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キム・レウォン  バラ一輪を贈られて……

※2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版)より ※転載はご遠慮ください

インタビューを円滑に進めるため、相手が喜びそうなお土産を持っていくことはあるだろうが、スターから逆に何かをもらうということはめったにない。
しかも、それが女心をくすぐる赤いバラ一輪というのは、初めてのことだった。
そのプレゼントの主はキム・レウォン。
ホテルに設定されたインタビュールームで待っていると、部屋の外からスタッフ同士、無線で連絡している声が聞こえて、「女性の記者は一名です」と言っている。
いったいなんだろうと思っていると、キム・レウォン本人が部屋に入ってくるやいなや、「遅れてすみません、どうぞ」と日本語で言いながら、一輪の赤いバラを差し出すではないか。
「おお~」、だから女性の人数を確認したのね、と合点がいき、と同時に、「おぬし、やるなあ~!」と感動した。

このときは竹島問題など敏感な政治問題が浮上していたときだったせいか、いつになく屈強なボディーガードがついていた。聞けば韓国で、スーパースターのソテジをガードしたこともある人だという。不測の事態に備えてガードにも超一流の布陣を敷いて、万全の体制で日本入りをしたのだそう。
そんなこともあり、事前に質問を提出させられていたのだが、いざインタビューが始まると、スタッフの一人から「質問表の順番通りじゃない」とチェックが入った。
それでもキム・レウォン本人が「大丈夫、かまわないよ」と取りなし、フランクなムードで話が進んだ。

この人は黙っていると、一見、暗いかなと思えるのだが、笑顔がこぼれると、それはそれはかわいい顔になる。
「実年齢よりも大人びて見えますよね」と言うと、「僕はもともと、かわいいって言われるんだけど……」と冗談めかし、その答えにはそばで聞いていたマネージャーが大いに受けて爆笑していた。

また通訳が訳している間、覚えた日本語や、英語を繰り返しつぶやいてみたり、そばのスタッフにちょっかいを出したり、茶目っ気がある。
内向的と言われているが、とても若者らしさを感じさせる青年だ。
そしてざっくばらんに、飾ることなく話をしてくれて、特に、
「自分の父親が家庭的な人ではなかったから、自分は、守ることを知っている温かい男性になって、いつも女性を優先して大事にしてあげられるようになりたい」
と断言するのがカッコよかった。
「まるで韓国ドラマの主人公みたいですね」と言うと、「ドラマより僕のほうが素敵……」と言いかけて、それを訳そうとする通訳の口をあわててふさいで「なんでもないです!」と照れる様子がまたかわいかった。
それから数年後、かわいらしい青年だったキム・レウォンは、すっかり大人の落ち着き
と成熟感がアップして素敵な男性になっていた。

この間『ラブストーリー・イン・ハーバード』(04年)『君はどの星から来たの?』(06年)『ミスター・ソクラテス』(05年)『ひまわり』(06年)といった作品に出演していた。特に映画の『ひまわり』では、刑務所帰りの寂しい男が、愛する人を亡くし、復讐のために自分を捨てるというハードな役どころを演じた。これほど深くて濃い演技体験は初めてで、役に入り込みすぎて撮影後もなかなか抜け出せずに苦労したそうだ。
ぐっと深みを増したキム・レウォンを前に、作品が俳優の人間性をも育てていくのだなと感じたのだった。

 

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