コラム・取材レポ

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イ・ワン、キム・ミンジュンら新人俳優を育てるドラマ監督たちの育成法

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2006年10月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

『美しき日々』『天国の階段』などの監督でおなじみの、韓国のヒットメーカー、イ・ジャンス監督が今年日本オールロケで『天国の樹』という作品を撮った。主演はイ・ワン。『天国の階段』で、最初の3話、子役として登場し、鮮烈な印象を残した若手スターだ。イ・ジャンス監督はイ・ワンを見い出してデビューさせた人間として彼を育てているのだが、監督は新人の子に指導するとき、次のようなことを言うという。ひとつは、「役をうまく消化するというよりも、日常生活を磨いて、それが役に反映されるようにしなさい」ということ。たとえば、朝起きて夜寝るまで、カメラが自分のことを写していると意識しながら生活し、日頃の癖や改善したほうがいい部分を直していくことが大切だという。ふたつ目は、自分が好きな俳優、目指す俳優の作品を見て、カメラを前に置いて自分でその役を演じてみること。それを見比べて、どう違うのか、練習をすることが大事だそうだ。

これまで数々の若手俳優をスターにしてきた監督に言わせれば、たいていの新人は現場に来ると、普段自分がテレビで見ていた素敵な俳優たちが目の前にいるし、カメラもあるしで、仕事に来たのか、遊びに来たのか区別できない浮ついた状態になってしまうという。そこで監督は、「でも君たちはここに楽しみにきたわけじゃないだろ。現場で得られた結果は永遠に残るもの。君が有名になったとき、昔にさかのぼって、こういう作品でこういう生き方をしてきたと恥ずかしくないものを積み重ねていく事が大切だ」と語って聞かせるのだという。

イ・ジャンス監督は『天国の樹』の撮影で日本の俳優やスタッフとも仕事をしたので日韓の違いも聞いてみた。すると、韓国では俳優もスタッフの一人というような‘ひとつのチーム’という感じで仕事をするけれど、日本では俳優がスタッフと隔離されている気がしてチームという感じがしないと言っていた。そして日本のスタッフがあまりにも俳優たちに至れり尽くせりの配慮をするので、「トップスターというわけでもないのに、若いうちからあんなに気を遣われすぎていたらよくないんじゃないか」とポロリとこぼしていた。

もうひとり、先日『チェオクの剣』の撮影秘話を本にするために、イ・ジェギュ監督にも話を聞いた。彼もこのドラマでキム・ミンジュンというモデル出身の俳優を誕生させた。演技はまだ慣れていなかったけれど、6ヶ月一緒に訓練してみて目標値に達すればキャスティングするし、付いてこられなかったらキャスティングできない場合もあると話をし、それでもいいというので1週間に1、2回会って2人でトレーニングすることになったという。これまでどのように生きてきたのかという自分についての話から始まり、台本のリーディングや役の解釈を話し合ったりしたそうだ。それでも初回に出てくる長いセリフはなんんと500回もやり直したとか。

それだけ要求するほうもすごいが、へこたれずに付いていくほうもすごい。

しかもこのドラマの撮影は積雪のすごい雪山や崩れるかもしれない未開発の洞窟での撮影など、非常に過酷で、命の危険にもさらされることがあったという。まさに生死を共にした8ヶ月間だったということで、その分スタッフたちの絆が強まり、素晴しい作品が生まれたわけだ。

こういう話を聞くと、俳優たちもスタッフの一員となり、過酷な状況でも果敢に撮影に臨むことが演技に凄みを与えているように思えるのである。

延長戦コラム

公開12日で動員700万人。今年最大のヒットになるか!?『グエムル―漢江の怪物―』

今年上半期、『王の男』が1300万人の観客を動員したと思ったら、下半期、さっそくその記録を塗り替えそうな勢いで観客動員を延ばしている作品が登場した。『グエムル-漢江の怪物-』だ。韓国市民の憩いの場である漢江に、ある日突然怪物が現れ、子供をさらわれた家族が必死で取り戻そうと怪獣と死闘を繰り広げる。表向きは怪獣映画だが、そこに、社会矛盾、批判が暗喩として込められており、「おおーっ」と唸ってしまうようなすごい作品だ。

俳優たちは、下水溝などでの撮影があるので、細菌に侵されないよう破傷風予防の注射をしてから撮影に入ったという。夏は下水溝の臭いがきつく、またとことん走る場面もあったりして、俳優たちはかなり苦労させられた様子。10回、20回と何度もテイクを重ねるのでくたくたになるが、ポン・ジュノ監督はいつも笑顔で「もう一度撮り直しましょう」というので怒れないのだとか。

だが、監督に苦労させられた甲斐あって、7月末に封切られてから公開12日目にしてすでに観客動員700万人を突破するという動員数の最短記録を更新している。日本では9月2日公開なのでそのすごさをぜひ確かめてみてください。