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ペ・ヨンジュン  有言実行の人

2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版より) ※記事の転載はご遠慮ください

記者会見に出席してドキドキするなんていつ以来だろう。
初めてかもしれない。
普段だと会見は席に座って話が進行されるのを聞いていればいい。質問したければ手を挙げるし、しなくても他の人が質問するだろうから静かなる傍観者でいてもかまわない。だが、このときは違った。
それは、NHKで行われた『太王四神記』(07年)の会見でのこと。
このドラマ、特にタムドクの人物像にほれ込み、それを演じたペ・ヨンジュンのやわらかさと激しさとカリスマ性が本当に見事にマッチしていてすごくいいなあと気持ちが盛り上がっていたので、どうしてもペ・ヨンジュンに質問したかったのだ。
それは、私がドラマを見て一番感じたこと。
望むと望まざるとに関わらず、選ばれし者の苦悩と孤独をひしひしと感じるドラマだっただけに、国を背負った韓流スターとして選ばれたペ・ヨンジュンの姿とすごく重なるものを感じ、「本人も共感するところがあったのではないか、どう思って演じていたのか」ということだった。
NHK始まって以来の取材者が詰めかけた記者会見だけに、熱気も尋常ならざるものがあり、そんな中で質問者として、当ててもらわねばならない。
相手はペ・ヨンジュンだと思えばこそ下手な質問はできないと、幾度も心の中で簡潔に質問が言えるように唱えてみる。
その思いが通じたのか、頃よく三番目くらいに当たり、無事に質問できたのだが、声が震えているのが自分でもわかった。
司会者としてステージでインタビューするときは違う精神状態になっているので、緊張はすれどもあがったりしないのだが、ステージを降り、司会という役割を脱ぐと、とたんに弱気になる。
ましてやたくさんのマスコミの中で質問するなどという状況にはやはりあがってしまったようだ。
「やっぱり好きなんだな」と、この胸のドキドキ具合で自覚したのだった。
ところで、その答えだが、謙虚なペ・ヨンジュンは、
「あんなに偉大な人物との共通点はないけれど、男性として何かをやりとげるときの責任感は共通かもしれません。タムドクのように私もいい仲間に囲まれているので孤独は感じていません」
というものだった。でもその後、同席していたムン・ソリとイ・ジアが、
「彼は常に孤独と戦っているようなところがあって、逆にそれが彼を強くする一つの要因になっていると思う」
「人より一段高い位置から、いろいろなことに気を遣わなければならない立場にいる方は大変だと感じた」
と発言し、彼がいかに大変で不自由そうだったかということを語ってくれたので、共演者から見た彼の置かれている立場というものがよく伝わってきた。
出会いからを振り返ってみると、ペ・ヨンジュンに対する印象は、「有言実行の意志の強い人」だ。


『冬のソナタ』(02年)がNHK‐BSで放送され、まだ本格的ではなかったとはいえ、すでに大きなムーブメントが起き始めていたころ。来日を希望する日本側のインタビューに彼は、「日本の皆さんが自分のことを愛してくれるので、私も日本のことをきちんと勉強してから行きたいです」と答えていた。
そんなに堅苦しいことを言わなくても、ただ来てくれるだけでみんなうれしいのに……と思ったのだが、その翌年の四月に初来日を果たしたとき、日本に対する造詣の深さをうかがわせる発言が随所にあり、彼は本当にしっかりと日本について勉強して来たんだなあと感じた。取材時にも言葉のふしぶしに日本語が飛び出すし、カタカナも読めていた。
読者プレゼント用のサインに添える言葉も、ひらがなで「おしあわせに」とあった。これはちょいちょいと勉強したのでは身につかないレベルだと思った。
口に出したことはきっちり実行する。まさに‘有言実行’の姿を見たのである。
また写真集のために身体を作ると決めたら倒れそうになるまでトコトンやり抜く。なにもそこまでやらなくても……と傍観者は思うが、本人的に自分が設定したレベルに達しないと納得できないのだろう。
演技も納得いくまで「もう一度」と、自ら申し出る。そこに妥協はない。
彼は‘微笑みの貴公子’と呼ばれるだけあって、笑顔ばかりがクローズアップされがちだが、その下には強靭な意志と、韓流を背負って立つという責任感があふれている。
『太王四神記』でも、ただおもしろいドラマというだけでも十分いけたであろうところを、キム・ジョンハク監督はペ・ヨンジュンとの会話で、なぜタムドクという英雄を描こうと思ったか、その精神を描くという初心に気づかされ脚本を練り直す決断をしたという。
安易なドラマ作りをよしとしなかったペ・ヨンジュン。こういうところにも彼への信頼感が生まれる。


私が印象に強く残っているのは、『四月の雪』(05年)の制作発表がサムチョクで行われたときの記者会見だ。
ここで、彼は竹島(独島)問題についての発言を求められた。
司会をしていた映画会社の人が、その質問は映画に関係ないので……と、一度は断った。だが、ペ・ヨンジュンはマイクを手に持ったのだ。
無視すればできただろうに、そこをあえて彼はマイクを握った。
「個人的に思っていることはありますが、今日はそういう場でないので、また機会をもうけて」
と答えた。このときも、私は「あとで」なんて面倒なことを律儀に言わなくてもいいのにと思った。だが、後日、彼は約束を守って自分のホームページで答えていた。私はそれを見て、やっぱりこの人は有言実行の人だなとつくづくと思った。そして、この逃げないところに尊敬すら感じた。
またそのときのホームページのコメントがよかった。
「私に役目があるとしたら、国家や領土の線を引く言葉より、アジアの家族たちの心と心の線をつなぐこと……私が今まで受けてきた大きな愛を、もっと大きな愛で返すため……」。
ぺ・ヨンジュンが言うと、本当にそうだなと説得力が感じられる。
一時期あまりに特別視されすぎて、真面目なだけに、自分の使命をまっとうしようとどんどんストイックになっていって、窮屈そうだなと感じられるときもあった。
それが、『太王四神記』のプロモーションで来日したときは、共演者や監督たちと一緒だったせいかもしれないが、とても肩から力が抜けているような印象を受け、いろんなことを楽しんでいるように見えた。
国と韓流をしょって立つ立場になってからもう長いので、その立場にも慣れ、うまくつき合う方法を見つけたのかもしれない。
願わくば、もう必要以上の重責を負わず、早くそこから解き放たれて、失敗してもいい くらいのスタンスでたくさんの作品に取り組んで、いろんな姿を見せてほしいと思う。

 

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