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映画&ドラマで見るドラマチック韓国

②善キャラだって負けない女同士の争い

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

2002年にテレビ朝日系で放送された『イヴのすべて』は、境遇の違う両極端の2人の女性が、放送局の看板ニュースアンカーの座と恋をかけて激しいバトルを繰り広げるという熱いストーリー。

母を亡くし、父親の手ひとつで育てられたが、周囲の愛情に恵まれ、素直に純粋に育ったジン・ソンミ(チェリム扮)と、母が家出し、酒飲みの父親の虐待のもとで育ち、野望と出世欲をかなえるためには手段を選ばないホ・ヨンミ(キム・ソヨン扮)、というわかりやすい善と悪の構図になっている。

このドラマに代表されるように、韓国ドラマでは善と悪の対決を前面に押し出したドラマがとても多い。わかりやすい意地悪キャラの存在こそが、韓国ドラマの特徴なのだ。

日本ではこんな場合、いじめられるキャラクターのほうは、黙って耐えたりして、男の子が思わず守ってあげなくちゃと思うのかもしれないが、韓国では善キャラのほうもやられっぱなしではない。

結構言い返してくれるから見ていて少しは溜飲が下がるというものだ。ときには「この子本当に善キャラか?」と思うようなきついことをいったりもする。

『真実』は、議員の父を持つお金持ちの家の娘とその家の地下に住む運転手の娘が出てくる物語。

金持ちの娘シンイ(パク・ソニョン扮)は、金と権力を鼻にかけた女。頭がよくないため、お金の力で運転手の娘のジャヨン(チェ・ジウ扮)に身代わり受験をしてもらって大学に入ったという経緯があった。

そんなこともありこのふたりはお互いがお互いをよく思っていない間柄だ。そこにシンイがずっと憧れてきた財閥の息子ヒョンウ(リュ・シウォン扮)が登場し、この彼が素朴なジャヨンに好意を抱き積極的に接近していく。当然シンイは面白くない。

シンイ「あんた彼に興味がないっていってたでしょ。あれは猫かぶりだったの?」

ジャヨン「何?」

シンイ「関心ないですって? あんたがいわなきゃ彼がアルバイト先をどうやって知るのよ、話が合わないでしょ」

ジャヨン「知りたかったら、本人に直接聞けば? それとも一日中私にくっついている?」

シンイ「あんた私の前で威張らないでよ。彼に好かれているからって、私を軽視しているけど、彼にとってあなたは麦飯のようなものよ」

ジャヨン「何?」

シンイ「白いご飯に飽きるとたまに恋しくなるイモ臭い食べ物よ。くれぐれも勘違いしないように」

ジャヨン「人間って、止めると余計にしたくなるのよ」

シンイ「私を脅してるの?」

ジャヨン「本当に脅そうか? 替え玉試験のこと言いふらしてもいいの?」

その後、ジャヨンと財閥の息子ヒョンウが紆余曲折を経てうまくいった後も、

シンイ「私、絶対に彼をあきらめないわ。いつまでも待ってる。彼が選択の間違いに気づいて私に戻るまで」

ジャヨン「それは絶対にないわ」

と勝ち誇ったように言い切るのだ。ヒョエー強い。

ここまでになると意地悪キャラのはずのシンイのほうが気の毒に思えてくるほどだ。

『星に願いを』の主人公は、デザイナーを目指している孤児のユンヒ(チェ・ジンシル扮)。死んだ母親の昔の友人だったという男性の家庭に引き取られるが、その妻の有名デザイナー(パク・ウォンスク扮)が、もしやユンヒの母親は夫の愛人だったのではと疑い、なにかとユンヒにつらく当たるという設定。

そして、その娘と息子もしょうもないキャラの兄妹で、いってみればユンヒは、意地悪3人組に囲まれているという構図だ。

デザイン画が認められてアパレル会社に勤めることになったユンヒは、大金持ちの息子ミン(アン・ジェウク扮)と付き合うようになる。彼は新進の歌手だ。

だが、当然のようにミンの家では孤児のユンヒとの付き合いを面白く思わず、手切れ金を払って別れさせようとする。ユンヒはもちろんそのお金は受け取らないのだが、後日その話を聞いた養い親の有名デザイナーがユンヒにグサっという。

デザイナー「傲慢な女ね、大金を拒絶するなんて」

ユンヒ「お金がすべてでしょうか」

デザイナー「貧乏人に限って気位だけは高い。身の程を知れっていうでしょ。母が母なら娘も娘ね」

ユンヒ「母をご存知なんですか」

デザイナー「知るわけないわ」

ユンヒ「では言い過ぎです。死者を非難するなんて」

デザイナー「だから……、だから?」

ユンヒ「その年で礼儀知らず」

デザイナー「何ですって、バカにして」

後は取っ組み合いの喧嘩である。儒教社会もなんのその。年上だろうと恩ある人の妻であろうと、自尊心を傷つけられたり、聞き捨てならないことをいわれたら言い返す。これが韓国だ。

言葉だけでなく、手が出るのも特徴だ。

『危機の男』は、30代後半の妻と40代の夫との間に訪れた離婚の危機を描いた不倫ドラマ。

夫が昔の恋人に気持ちが揺れているのを感じている妻クミ(ファン・シネ扮)が、新たに就職した出版社の社長の妻で、副社長になっている女(ビョン・ジョンス扮)と言い争う場面がある。

副社長「ご主人は何をしているの?」

クミ「別に、いいじゃない、知りたがり屋なのね」

副社長「別にいいわ。いいにくそうだし」

クミ「いいにくいんじゃなくていいたくないの」

副社長「ご主人とうまくいってないのね」

(ここでクミは切れる)

クミ「ちょっと、あんた、うまくいってなかったらどうなの? あんたに関係ないでしょ」

副社長「誰に向かって」

クミ「何様のつもりなの、このバカ女が」

そう言い放って帰ろうとするクミの背中に向かって、副社長はテーブルに置いてあったネギキムチを皿ごと投げつける。

副社長「なんて女なの、生意気な」

クミも負けずに白菜の皿をぶっ掛ける。

副社長はキーっとなって、「この服高かったのにー」とわめくのだ。

このようにものを投げつけるのもかなり多いが、女同士が髪を引っ張り合って喧嘩したり、足蹴りが出たりというすさまじいものも多い。

『ホテリアー』では、女性スタッフ同士、女主人公のVIP担当の当直支配人ジニョン(ソン・ユナ扮)と先輩のハウスキーピング支配人(チェ・ファジョン扮)とのけんかが見られる。

ジニョンはかねてから先輩の仕事ぶりが気にくわなかったが、ハウスキーピングの倉庫に隠れてめそめそしていた先輩を見つけてついに怒りを爆発させる場面だ。

ジニョン「客室で紛失事故よ、こんなところで少女漫画やってるんじゃないの」

先輩「何? 少女漫画ですって?」

ジニョン「こんなところでこそこそと」

先輩「いったわね、当直支配人になると先輩も目に入らないわけ? いくら実力と役職が優先する時代でも、私は年も経歴もあんたの大先輩よ」

ジニョン「先輩なら先輩らしくしてよ。指示は無視するし、噂は広げるし、部署同士で喧嘩はさせるし、まずくなると自分だけ逃げて。胸に手を当てて考えて。自分の幼稚さとちゃっかりさを」

ここまでいわれて先輩はそこに置いてあった使用済みのシーツを投げつける。ジニョンも負けずとシーツを投げ返す。

そして先輩がジニョンの顔を殴りつけ、倒れるジニョン。ここからはもう両者つかみ合って、髪を引っ張るわ、足で蹴るわの大立ち回り。途中で仲間が止めに入るが、

先輩「あんた覚悟しなさい、私我慢してきたけど」

ジニョン「放して、今日で仕事を辞めてもかまわないわ」

先輩「あんたひとりが支配人やってると思ってるの?」

ジニョン「なら支配人らしくしてろ」

先輩「こいつ誰に向かって」

とまたやりあうのだ。いやあ、これだけやれたら返って気持ちいいだろうなとすら思えてくる。

ドラマの中ではこのふたり、その後は結構なかよくなっていくのだから、やはり韓国では、いいたいだけいってすっきりするせいか、あとを引かないのだろう。

 

参照ドラマ

『イヴのすべて』
2000年 MBC
PD=イ・ジンソク 脚本=パク・ジヒョン 出演=チェリム、キム・ソヨン、チャン・ドンゴン、ハン・ジェソク
育った環境の違う2人の女性、ソンミとヨンミ。2人はなにかと張り合い、アナウンサーになってからも、アンカーの座や恋を巡って激しくぶつかり合う。善と悪、麗しい王子様に華やかな仕事。これぞトレンディードラマの決定版。力強い女同士のバトルは、怖ーと思いながらも、なぜか見ていて気合が入った。ラストに近づくほど悪女のヨンミに肩入れしたくなった人も多いのでは。

『真実』
2000年 MBC
PD=ソ・ヒョンギョン 脚本=キム・イニョン 出演=チェ・ジウ、パク・ソニョン、リュ・シウォン、ソン・ジチャン
議員の娘とその運転手の娘。財閥2世の男性を巡って愛と憎しみが入り混じる。そこに野望をかなえるためにはなんでもする男も加わり、4人の男女の愛憎模様が描かれる。身代わり受験、事故の偽装工作といった事件性を絡めながら最後には真実を暴くと言う物語。リュ・シウォンのいいとこの坊ちゃんぶりはさすがに板についていた。

『星に願いを~A wish upon a star~』
1997年 MBC
PD=イ・ジンソク 主演=チェ・ジンシル、アン・ジェウク、チャ・インピョ
孤児院出身の少女が金持ちの家に引き取られ、その家族にいじめられながらもデザイナーを夢見て成功をつかむという韓国版『キャンディーキャンディー』。ヒロインと恋する歌手ミン役のアン・ジェウクがこのドラマでブレイクした。中国における韓流の火付け役になったドラマ。ちなみに私を始め、このドラマがきっかけで韓国エンタメにはまった人は多い。

『危機の男』
2002年 MBC
PD=イ・グヮニ 出演=ファン・シネ、キム・ヨンチョル、ペ・ジョンオク、シン・ソンウ
結婚10年目の夫婦が陥った離婚の危機。夫の前には昔の恋人が現れ、妻にも心を騒がせる男性が出現する。「危機の男」と言いながらも物語は不倫ドラマの女王ファン・シネの目線で進んでいく。なんと言ってもファン・シネの不倫相手になるシン・ソンウの、愛に満ちた眼差しが最高!切ない音楽も相まって酔わされました。

『ホテリアー』
2001年 MBC
PD=チャン・ヨンウ 脚本=カン・ウンギョン 出演=キム・スンウ、ソン・ユナ、ペ・ヨンジュン、ソン・ヘギョ
ソウルの一流ホテルを舞台に繰り広げられる企業ラブストーリー。華やかなホテル内におけるスタッフの苦労や、ホテル乗っ取りの危機。そこに総支配人のハン・テジュンとM&A専門家シン・ドンヒョク、おきゃんな女性スタッフジニョンの三角関係が最後まで引っ張る。ドンヒョクが切なくて、なんとか恋が実ってほしいと心から願った作品(笑)。しゃれたセリフの数々、ペ・ヨンジュンの洗練されたかっこよさに最後まで釘付けだった。