映画解説

映画解説一覧に戻る

強力おすすめ

タイトル 恋の罠
韓国公開年 2006年
出演者 ハン・ソッキュ イム・ボムス キム・ミンジョン アン・ネサン
監督 キム・デウ

【 映画紹介 】

『恋の罠』は、朝鮮時代を舞台に、淫らな小説を作ることに魅了された男たちを描いた、コミカルな人間ドラマです。

主人公は、朝鮮王朝きっての名文家と呼ばれるお堅い官僚の男(ハン・ソッキュ)。彼はいってみれば、朝廷に仕えるまじめな公務員なのですが、まるで一目ぼれのごとくに淫らな小説と出会い、そんな官能小説を書くことに目覚めてしまいます。

そこに、挿絵が必要だということで、義禁府の処刑役人(イ・ボムス)が趣味で描いていた絵を見て白羽の矢を立てます。そうしてまた一人、役人が隠微な世界に巻き込まれていくのですが、二人がタッグを組んだ小説はベストセラーになっていきます。ところが、内容が、王様の側室(寵妃)と自分との秘め事を綴っていたものだから、事体は王を巻き込んでの一大スキャンダルになっていくのでした。

ペ・ヨンジュン主演で話題を呼んだ『スキャンダル』の脚本家キム・デウ自身が初めてメガホンを取り、朝鮮時代のエンタメ小説に関わった人々を巧みに描写した華麗なる心理劇です。生真面目な文筆家が36歳にして淫乱小説に目覚めてしまうという新鮮な素材に奇抜なストーリーで、コミカルなドラマに仕立てながら、終盤はシェークスピア劇のようなドラマ展開になっていきます。韓国映画評論家協会賞の新人監督賞・脚本賞、そして百想芸術大賞の新人監督賞を受賞しました。

主演は、時代劇初挑戦となるハン・ソッキュにイ・ボムス、そして紅一点の王の側室(寵妃)にキム・ミンジョンが扮しています。

美術や衣装の素晴らしさには目を奪われるものがあり、大韓民国映画大賞、青龍賞、韓国映画評論家協会賞の美術賞や大鐘賞の衣装賞を受賞しています。

tashiro

この映画には様々な立場の‘性(サガ)’が出てきました。王の寵妃への憧れから書き始めた小説のはずなのに、よりリアルに、より大衆に満足してもらえるものを書くためなら何でもしてしまうようになる‘文筆家の性’。おおごとにしてまでも、自分に対する男の思いが、小説のための仕掛けではなく愛だったのだと確かめたい‘女の性’。それぞれの「ああ、わかる!」と共感できる‘サガ’がぶつかり合い、欲が残酷に渦巻いていく様が美しい映像で描かれていました。
最後、島流しにされてしまった主人公は一般的見方では気の毒な人なのでしょうが、誰にはばかることもなく好きな小説のことを思う存分に考えていられるようになり、仲間と新たな構想を練っているさまは、非常に楽しそうでした。人は、環境はどうあれ本当に好きなことをするのが幸せなんだなと思わせられます。