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パク・ヨンハ  涙のプリンス

2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版より) ※記事の転載はご遠慮ください

‘涙のプリンス’

これは、パク・ヨンハが二〇〇四年六月二〇日、横浜でデビューイベントを大成功に終えた翌朝のスポーツ新聞に踊った見出しである。
イベントの四日前に来日したのだが、ちょうど映画『ブラザーフッド』のプロモーションのためのチャン・ドンゴン、ウォンビンのご一行と飛行機が重なっていた。なので、飛行機の中でも誰が先に出るかを事務所同士で話し合ったらしい。その結果、初の公式来日でまだ日本とはなじみが少ないパク・ヨンハチームが一番初めに出ることになったという。
到着後すぐに記者会見が行われたのだが、スーツ姿のパク・ヨンハは初々しい新入社員のような雰囲気だった。
「空港ではファンの熱気に当てられて頭が真っ白になってしまって、指示されていたのと反対の方向に行ってしまいました」
とか、
「もっと余裕を持ってファンの皆さんに挨拶できればよかったのにスタスタ歩いてきてしまって申し訳なかったです」
など、まったく気取らない、素の感覚の受け答え内容で、ますますいい人感がアップ。非常にほほえましい会見だった。


しかし、翌日のワイドショーでは、「韓流四天王のうちの二人が来日!」と大々的に『ブラザーフッド』チームのことばかりが大きく取り上げられ、パク・ヨンハのことはほんの少しだけ。
かわいそうだなあと思ったのだが、彼はNHKの「スタジオパークからこんにちは」などのトーク番組に出演しては、ドラマでの役柄と実物のかわいさとのギャップを視聴者に印象づけ、急激に注目度が高まってきた。
日本での所属レーベルのポニーキャニオンにも問い合わせの電話が急に増えたそうで、二〇日に横浜ランドマークで予定されているトーク&ミニライブに向けて、なんだかすごいことになりそうだ、というヒートアップ感が肌で感じられたという。
そしてイベント当日。なんと五〇〇〇人という、会場始まって以来の観客が集結した。
気温も高く熱気もムンムンで、下手すると事故が起きそうなほどの興奮状態に包まれた客席。すごいことになった。
一方パク・ヨンハは朝からものすごく緊張の面持ち。耳からはイヤホンを片時もはずさずに、MDを聞きながら歌を口ずさんでいたし、前日も深夜までボイストレーナーと練習をしていたそうだ。
そして本番が始まったが、なんと、最後の歌の途中で感極まった彼がウッと声を詰まらせ泣いてしまったではないか。
これには思わず私ももらい泣き。
そうだよねえ、これだけ多くの人が集まってくれるとは思っていなかったもんね。
連日の苦労が報われて周りのスタッフも目を潤ませた瞬間だった。
今にして思えば、この涙が日本人の心を奪った。
新聞もテレビも「おいしい!」と思っただろう、翌日の見出しに「涙のプリンス」と銘打ちこの場面ばかりが大きく取り上げられたわけだ。

打ち上げの席では、彼がスタッフに「今回の成功は皆さんのおかげです。本当にどうもありがとうございました」と挨拶し、スタッフ一人一人に自らお酌して回った。
そして日本人スタッフがヨンハのマネージャーにお疲れ様でした、とお酌しようとしたとき、座ったままで受けようとしていたマネージャーに向かって、「立って受けなさい」と声をかけたのもパク・ヨンハだった。
しっかりしているというか、きちんとしているというか、スターである前に人間として好青年なのであった。

それから四年。二〇〇八年の彼は、歌手として着実に実績を積み上げ、四年連続して日本ゴールドディスク大賞を受賞するほどの歌手として定着している。
そして俳優としても、『オンエアー』(08年)で主演の一人を演じ、韓国でも再び脚光を浴び始めた。
日本で『オンエアー』の試写会イベントに出席した彼を見たとき、念願だったドラマの仕事でファンの前にいるという事実に興奮しながらも、しっかりとファンとのやり取りを楽しめる堂々たる振る舞いぶりだった。
涙の代わりに、いまでは大いなる自信があふれている。

 

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