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映画&ドラマで見るドラマチック韓国

⑮あなたの胎夢は何ですか?

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

日本では聞き慣れない言葉だが、韓国ではよく胎夢を口にする。胎夢とは、妊娠したかどうか、また胎児の性別、将来の運命などに関して暗示する予知夢のことで、受胎前後や出産前後に見るものなのだそうだ。

何も女性だけが見るとは限らず、胎児の父親や、祖父母、義理の父母など近い親戚が見るときもあるという。

『エンジェル・スノー』では、不妊に悩む夫婦が主人公。妻のジヌォン(コ・ソヨン扮)は自分の両親に早く先立たれ、おばの手で育てられたという境遇のため、どうしても自分の血を分けた子供がほしいと人工授精まで試みていた。そんなときおばに語るのが夢の話だ。

「夢を見たの。おばさんの果樹園で梨の木の白い花が突然雪に変わるの。それが降り注いで幸せだったわ。何のお告げかしら」

この後病院で人工授精成功の知らせを聞き、「私たちの赤ちゃんの胎夢は雪ね」と理解するのである。

ファミリードラマ『キツネと綿菓子』では、この胎夢を売り買いする話まで出てくる。保守的な一家の長男の嫁ヨオク(キム・ヨジン扮)は、一家内での自分の立場を強くしたいと、どうしても次男ガンチョル(ユ・ジュンサン扮)の妻ソンニョ(ソ・ユジン扮)よりも早く子供を生まなくてはという強迫観念に駆られている。

ソンニョはまだ20代前半の若い漢方医なので、妊娠をあせってはおらず、義姉ヨオクが妊娠するように協力しているが、ある日ガンチョルが、友人が釣り上げた魚に関する変な夢を見たと言い出したことから話がややこしくなる。

ヨオクはその夢は胎夢に違いないと思い込み、ガンチョルに対して、「その夢を売って下さい」というのだ。

ヨオクは自分の夫から「夢を売れだなんて突拍子がなさすぎるよ」といわれるが、「あれが本当に胎夢だったらどうするの」「代価は払いますから」と頑として譲らない。

ソンニョもびっくりするが、一家の平和のためには義姉ヨオクに従ったほうがいいと考える。

ソンニョ「お義姉さんの望みどおりにしてあげようよ」

ガンチョル「嫌だ。俺の子の胎夢だったらどうする? 俺も子供ほしいんだ」

ソンニョ「旧式の考え方で騒ぎを大きくしないで」

ガンチョル「現代科学でも解明できない摩訶不思議も多いんだぞ」

といって最初は渋るが、結局はこの夢をヨオクに譲ることにする。

韓国スターのプロフィールを調べていると、そこに生年月日や身長体重と並んで”胎夢“が紹介されている場合もある。偉業を成し遂げた人や、有名になった人はインタビューの際に「胎夢は何だったんですか?」とよく聞かれているし、また自分の半生を語るときなども、自分の胎夢はこうだった……と語り出す人が多い。

それほど韓国の人にとって胎夢は根付いているものなのである。

日本で大活躍中の韓国の歌手BoAは、母親の夢に聖母マリアが現れて娘であることを暗示したそうだ。ワールドカップサッカーの韓国代表のキャプテンだったホン・ミョンボ選手の胎夢は青大将が来て体をぐるぐると巻く夢だったという。

2002年に結婚情報会社のデュオが、出産経験のある女性426人を対象に「胎夢と子女」に関するアンケートを実施した結果、回答者のうち82・9%の人が胎夢を見たそうだ。

男の子の胎夢で最も多く見たのは、柿、桃、唐辛子などだったという。また女の子の胎夢では青大将、蛇、龍などのうろこ動物が最も多かったそうだ。