映画解説

映画解説一覧に戻る

おすすめ

タイトル 後悔なんてしない
韓国公開年 2006年
出演者 キム・ナムギル(イ・ハン) イ・ヨンフン キム・ドンウク キム・ジョンファ
監督 イ=ソン・ヒイル

【 映画紹介 】

『後悔なんてしない』は、孤児院出身のゲイの青年とお金持ちの御曹子の青年との男同士の切実なラブストーリーです。

ひと目で惹かれあった2人の、社会的地位の差で生じるコンプレックスや、保守的な社会の中で心を偽らなければならないやるせなさなど、人物たちの揺れ動く心を切なく描き、2006年韓国で公開された時、20代の女性を中心にマニア層が形成され、ファンクラブもできるほどの熱狂的ファンを獲得してインディペンデント映画として動員記録を作りました。韓国独立映画協会から2006年の「今年の独立映画」にも選ばれました。

この作品が長編デビュー作となるイ=ソン・ヒイル監督は、韓国で初めて自身がゲイであることをカミングアウトした監督で、それだけに、赤裸々でリアルなゲイの世界が展開されます。イ=ソン・ヒイル監督は、子供は父親の姓を継ぐなどの家父長制に対する反発から、父親と母親の姓を両方入れた名前を使っているんだそうです。そんなところからもわかるように、社会の既成概念や保守的な部分に鋭い視線を注ぎ、本作にも「勇気を持とう」というメッセージを込めています。

映画『GP506』のイ・ヨンフンが、柔らかくも確固たる部分を感じさせる独特の魅力で存在感を放っていますし、『グッバイ・ソロ』などのドラマでおなじみのイ・ハン、現在は本名に戻してキム・ナムギルとなっていますが、彼は、線の細いドラマでの印象よりも骨太な感じで登場し、悩ましい恋に取り付かれたようになっていく様を熱演しています。『コーヒープリンス1号店』『カフェ・ソウル』のキム・ドンウクや、『1%の奇跡』などのキム・ジョンファも登場します。

‘愛’という微熱を帯びた、ときおりむせかえるような熱さが感じられる作品です。

tashiro

内容が内容だけに保守的なところのある韓国において、キャスティングが難航しました。主人公のスミン役には、監督が自分の前作の短編に出演したイ・ヨンフンを気に入って、本作は脚本段階から彼を想定して書いたそうです。相手役のジョンミンのほうは、ベッドシーンもあり、表現が強すぎるとして、皆がしり込みする中、イ・ハン、ことキム・ナムギルが意欲を示して実現しました。キム・ナムギルいわく、演じるに当たっては、実際にゲイである監督から同性愛者の恋愛の方法や感情、感性について学んだことが大きかったそうです。それでも、男性相手に愛の表現をしたことが無かったので、つい女性に一目ぼれしたときの気持ちや視線を想像して演技すると、視線の投げ方や感情表現が違うといわれて、男女の愛と同性愛者の愛の違いを表現するのが大変だったと話していました。