韓流ソムリエ 田代親世の韓国エンタメナビゲート

『猟奇的な彼女』は韓国で大ヒットしたロマンチックラブコメディーの傑作です。

一瞬ドキッとするようなタイトルですが、「猟奇的」という言葉は当時の韓国でとても流行った言葉で、タフ、特異、活発、面白いというニュアンスが含まれています。その通りに、この映画は突拍子もない破天荒な行動をとるヒロインと、彼女の為に一生懸命に尽くす純情青年の紡ぎ出す、コミカルでハートウォーミングな物語です。

大学生のキョヌがある日地下鉄で出会った‘彼女’はかわいい外見とは裏腹に、「ぶっ殺す」を連発し、気に入らないと殴るというとんでもない女性。キョヌはそんな彼女に振り回されながらも、一生懸命に彼女のために尽くすのですが、やがて、彼女には隠された悲しみがあることに気が付いていくのでした。

この作品は、インターネットで連載された、実体験をもとにした話題の小説が原作で、『僕の彼女を紹介します』『デイジー』など名ストーリーテラーでもあるクァク・チェヨン監督が、純情青年ととっぴな女の子の、コミカルでハートウォーミングな物語に仕上げました。

ヒロインのぶっ飛び女に扮するのは、当時韓国新世代スターの代表だったチョン・ジヒョン。普段はクールで神秘的な雰囲気さえ漂う彼女が、実に表情豊かに凶暴な‘彼女’を演じています。それを受けるのが、親しみやすさナンバーワンの人気を誇るチャ・テヒョン。何をされてもひたすら従ってしまう気弱な青年のやられっぷりが抜群に面白く、笑いを誘います。

ヒロインの言動にスカッとし、青年の情けないほどのおかしさにくすりと笑い、気が付けば泣かされている。なるほどそう来るかというストーリー展開。不恰好だけど暖かい、幸福感に包まれる作品です。