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「クロスオーバーテノール」で活躍 イム・テギョンインタビュー

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2006年8月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

『冬のソナタ』のミュージカルが、今年初めの札幌公演に引き続き、この秋東京と大阪で再公演を行う。主役はダブルキャストだが、そのうちの一人が、札幌公演でも主役を務めたイム・テギョン。彼はミュージカル俳優という以前に、音楽ジャンルを飛び越える、クロスオーバーテノール歌手として有名なスター。経歴が少々変わっているので、ここでご紹介しよう。

「3歳ごろから子供たちの歌の大会に出ていつも優勝していたので、ピアノの先生をしていたおばから、せっかくだから正式に歌の勉強してみたらどうかとすすめられて本格的に先生について声楽をはじめることになりました。10歳頃です。まだ子供で無理すると喉によくないのでそれに気をつけながら、発声や呼吸法やイタリア歌曲も歌ったりして、内容的には音楽大学と差がなかったですよ」

中学も芸術学校で声楽を専攻した。しかし、その後高校は親元を離れてスイスの学校へ。ここは芸術系の学校ではなかったが、自分の好きな科目だけを選択することができる学校だったそうで、語学や、科学、数学などを学んでいたのだという。卒業後は今度はアメリカの大学の生産工学科へ進学した。声楽一筋というよりも、自分の興味の赴くままにさまざまなことを学んできた人なのである。その間もずっと声楽は続けていていて、ボストン大学音楽大学院の声楽科にも通うことに。ここで初めて歌手になろうと思ったそうだ。

「大学院の時、小児ガンや白血病の子供の面倒をみるボランティア活動をしてたんです。そのうち、この子たちのために歌ってあげたいなと思うようになって。でも無名の私よりも有名になって歌手としてコンサートをやったほうが喜ばれるだろうし、感動の伝わり方が違うと思ったんです。そこで、ちゃんとした歌手になろうと思いたって、韓国に戻って歌手を目指しました」

韓国ではどのような努力を?

「韓国に帰国後、いろんな作曲家と自然にあう機会が多くなって、そういう方たちと一緒にコンサートをしていました。そのうち、2002年日韓ワールドカップの前夜祭でチョ・スミさんと歌ったのが正式なデビューとなったんです」

クラシックからはじめたものの、現在はクロスオーバーテナーとして活躍している。

「声楽は学問みたいな感じで、いろんな表現の制約があって、発声にすごくこだわります。でも私はそれよりも曲自体の感情を表現したかったんです。バラードだの、R&Bだの、何でそんな風にジャンルを分けるのか、壁をなくしたいんです。音楽に大事なのは、聞いて楽しめてその感情を伝えるということ。それにこだわりたいというところから私はクロスオーバーをやっています」

そして昨年からミュージカルに挑戦。

「私が歌を歌うと目標を決めたとき、その究極的な夢が公演だったんです。曲が持っている感性や歌詞に含まれている物語を音だけで伝えるより、そこに演技やビジュアルが加わった時、観客は曲が表現しようとする感情を理解し易いと思います。そういう意味では、現在存在する公演の中で、ミュージカルが一番私の理想に近かったんです。でも演技を実際にやってみると、知れば知るほど、表現にもひとつのルールがあると最近すごく勉強になっています」

延長戦コラム

ベストコンディションを維持するためには我慢と努力が必要。高いプロ意識を持つイム・テギョン

「プロである以上、音楽を楽しみながらも完璧さを追求しなければならないという責任がある」と語るイム・テギョンは非常にプロ意識の高い人。そこで日頃、喉のためにどんなことに気をつけているのか聞いてみた。【大声を出すなど喉に負担がかかる話し方はしない】【寝る前に食べると胃酸が食道を逆流して声帯を傷つけるので寝る前は食べない。逆におなかがすきすぎでも逆流は同じく起きるので、食生活のバランスを取ることに細かく気をつける】ということを心がけているのだそう。

舞台の上で歌う時が一番つらいときでもあって一番幸せなときでもあるという。

「ベストコンディションを維持するためには我慢と努力が必要です。どんなに努力しても毎回の公演で最高を維持するのは難しいのですが、あきらめずに努力するのが歌い手としての基本姿勢だと自分に言い聞かせています。」

そんな彼の姿をぜひ舞台で堪能してほしい。『春のワルツ』の撮影も終わり、今回はユン・ソクホ監督が前回の札幌公演のものに直接更に手を加えて作り上げる舞台になるそうだ。