映画解説

映画解説一覧に戻る

おすすめ

タイトル あいつの声
韓国公開年 2007年
出演者 ソル・ギョング キム・ナムジュ キム・ヨンチョル カン・ドンウォン(声)
監督 パク・ジンピョ

【 映画紹介 】

『あいつの声』は、息子を誘拐された夫婦が脅迫電話に苦しめられた絶望と怒りの44日間を描いた、実話をもとにしたヒューマンドラマです。

韓国には三大未解決事件があり、一つが『殺人の追憶』にモチーフになった「華城連続殺人事件」、もう一つが、これも映画化された『カエル少年失踪事件』、そして、今回お送りする『あいつの声』の「イ・ヒョンホ君誘拐殺害事件」です。

1991年、9歳の男の子が誘拐され、犯人からの執拗な脅迫電話があったことと、犯人が警察の追跡を悠々とかわす緻密で知能的だったという点で世間でも大きな話題になりました。16年間10万人あまりの警察官を投入しても犯人が捕まえられず結局2006年1月に時効を迎えました。

メガホンを取ったのは、『ユア・マイ・サンシャイン』のパク・ジンピョ監督です。パク監督は映画を撮る前はテレビ局でドキュメンタリー番組の仕事をしていて、この誘拐事件に関しても92年に「それが知りたい」という番組で取り上げるにあたってアシスタントディレクターとして直接父親にも取材していました。その時からいつか映画化しなければと思っていたそうです。

この作品は、犯人を捕まえるための‘公開手配劇’を標榜していました。犯人が捕まってこそ、この映画が完成するという監督の強い思いがあり、夫婦ら登場人物の設定や性格などは映画化するにあたって創作していますが、映画を通して犯人の手掛かりを知らせるために、犯人に関してだけはセリフや語り口なども含めて徹底して実際の事件に基づいて描いているそうです。

また誘拐された父母の絶望と憤りに焦点を当てているだけに、実際に子供を持つ俳優にこだわってソル・ギョングとキム・ナムジュをキャスティングしました。そしてもう一人の主役というべき犯人の声を演じているのが、カン・ドンウォンです。声とシルエットだけで顔を見せませんが、カン・ドンウォンは何回も犯人のテープを聞いて口調やリズムを再現し、科学的に比較してみても実際の犯人にそっくりだとのお墨付きをもらったそうです。

tashiro

犯人の声にカン・ドンウォンをキャスティングしたことについて、パク・ジンピョ監督は、知られていない俳優が演じたほうが、劇的緊張感が増すかもしれない一方で、映画で犯人の手掛かりを知らせて捕まえたいと思っているのに、その俳優の声が本当の犯人のものと誤解されて警察に届け出られる恐れがあると考えたそうです。なのでよく知られている俳優の中からキャスティングするべきだと考え、中でもカン・ドンウォンがシナリオを見てぜひ参加したいと申し出てくれたので出演することになったのだとか。
そのカン・ドンウォンは自分が直接登場しない場面でも現場に足を運び、ソル・ギョングやキム・ナムジュのそばで脅迫電話のセリフをしゃべって俳優たちがより感情移入できるように手助けする情熱を見せ、現場でも、映画の最大の功労者といわれたそうです。