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韓国ドラマの二大脚本家

※2003年7月発刊「韓国はドラマチック」(東洋経済新報社)より。 記事の転載はご遠慮ください。

心理描写が巧みなメロドラマの巨匠

 韓国ドラマ界で人気を誇る2大脚本家がいる。一人はキム・スヒョン。この人にはいくつもの枕詞があって、「韓国ドラマ界の大母」「視聴率製造器」「ドラマ視聴率保証手形」等々、その人気のすごさがわかるというものだ。

1943年生まれの56歳。69年にMBCの創社記念ドラマ公募で当選し、文壇にデビューした大御所である。

代表作は先に挙げた韓国ドラマ史上第2位の視聴率を獲得した『愛が何だ』や、99年の話題作『青春の罠』(SBS)など。

彼女の強みは心理描写の巧みさにあるという。家族を扱うにしても恋人を扱うにしても心理描写がものすごく細やかで、そこに登場する人物は消極的な人はおらず、みんなすごく挑戦的で、ドラマチックな人物像をよく作り上げる人だという。

『愛が何だ』のような、家族を舞台に独特なキャラクターを生き生きと描きコミカルに展開していく話も書くが、何といっても彼女のお得意は三角関係を通して男女間の愛憎を深くえぐり出すメロドラマである。

キム・スヒョンについて書かれている批評をいくつか見ると彼女のメロドラマにはあるパターンがあるという。

まず、ほとんどの主人公の女性には父母がいない。家庭環境は不幸である。そしてヒロインには理想的な男性が現れるがそこには必ず障害がある。例えば、相手に妻や恋人がいたり、またはヒロイン自身の境遇ゆえにつきあいを受け容れるのが道徳的に難しい状態だったりする。こういうドラマチックな設定のため、ハッピーエンドで終わるのはまれらしい。

また彼女は「言葉の魔術師」との異名をとるほどセリフのうまさには定評がある。韓国人のドラマ好きに言わせると、スタッカートのように短く区切って速射砲のようにババーッと一気にたくさんしゃべらせるのが特徴で、こうしたセリフ回しを聞けば、「あっ、この脚本はキム・スヒョンだ」とわかるという。

『青春の罠』の中のワンシーンを例に取ってみよう。シム・ウナ演じるヒロインが、子供まで成した仲の男に捨てられて、後日、相手をなじるシーンでのセリフだ。

「どこまでやる気?いつまでやる気?」「私そんなにばかみたい?何も言わずに、ばかみたいに、ずっとやられっぱなしで、それが楽しい?」「何?私のため?そういう嘘もつけるようになったわけ?私が騙される?じゃあ騙されてあげようか?」とまあこんな感じで、日本語に言い換えてしまうと伝わりにくいかもしれないが、一言でわかる言葉をぽんぽんと並べて使ったり、必要最小限の言葉の中に感情表現がうまく出ている。それでいて説明セリフではないのだ。

こうしたドラマチックな洗練されたセリフ遣いはメロドラマにうってつけと言えよう。

 

自分の視点を持った1990年代最高の作家

もう一人がソン・ジナ。1956年生まれで86年にMBCのドラマでデビュー。徹底した資料準備と博学な知識、そして繊細な感覚を描き出せる90年代最高の作家との評価を受けている。


『黎明の瞳』『砂時計』などの現代史を背景にした社会派ものから、様々な愛の形を描いたテレビ映画『ラブストーリー』(SBS)、韓国科学技術院を舞台にしたシチュエーションドラマ『カイスト』(SBS)と、取り上げる題材も骨太なものから身近なものまで幅広い。連続劇の作家と言うよりは短いものを多く作っていて、企画力に長けている。

彼女は作家として社会をどう見ているかという自分の視点を持った人で、変化している現在の社会像や若い人達が今どういうものを求めているのかをキャッチするのがうまいのだという。

『ラブストーリー』は、愛をテーマに、2時間構成で1回1回話が終わる新しい形式の映画のようなドラマシリーズ。毎回登場人物が異なり、様々な愛の断面が表現される内容で、以前日本でも野島伸司の『世紀末の詩』があったが、あんな感じで「愛とは?」が語られる。だが、ソン・ジナのラブストーリーは野島伸司ほど究極の愛を追求しているわけではなく、あくまでも身近な愛の形が描かれているのだ。

韓国のドラマファンは、ソン・ジナの書く物語は、落ちの付け方や結末がありきたりでなくて好きだという。

 

関連記事

・キム・スヒョン作品:『青春の罠』 『千日の約束

 

・ソン・ジナ作品:『大望~テマン~』 『シンイ―信義―』

ヒーラー~最高の恋人~