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映画&ドラマで見るドラマチック韓国

⑱仕事よりも愛を選ぶ男たち

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

韓国ドラマではしばしば、ひとりの女性への一途な愛を貫く男が登場する。何があろうと、思いは揺れない。そこまでするか?と思わせるほどの一途さは、乙女心をくすぐってやまない。またそれをかっこいい素敵な男優がやるものだからたまらないのだ。

『ホテリアー』は、ソウルの特一級ホテルの企業買収を背景に、ホテルを巡る人々の愛と人間模様が描かれる作品。このドラマの中では、ホテルのM&A専門家、在アメリカ韓国人のシン・ドンヒョク(ペ・ヨンジュン扮)という人物がこの一途な男に当たる。

幼い頃アメリカに養子に出されたという過去があるため、どこか影を背負っているが、いくつものM&Aを成功させてきたやり手の彼が、ソウルホテルの女性スタッフ、ソ・ジニョン(ソン・ユナ扮)に恋をする。

出会いはラスベガス。ドンヒョクがレストランで食事をしていると、元恋人の支配人を連れ戻すためにラスベガスに来ていたジニョンが、「肉は固いし、グラスにはひびが入っている。いいレストランと聞いてきたのにがっかりだわ」と従業員に大きな声で文句をいっていたのを目にして、彼女に興味を持つ。

私はこの場面を見て、ジニョンのあまりの剣幕に引いたのだが、ドンヒョクはそんな彼女が気にいって匿名でスカーフをプレゼントするのだ。その後ふたりは偶然会って食事をする機会があるのだが、そこで彼女が、自分が依頼されていたM&A対象のホテルのスタッフだと知ると、めんどくさいからと断っていた仕事を引き受け、21年ぶりに韓国に帰る決意をする。

そしてジニョンが働いているソウルホテルのVIPルームに泊まり込み、密かに仕事を進めながらジニョンへの猛烈アタックを開始するのだ。

まず着いたその日にジニョンを呼び出し、翌日にはほぼ強引にお昼に誘い出し、これまた強引に市内観光の案内を引き受けさせる。そしてバラの花300本を贈り、「また一緒にラスベガスに行きたい」と甘く囁き、誕生日には高価なネックレスを贈るというプレゼント攻勢。

仕事ではさまざまな策を弄するドンヒョクも、恋の前では駆け引きすることなく、ストレートに気持ちをぶつけていく。ジニョンも元恋人の総支配人ハン・テジュン(キム・スンウ扮)が気になりながらも、そんな一途なドンヒョクに気持ちが揺れていくのだ。

しかし、ドンヒョクが自分たちのホテルの乗っ取りを計画している敵方の人間だとわかり、ジニョンに「私をだましたのね、この詐欺師」と拒絶されてしまう。

ジニョンから背を向けられたドンヒョクはどうしたか。結局M&Aのクライアント契約を破棄し、ソウルホテルを救うため、自分の全財産をはたいてソウルホテルの株を買い取り、あげく、自分のクライアントだったソウルホテルの敵を告発するのだ。

ジニョンにプロポーズするも、ソウルホテルに思いを残す彼女は受け入れられないとなると、いったんはアメリカに帰ったドンヒョクだが、ジニョンの為にアメリカでの仕事を引き上げて、また韓国に、ジニョンのもとにと戻ってくる。

地位も名誉も財産もかなぐり捨てて、愛する女のために行動する。まさに仕事よりも愛を選んだ男、シン・ドンヒョクはその代表選手だ。

 

『ヒョンジョン愛してる』の財閥3世ボムス(カム・ウソン扮)は、ひょんなことから知り合ったテレビ番組制作会社のディレクターのヒョンジョン(キム・ミンソン扮)と恋に落ちるが、ヒョンジョンの家柄が気に入らない親の反対に反発して家を出る。

そして「絶対にヒョンジョンをあきらめない」と実力行使するボムスに親が譲歩して結婚を許すことになるのだが、ボムスの両親はヒョンジョンを自分たちの家の色に染めようとする。生き生きしているのが魅力のヒョンジョンにそんな窮屈な思いはさせられないと、ボムスは理事の座を降りるばかりでなく、家との縁を切って、お金を一銭も持たない状態から始めようとする。

そしてさすがに最後には親にもすべてを認めさせて元の座に戻るのかと思いきや、「会長の息子だからっていきなり理事になるという人事はおかしかったんですよ。本当に能力のある人が跡を継ぐべきです」といって、その座にふさわしい人に地位を譲り、自分は経済本の英語翻訳などをしながらヒョンジョンとつつましく生きていく。愛のために財閥3世の座も、裕福な暮らしも、仕事も投げ捨てるのだ。

韓国ドラマによく出てくる描写で乙女心をくすぐるのは、ある誤解が解けて男が女のもとへと駆けつけるという、ラブストーリーものには欠かせない定番のシーンだ。

あるときは走って、あるときは車で、女性のもとにいち早く駆けつけ、見つめ合い、抱き合って、「誤解していて悪かった……」というようなやり取りが繰り広げられる。中には飛行機で駆けつけるというすごいのまであった。 それが『星に願いを』だ。


『星に願いを』は、裕福な家庭の歌手の青年ミン(アン・ジェウク扮)と孤児で貧しいながらもデザイナーを目指す女性ユニ(チェ・ジンシル扮)のシンデレラストーリーだが、この中では、誤解して喧嘩したままミラノに出張に行ってしまったユニを、ミンは自分のコンサートのリハーサルをすっぽかし、なんと飛行機に乗ってミラノまで追いかけていくのである。

ミラノで再会したふたりだが、ユニのほうは突っ張って、無視して行こうとするのだが、ミンはそんなユニの腕をグイッと強引につかんで引っ張っていく(ちなみに、この”有無をいわせずグイッと腕を引っ張っていく“というのも定番のシーンで、必ずといっていいほど恋愛ドラマには出てくる)。

そしてふたりは愛を確認しあって(といっても服を着たまま抱き合うだけ。何もしないのが韓国ドラマ)、翌朝一番の飛行機でミンは韓国に戻り、コンサートには少し遅れたもののなんとか間に合った。

冷静に見れば、「新人の分際でリハーサルもろくにやらずに本番に立つなんて、なんとプロ意識のない」と思うが、冷静になっちゃいけないのが韓国ドラマ。ヒーローたるもの、仕事より愛を選ばなくてはいけないのだ。