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映画&ドラマで見るドラマチック韓国

㉓泣く男、怒る女

東洋経済新報社「韓国はドラマチック」(2003年7月発行)

韓国の男はドラマの中でよく泣く。しかも、男泣きというよりは、愛のために泣くのである。

男は泣いてはいけないと教わらないのか?と思ったが、そのへんはちゃんと「男の子だろ、泣いちゃだめだ」というセリフもよく耳にするので、やはり小さい頃から「めったなことで男は泣くべからず」という教えは存在しているようだ。でもその割にはメロドラマでの男たちはたくさん涙を流すのである。

よく涙する男の筆頭は、ペ・ヨンジュンだろうか。誤解がないようにいっておくと、何も彼がというわけではなく、彼の演じる役柄がそうなのだ。

『愛の群像』では、シニョン(キム・ヘス扮)に愛の告白をするが、世間体が怖いシニョンは、それを受け入れることができず、拒絶されたジェホ(=ペ・ヨンジュン)は目から一筋の涙を流す。

その後やはりジェホなしでは生きていけないと感じたシニョンから、「みんなと戦うのが怖かった。でも一番怖いのはあなたに会えないこと。あなたがそばにいないこと。自分をだますこと」と愛の告白をされ、またここでも愛が成就した喜びの涙を静かに流す。

そしてその後も、これでもかという愛の試練がジェホを襲うのだが、そのつど泣かずにはいられない。

何かのインタビューでペ・ヨンジュン自身も「このドラマではよく泣く場面があって、しょっちゅう泣いていたような気がする」と語っていたほどだ。

『ホテリアー』では、愛するジニョン(ソン・ユナ扮)から「詐欺師、私をだましたひどい奴」と責められ、誤解を解こうと彼女を部屋に呼び出すが、そこでも涙ながらに「君を愛する気持ちは本当だ」と訴えるが、かたくなに拒絶され切ない涙を流す。

『冬のソナタ』では、ペ・ヨンジュンはアメリカからの帰国子女イ・ミニョンという設計会社の理事に扮している。物語の序盤では、それまでの繊細な感じからちょっとイメージチェンジしてプレイボーイふうの軽い感じで現れるが、後半に入って、自己探しを始めるあたりから、ユジン(チェ・ジウ扮)に拒否されて涙、思いが通じて涙、さまざまな愛の葛藤で涙と、もう涙、涙の展開になってくる。

これはペ・ヨンジュンではないが、『秋の童話』は、生まれたときに取り違えられたウンソ(ソン・ヘギョ扮)と兄として育ったジュンソ(ソン・スンホン扮)が互いに思い合いながらも結ばれず、おまけにウンソは白血病になってしまうという悲しい物語だけに、登場人物みんながみんな泣いていた。特にソン・スンホンは泣きすぎで常に鼻が赤かった気がする。

とにかく韓国の俳優は男も女も泣く演技がうまくないといい俳優にはなれないなあというのが実感だ。

一方女は、何かあるとすぐにヒステリックに怒る。女性は声が高いからこうなるとキンキン状態で、聞いていてつらくなるほどだ。日本のドラマではそう思うことはないが、韓国のドラマを見ていると、よく「うるさーい!」と思うのは、この女性たちの怒りのすさまじさのせいだ。

『さようなら私の愛』では、ヒロインのヨンジュ(キム・ヒソン扮)は、友だちが金持ちの男にもてあそばれたと知るや、その男の会社にまで乗り込んで、男の机の書類をなぎ倒し、さんざん男を罵倒して帰ってゆく。まさに激情的である。

また『ライバル』というゴルフ界を舞台にした2人の異母姉妹の対決を描くドラマでは、ヒロインと、ライバルのチェヨン(キム・ミンジョン扮)がひとりの男を挟んで三角関係になっていたが、結婚を迫るチェヨンに対して、男はどうしてもできないと拒絶する。

この場面はレストランで話をしていたが、男が

「もっとお前が嫌いになる前に終わらせたいんだ」

といって席を立とうとすると、チェヨンはグラスを思いっきり床に叩きつけて、

「捨てないっていって。死んでやる。捨てられたら死んでやるからーっ」

と人目もはばからず絶叫するように泣き叫ぶのだ。

また、ヒステリックに怒鳴り散らさないまでも、「ヤー!」という、日本語だと「ちょっと!」「おい!」というようなニュアンスの言葉をよく口にする。

それと気に入らないことがあると「チイッ」とか、「ハッ」という感じで、思いっきり舌打ちのようなこともする。

男が初対面から女性に失礼な態度で接したときなどはまずこの表情で返される。私は幸い目の前でされたことはないが、韓国女性は実生活でもよくやるらしい。

※参照作品

『さようなら私の愛』

1999年 MBC

PD=イ・チャンスン 脚本=チョ・ミョンジュ 出演=アン・ジェウク、キム・ヒソン、チョン・ジュノ

金持ちの息子の腰ぎんちゃくのように生きている男と工場で働いている女。お互いに身分を偽って恋を仕掛けるが、嘘がばれて、反発しながらも次第に本当の恋になってゆく。しかし、女が白血病に冒されてしまうという切ない愛の物語。

『ライバル』

2002年 SBS

PD=イ・チャンハン 脚本=ジン・スワン 出演=ソ・ユジン、キム・ミンジョン、キム・ジェウォン、キム・ジュヒョク

ゴルフが得意な明るい娘ダインは実はアパレルメーカーの社長の隠し子だということがわかり、父親のもとに引き取られるが、そこには両親の愛を一身に受けたゴルファーの妹チェヨンがいた。ひとりの男性を巡って、愛にゴルフにライバルとして対決していく2人の少女の物語。ヒロインに片思いしているウヒョクを演じるキム・ジェヨンの男心にホロリとさせられる。