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韓国俳優にとっての映画とドラマの位置づけは…

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年2月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

韓国では日本と違って、テレビドラマ(以下ドラマ)よりも映画のほうが断然ステイタスが高い。アメリカと同じだと考えればわかりやすいだろう。それゆえ俳優たちは、順番として、ドラマでそこそこ人気を得るようになって、映画に移行するパターンが多い。ほかには、ドラマを経ずに、演劇界から映画へ抜擢される人もいるが、これは数が少ない珍しいケースだ。『JSA』や『反則王』のソン・ガンホがこれに当たる。

韓国では、テレビでいくら人気があってもタレント扱いだが、主演映画がヒットすれば文化人的な位置づけになる。大衆から尊敬を集めるようになるのだ。しかしどんなにテレビで人気者でも、映画で成功するのは本当に難しいと言われている。だからこそ、俳優になったからには映画に出て、真の俳優として評価を得たいというのが本音なのだ。そして一度映画で認められたら、映画出演が相次ぎ、なかなかドラマには戻ってこない。現在テレビ朝日系で『イヴのすべて』に出演しているチャン・ドンゴンはその代表的な存在だ。『イヴのすべて』を自分のドラマ出演作の最後と位置づけ、以降もっぱら映画にだけ出演し続けている。しかも『友へ チング』が、韓国で観客動員歴代1位という輝かしい特大ヒットを記録し、ただのハンサムスターから映画俳優へと評価も高まった。2002年はすでに2本の映画で主演をこなし、昨年末からは次の映画の撮影に入っている。以前インタビューしたときに、「映画に出続けられるというのは、とても自慢に思えることなんです」と話していた。

2003年1月下旬に日本で公開予定の映画『猟奇的な彼女』の主人公チャ・テヒョンは、デビュー以降ドラマでしばらく端役、助演に甘んじていたが、あるドラマ(『ひまわり』)でコミックキャラクターを演じてから注目されるようになり、主演を張るようになった。そして満を持して映画デビューを飾ったのが、この『猟奇的な彼女』だった。この作品は2001年夏、ハリウッド映画の強力ラインナップを押しのけて大ヒットを飾った。

韓国では、映画の成功、失敗は主演の俳優に責任が重くのしかかる。そのため皆、寄せられる脚本の中から慎重に慎重を重ねて選ぶのだが、デビュー作からしてこれほどの大成功に恵まれたのは近年珍しい。あのイ・ヨンエだってデビュー映画はうまくいかなかった。そのため、次回作は3年もの間を置いて選び抜いた『JSA』でやっと巻き返しを図ったという経緯がある。

最近では、テレビ関係者から、テレビドラマで育ったのに、スターがみな映画の方に行ってしまい、ドラマのキャスティングに苦労するというぼやきも聞かれる。だが俳優たちが映画志向になるのもむべなるかなだ。ドラマと映画では製作状況があまりに違うから・・・。

夜放送のドラマは週に2回放送が一般的なので、撮影は夜も昼もなくほぼ徹夜で進められるのだそうだ。話数が進んでくるにつれ、台本も当日渡されることが多く、俳優らは瞬発力で対応することが要求される。その点、映画はたっぷり時間を取る。俳優としては役づくりに時間をかけられ、ものを作り上げていく過程を楽しむこともできる。だから一度映画に参加すると、もうテレビドラマに戻ろうという気にはならなくなるのだそうだ。「このような構造もあり、韓国での映画上位は揺らぐことはないだろう」

延長線コラム

映画とドラマなら映画が上位といいながらも、映画俳優としても認められたトップ女優たちが、再びテレビドラマに復帰する動きも出てきている。

デビュー映画の『接続』(97年)以降、映画女優としてトップに上り詰めたチョン・ドヨンは、2002年の11月から始まったドラマ『星を射る』に5年ぶりに出演し、話題になった。また『シバジ』(86年)などで国際映画祭の主演女優賞を獲り、韓国ではワールドスターと呼ばれている大女優のカン・スヨンも、2001年にドラマに初出演することになった。悪女として知られてる歴史上の人物を描く大河歴史劇『女人天下』で、これは大人気を博した。

韓国では映画は男性スター中心。この為、女優にとっては幅広い選択肢に欠けるきらいがある。また男性スターが先にキャスティングされがちなので、大女優はギャラの高さから敬遠されることもある。テレビドラマは女性向けに制作されているし、男性スターが映画に行ってしまった今では、話題を呼ぶために、少々ギャラが高くついてもトップ女優をキャスティングしたい。その利害が一致した結果と見ることができる。