフェのマダムに恋するようになって生き方を変えるようになる。

このカフェのマダムは子持ちでもあるのに、それをものともせず「おばさん、愛してる」と告白するのだ。このエピソードが話題になり、若い男性たちの間に年上の女性を好きになるのに抵抗がなくなったという。

またちょうどこれと同じ年に、韓国の国民的人気の女優チェ・ジンシルと、5歳年下の当時巨人軍の投手だったチョ・ソンミンのカップルが婚約発表をした。

婚約発表をしたときにはチェ・ジンシルのほうが人気もあり、大物なのに、若くてハンサムなチョ・ソンミンがもったいないという意見が多かったという。

しかし、ドラマの中だけでなく、有名人が堂々と付き合う姿を見て、こういうのもありだなと思った人が多かったのだろう。このあたりからタブー感が薄まってきたように思う。

『ロマンス』(02年)は、高校生の19歳の男子学生と25歳の女性教師の恋物語。当人同士、最初年齢を尋ねあったときには、それぞれ相手のことを「6歳も年上、ご飯食べずに年食ってんなよ」「若ーい」と密かに思っているが、それが付き合いをためらう原因にはなっていなかった。

ここでは年の差よりも教師と生徒という関係のほうがクローズアップされていて、年の差でのタブー感はもう漂っていなかった。

『孤独』(02年)は25歳の男性ミン・ヨンウ(リュ・スンボム扮)と40歳の女性チョ・キョンミン(イ・ミスク扮)という韓国ドラマ史上最も年の差があるカップルだった。

最初に出会ったとき、ヨンウは兄から「あの年増が女に見えるか? 母さんが死んでから年上好みになったのか? 前の彼女も1、2歳年上だった。兄貴の忠告だ。母親と女は別物だ」といわれてしまう。

ヨンウはドイツ留学帰りの優秀な広告プランナーで、入社した会社の理事がキョンミンだった。キョンミンは若い頃好きだった男の子供を生んで未婚の母として苦労しながら現在の地位に上ってきた女性。15歳の娘の母親として、もう女としての人生は考えていなかった。

そこに現れたのが、物怖じしないで自分に向かってくる年若いヨンウだった。

キョンミン「私の年知ってる?」

ヨンウ「おおよそは。39、40、41かな」

キョンミン「それでも女に見える?」

ヨンウ「男じゃない」

キョンミン「困った子」

キョンミン「忘れないで。君は25歳で、私は40歳よ」

ヨンウ「あなたが40でも50でも、僕が好きな限り、あなたは女だ」

と、上司ということも省みず迫るのだ。

また別の場面では、

キョンミン「私は時々あなたが違う星の人間のようにわからなくなるわ。世間の目が怖くないの?」

ヨンウ「ぜんぜん」

キョンミン「あなたが私を好き? 許されるとでも思ってるの? 許されないわ。だからあなたが重荷なの」

ヨンウ「どうして? 女が40で男が25だから? ならもし僕が40であなたが25なら許されるの? 世間は偏見のかたまりだ、あなたのように。男が年上であるべきだなんて誰が決めた法則? 僕の生き方は僕が決めます。僕は好きな人と一緒に住む。人目なんか気にせずに」

キョンミン「本当に怖いもの知らずね」

ヨンウ「そうです。僕は無鉄砲であなたは臆病。だから僕たちは似合いのカップルだ」

ここに取り上げた以外にもドラマの中の年上女性と年下男性のカップルは目に見えて増えている。

実際にも、統計庁が発表した「2001年婚姻離婚統計結果」によると、結婚したカップルのうち、再婚女性と初婚男性の割合が1972年には0・5%だったものが、2001年には5・6%にまで増えている。およそ11倍の伸びである。また、同い年、もしくは女性のほうが年上というカップルは4組に1組の割合になったそうだ。

今までは、年の差があって簡単には結ばれそうもないところがドラマの中の適度な枷になってよかったが、この分だと年上女性と年下男性のカップルが普通になって、年の差による葛藤もおこらなくなる日も近い。

ちなみに、それぞれのドラマの男性が、愛する年上女性を呼ぶときの呼び方だが、『愛』ではソンベニム(=先輩様)、『コッチ』はアジュンマ(=おばさん)、『ロマンス』は、最初は名前にさん付けで呼んでいたが、相手が先生とわかってからはずっとソンセンニム(=先生様)、というように色気がない。

しかし、『孤独』では相手が上司であるにもかかわらず、役職名で呼ばずにタンシン(=あなた)と呼んでいて、韓国としては画期的で、余計に艶っぽかった。

 

参照作品

『愛』
1998年 MBC
PD=イ・ジンソク、イ・チャンハン 脚本=チュ・チャンオク、チュ・ヨンミ、チェ・ジンウォン 出演=チャン・ドンゴン、キム・ミスク、チェ・ジウ
前半は8歳年上の女性を愛する若い男の情熱的な恋を描き、後半は、心から愛した女性を病気で失った男の魂の癒しを描いている。人は全身全霊をかけて人を愛したら、そしてその人を失ってしまったらどうなるのだろうか。その部分に焦点を当てた珍しいドラマだった。

『コッチ』
2000年 KBS
PD=チョン・ソンヒョ 脚本=イ・キョンヒ
出演=イ・ジョンウォン、ウォンビン、パク・チヨン
1970年代を舞台に、コッチというひとりの少女の目を通して語られるある一家の物語。3人の兄弟の半生記だが、中でも、末の弟を演じたウォンビンがカフェの子持ちのマダムに恋をする部分が話題になった。

『孤独』
2002年 KBS
PD=ピョ・ミンス 脚本=ノ・ヒギョン 出演=イ・ミスク、リュ・スンボム
企業イメージコンサルティング会社の理事として社会的に成功しているキジョンは40歳。15歳の娘がいる未婚の母だ。そんな彼女の前に部下として現れた25歳のヨンウ。彼女に愛の告白をするヨンウにキジョンは揺れる。真摯な愛を描くのが得意なピョ・ミンスPDとノ・ヒギョン作家のコンビはマニアのファンを生み出してきたゴールデンコンビ。