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『冬のソナタ』シンドローム

※2003年7月発刊「韓国はドラマチック」(東洋経済新報社)より

熱しやすくて冷めやすいのは、日本ばかりではない。もしかしたら、韓国は日本の上を行くかもしれない。

次々と興味の対象が移り変わり、その時々で人気のあるものに熱中する傾向がある。だから、話題のドラマや映画があると、社会現象といわんばかりの○○シンドロームがよく起きる。

そんな韓国で、2002年の上半期、最も熱い支持を受け、まさしくシンドローム現象となったのが、KBSのドラマ『冬のソナタ』だ『冬のソナタ』は、アジア各国でも放映され大反響を呼んだ名作『秋の童話』のユン・ソクホ監督の最新作で、『秋の童話』の夢よもう一度と、視聴者たちはドラマが始まる前から注目していた。

あらすじは次の通り。

――高校生のユジンと転校生のチュンサンは互い惹かれあうが、チュンサンは事故で亡くなってしまう。10年後、忘れられない初恋を胸に秘めたままユジンはインテリアデザイナーになり、幼なじみのサンヒョクと婚約していた。そんなとき、死んだはずのチュンサンそっくりの男性ミニョンが現れて、ユジンは心が激しく揺れる。ユジン、ミニョン、サンヒョクの愛と葛藤が始まる――

ここにチュンサンとミニョンの関係や、チュンサンの父親の秘密などが絡み合い、最後まで興味を引っ張っていく。

出生の秘密に記憶喪失など、事件と事情がてんこ盛りのストーリー展開だが、それがユン・ソクホ監督お得意の叙情感たっぷりの映像美で表現される。

 

ドラマで取り上げるものが
ことごとく話題になり大ヒット

『冬のソナタ』は、視聴率だけを見れば、30%に迫るものではあったが、『秋の童話』を超えてはいない。

しかし、『秋の童話』のときとは違って、裏のSBSのドラマ『女人天下』がまさに多いときで40%を誇っていた視聴率を、20%台にひきずりおろし、着実に20%台を維持してきたという功績がある。

そして、数字以上に社会現象を起こしたことに意義があるのだ。

”初恋の思い出“をテーマにしたもの悲しいストーリーと、男性主人公を演じた俳優ペ・ヨンジュンのかっこよさに、20代から40代の女性たちが熱狂し、主人公たちの髪型が流行り、2種類の違った色を組み合わせる凝った巻き方のマフラーファッション、服装、アクセサリー、OST(オリジナルサウンドトラック)等々、ドラマで取り上げるものがことごとく話題になりヒットした。

40代を飛び越して、おばさまたちの熱心な追っかけも現れた。この現象はKBSのニュースの中でも取り上げられたほどで、世の中『冬のソナタ』シンドロームになったのである。

女性たちはみんな口を開けばこのドラマの話題で盛り上がっていた。ドラマのホームページにも多いときには1万件以上の書き込みがあり、特に主役の男性を演じたペ・ヨンジュンに関心が集まり、最終回に近づくにつれ、「ペ・ヨンジュンを死なせたら二度とKBSを見ない」と嘆願メールが殺到した。

また、ドラマ関係者も食事に行くと、店の女主人から、「ペ・ヨンジュンをつらい目に遭わせる最後にしたら、もう出入り禁止だからね!」と脅されたという。とにかくものすごい注目度だった。

 

「初恋」というキーワードが
30代女性の心をとらえた

内容的には、むしろ古典的メロドラマだ。そのことが、逆に受けたのではないかといわれている。

韓国のエンターテイメントは、音楽も映画もドラマも、1992年ごろからターゲットが新世代中心にシフトしていた。

ドラマでは『嫉妬』という日本の『東京ラブストーリー』のようなトレンディードラマが初めて登場し、音楽界ではソ・テジが鮮烈にデビューし、ダンスミュージックを流行らせた。

そのため、何にしても10代向けというか、大きくいっても20代前半向けという感じで、ドラマも『イヴのすべて』や『星に願いを』などのように、新世代の愛が描かれる傾向にあった。

このような流れの中で、30代、40代のドラマファンたちは、自分たちが共感できるものを求めていた。

『冬のソナタ』の”初恋“というキーワードは、まさにその年代の心をとらえたのだろう。視聴者層は、30代が一番多かった。

このドラマを見ると、思わず10数年前の自分の初恋を思い出したり、そのころのノスタルジーに浸ったりしてしまう。

社会がどんなに激しく変わっても、決して変わらない大切なものがある。そんなことををほのかに伝えているのが『冬のソナタ』なのだ。