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韓国映画界で活躍する兄弟

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2007年4月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

映画界で有名な兄弟といえば、アメリカでは『ファーゴ』などのコーエン兄弟や『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟、また香港では『レイン』『the EYE』のパン兄弟がいる。そこで、今回は韓国で大活躍中の兄弟リュ・スンワン監督と俳優リュ・スンボムの‘リュ・ブラザーズ’をご紹介しよう。

日本でも『クライング・フィスト』や『ARAHANアラハン』などの作品が公開されているリュ・スンワン監督は1973年生まれ。幼い頃からジャッキー・チェンの映画が好きだったという彼が注目を集めたのは、2000年に長編デビュー作『ダイ・バッド~死ぬか、もしくは悪になるか』を発表してからだ。この、思うままにならないアウトサイダーたちの姿を描いたハードボイルド・アクションは、韓国では単館上映ながらもカルト的な人気を博し、批評家からも高い評価を得、上映館数が増やされるほどの成功を呼んだ。

両親を亡くし、祖母に育てられたというリュ監督は、高校卒業後、フィルム・ワークショップなどで映画を学びながら、様々な肉体労働をして生計を立てていたという。それでも映画を撮る夢をあきらめず、この作品も、最初から長編を撮るには製作費が足りないため、まず自主制作で短編を作り、それらを4本つなげて最終的にひとつの作品にしようと考えたそうだ。96年に1本目を。97年に2本目。99年に3本目。合い間合い間に工事現場などで働きながら資金を作り、最終的に2000年に4本目を完成させたという足掛け5年がかり。出演者全員がノーギャラで、苦労を重ねて超低予算で作り上げた。

各作品の登場人物は共通していて、ひとつひとつのパートで完結しているが、話にはきちんと連続性がある。この作品の登場は、こんな風にしても秀作映画は撮れるんだということを体現して見せたということで、韓国映画界の‘事件’となった。まさにどんな状況にもめげなかった監督の根気と熱意と工夫が成功を導いたといえよう。

そしてこの映画でデビューしたのが、監督の実の弟リュ・スンボムだった。スンボムは1980年生まれ。高校時代、音楽やダンスに夢中で、韓国最高のDJになることを夢見て高校を中退してしまったというほどの自由人だった。そんな彼に自分の映画に出演してみないかと誘ったのが兄だった。スンボムは、映画の中でヤクザに憧れていく危うい高校生を演じ、韓国のアカデミー賞ともいわれる大鐘賞で新人男優賞を受賞した。その後は、DJになる夢を方向転換し、役者として、コミカルな役や、不良っぽい役で引っ張りだこに。2001年には、ドラマ『華麗なる時代』で、優等生の兄と同じ女性を愛してしまう破天荒な弟の役を演じてお茶の間にお目見えし、大衆的な人気も得た。

同じデビュー作から7年。いまや兄は韓国のタランティーノと呼ばれ、ヒット作を次々と手がける‘アクション映画の大家’のスター監督になった。弟は兄のペルソナとして兄の作品のほとんどに出演し、その独特な個性と圧倒的な存在感で、いまや韓国映画界に無くてはならない顔となっている。これほど揃って成功している兄弟だけに、テレビ番組や映画雑誌でも時々2人のインタビューが出るが、お互いがお互いを尊敬し、誇りに思っている姿が見ていて実に気持ちがいいのである。

延長戦コラム

リュ・スンワン監督は監督だけではなく、時々役者としても出演をする。デビュー作でも主役の刑事を演じていた。「役者志望だったけど、誰も僕を使ってくれないので自分でやりました」と言っていたが、なかなかのイケメンなので、自分の映画以外でも『オアシス』で、主演のソル・ギョングの弟の役で登場している。そんな彼が、制作・監督・脚本・主演の4役をこなした新作『相棒』が今月日本で公開される。幼なじみの訃報を聞いた刑事が10年ぶりに故郷を訪れてみると、そこには土地開発を巡って地元ヤクザの悪の手が伸びており、友と共に事件の解明に迫っていく……という物語なのだが、「ごまかしじゃない本物のアクション映画を撮りたかった」というだけに、これでもかーというくらいバリバリのリアルアクションが展開される。リュ監督はアクション好きだけあって、幼い頃から武道は習い続けているそうで、「自分で演じるから‘役者にこんなことさせたら悪いなあ’などと気にする必要もなく、より過激に作ることが出来た」そうだ。身体を張ったアクションのすごさに留まらず、スタイリッシュでセンスのいい編集も斬新だ。リュ・スンワン監督の渾身のアクション・娯楽作品をぜひ劇場で堪能して!