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韓国の女性アイドル歌手事情とは…

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年6月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

日本で言う女性アイドル歌手グループというと、ピンクレディー、キャンディーズに代表されるように、70年代、80年代の昔から花盛りだったが、韓国は、アイドルの歴史が浅いので、ガールズグループで成功した最初は97年にデビューしたS.E.Sということになるだろう。女の子3人組のS.E.Sは、最初から日本、アジア進出を視野に入れて結成されたグループで、グアム育ちで英語が堪能なユジン、日本生まれで日本語ができるシュー、韓国生まれ韓国育ちのパダというコンビネーションだった。最初の志通り、日本にも進出し、活動していたのでご存知の方も多いと思うが、清純で、ほのかにかわいらしさの漂う雰囲気を持ちながら、大人っぽいきっちりとしたハーモニーを聞かせてくれるグループだった。

その成功に続き、4人組のFIN.K.Lがデビューし、既にデビューしていた5人組のBaby V.O.Xも巻き返しを図ってブレイクし、歌謡界の中で女性アイドルグループの台頭が目立つようになった。どちらかというと、Baby V.O.Xはパワフルなダンスが中心のグループで、幾度かのメンバー入れ替えを経て現在の5人に定着した。そんな経緯もあって‘韓国版モーニング娘。’と呼ばれることもある。

FIN.K.Lはどちらかというと聞かせる歌がメインのグループという感じを受けるが、いずれも日本のように‘元気さ’や‘健康美’が売りの「アイドルアイドル」した感じは薄い気がする。韓国ももちろんビジュアル重視。ほとんどの女性アイドルが、BoAのように、シャンプーの宣伝に出てきそうなサラサラの長い髪をなびかせ、お人形さんのような整った可愛い顔をしている。でもこの‘可愛い’は、日本における庶民的な可愛い子というよりは「美少女」の可愛さだ。そして踊りもモーニング娘。のような、お祭りソングのような、面白い、お茶目系ではなく、正統派というか、体の線を見せるような女性らしいセクシーさを出した踊りが主流である。

そして韓国では当然歌手であるからには歌のうまさも要求されるので、グループの中でも一番歌唱力のある者がメインボーカルを張り、ビジュアルに見劣りしない歌を聞かせる。だから位置づけとしてアイドルではありながらも、大人のアーティストという印象が強いのだ。でもそうは言ってもメンバーは10代から20代前半なので、ステージを降りるととたんに年齢相応のしゃべりになる。そのギャップが面白い。言ってみれば、モーニング娘。タイプというよりは、SpeedやMAX路線なのだ。

しばらくS.E.S 、FIN.K.L、 Baby V.O.Xの3組が人気を分けていたが、S.E.Sや、男性グループY2Kなどの成功もあって、アイドルグループのメンバーの中に日本人、もしくは在日韓国人を入れるというのもここ数年はよく見られる傾向だ。中には韓国より日本で先にデビューしたTO-YAのようなグループもあった。TO-YAはメンバーの一人ウンジュが、親の仕事の都合で日本で思春期を過ごした日本語堪能な女の子だった。彼女たちはまず日本で言葉や踊りのレッスンを積んで日本デビューを飾り、その後韓国に戻って活動している。2001年末にデビューしたSugarも在日韓国人のアユミがメインボーカルで活躍している。歌手の世界も韓国語ができさえすれば国境の垣根は無くなってきている。

延長線コラム

ちょっと前の韓国では、グループであるからには常にグループで活動し、日本のようにメンバーが個別活動をすることは無かった。以前インタビューした韓国のプロデューサーから聞いた話では、チームの中で一人だけ活動すると、そのメンバーに経済的な目的があるんじゃないかとか、韓国の国民情緒的によく受け取られないという事情があったらしい。しかし、最近はそれにも変化が出てきた。S.E.SのシューはV6の井ノ原快彦との共演で舞台『東亜悲恋』に出演しているし、ユジンも去年韓国のテレビドラマで女優デビューした。しかし、このようにメンバーそれぞれの方向性が違ってきたことで、グループは事務所との契約満了と共に解散されることになった。FIN.K.L やBaby V.O.Xも、メンバーがそれぞれ、ソロアルバム活動、ドラマ出演、モデル、MCにDJなどの個別活動が目立ってきた。Sugarのアユミも音楽番組のVJ(ビデオジョッキー)をやったりと、その活動は歌手に限定されない。歌手は歌手、俳優は俳優というように世界の棲み分けがわりと厳格だった韓国芸能界も、どんどんマルチエンターティナー化が進んできているのだ。