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映画&ドラマで見るドラマチック韓国

⑪小学生に5つの塾は基本

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

韓国は教育熱が高い。一種すさまじさも感じる教育社会だ。なにせ高校への進学率が99・6%、そして大学への進学率(専門大学含む)が、74・2%なのだ(統計庁発表「2002韓国の社会指標」より)。

日本の2002年の調査では、高校への進学率が97・0%で、大学、短大への進学率が48・6%(平成14年度文部省「学校基本調査」より)だから、日本が学歴社会で受験地獄だなんていってるのは、韓国の人から見たらまだまだ甘いというものだ。

そんなわけで、韓国の受験生とその親にとっては、毎年11月ごろに行われる大学入試のための修能試験(日本でいうセンター試験)が最大のメインイベントで、その日に向けて勉強勉強また勉強の日々を過ごしてくる。

校門の前で何人もの受験生の母親が取り付かれたように一心不乱に祈っている姿をニュースで見たことがある人も多いだろう。

『ビート』は、若者たちの愛と苦悩を描いた青春映画。主人公のミン(チョン・ウソン扮)は高校に目的を見出せず中退してしまい、アウトローな生き方をしている。そんなミンがクラブで知り合ったのが、優等生のお嬢様ロミ(コ・ソヨン扮)だった。ロミとミンは付き合いだすが、ロミの行動は常に勉強中心だ。

ロミ「セックスと映画とスポーツは人間をだめにする。日曜日に野球を見てて大学に入れる? 不可能よ。友だちはみんなトップクラスなの。全校のたった3%。試験の結果が悪いとそこから追い出される」

ミン「それが怖いの?」

ロミ「怖くはない。私のプライドが許さないだけ。生き残りゲームに勝つためにはどんな手でも使うの。今の私は勉強マシン。感情なんてないわ」

実際どんな手でも使うといっている通り、ロミはミンと付き合っているのをカモフラージュにして、その裏でしっかり勉強しているという形で周囲の友だちを出し抜いていたのだ。それにつられて勉強がおろそかになっていた友人が模擬試験で結果が悪かったのを苦にして、ロミの目の前で電車に飛び込み自殺してしまった。

この同級生は親から、「兄弟がみんなソウル大だからソウル大に入らなきゃ死ね」といわれていたのだ。この事件をきっかけに、ロミは精神的にショックを受けて優等生人生が狂っていくのだった。

これでもわかるように現在の女性の大学進学率も、男性と数%ほどしか変わらないところまで行っている。

『真実』では、いい大学に入らなければならないプレッシャーのために替え玉受験を行ってしまう女学生が出てくる。

この家は父親が議員をやっているが、母親は地方大学出身で学歴はたいしたことがない。そのため、奥様同士の集まりで出身大学の話になるといつもびくびくしている。だからこそ娘にはいい大学に入るように繰り返しいうのだ。

母「あんたは必ず名門大学に入ってちょうだい。集まりになると大学の話が出るか怖くて。三流大学を出ると一生こんな思いをするのよ。あんたさえいい大学に入れば、これだけでも胸を張っていられるから」

親の気持ちもわからないでもないが、この言葉が娘を追い詰めていくのだった。

韓国の教育熱に関しては、2003年になって国連児童権利委員会が、「韓国の入試中心教育と早期教育があまりに過熱し、青少年らが激しいストレスを受けており、精神的身体的に健全な成長ができない」と評価したほどだ。『中央日報』の記事によれば、小学生に5つの塾は基本だそうで、塾同士の競争も激しく、小学5、6年生に中学3年生の過程を教えるようなところも出てきているそうだ。

ドラマには留学もよく出てくる。特に財閥系の金持ちが出てくるドラマでは、彼らは当然のように、留学経験があるか、もしくはこれから行くことになっている。「留学=ステータス」という感じだ。

先に挙げた『真実』でも、財閥のひとり息子のヒョンウ(リュ・シウォン扮)は、大学卒業後留学することになっているが、議員の運転手の娘ジャヨン(チェ・ジウ扮)を好きになり、留学も一緒に行けるように粘り強く両親を説得していた。

実際アメリカで勉強している全留学生のうち、韓国人の数は3番目に多いそうだ。『中央日報』の記事によれば、ワシントンの国際教育研究所の留学生現況調査の結果、2001年から2002年にアメリカへ留学した韓国人は4万9046人で、前年よりも約8000人増えたそうだ。ちなみに1位はインド人で6万6836人。2位は中国人の6万3211人、4位は日本人で4万6810人だった。

インドや中国といった人口大国はさておき、人口1億2千万人の日本より人口が半分に満たない韓国でこの数字とは、留学にかける並々ならぬ意気込みが伝わってくる。

子供の教育のために母親も一緒に移民する家庭もあるくらいだ。私の韓国の知人も、息子の英語教育のために、父親を韓国において息子と一緒にアメリカに住む計画だと明言していた。

こんな感じなので当然教育費もかかる。これも『中央日報』の記事によれば、韓国の教育費出費率は、国内総生産 (GDP)の6・8%を記録し、経済協力開発機構(OECD)メンバー30カ国のうち最も高かったそうだ。

 

参考作品

『ビート』
1997年作品
監督=キム・ソンス 脚色=シム・サン 出演=チョン・ウソン、コ・ソヨン、ユ・オソン
アウトサイダーのミンは高校を自主退学し、夢もなく生きている青年。高校時代に優等生だったロミと再会し、愛に生きようとするが、親友のためやくざな道に巻き込まれてしまう。過酷な受験戦争についていけず落ちこぼれた若者たちのやるせない青春を描いた、苦さの漂う作品。