映画解説

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強力おすすめ

タイトル スキャンダル
韓国公開年 2003年
出演者 ペ・ヨンジュン チョン・ドヨン イ・ミスク チョ・ヒョンジェ イ・ソヨン
監督 イ・ジェヨン

【 映画紹介 】

この作品はなんといっても『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンが出演した作品ということで公開時にも大きな話題になりました。フランスのラクロの小説「危険な関係」を、朝鮮時代に置き換えた時代劇メロドラマ。色男チョ・ウォン(ペ・ヨンジュン)が従姉弟のチョ氏夫人(イ・ミスク)と共に貞淑な夫人(チョン・ドヨン)を相手に仕掛ける愛のゲームのてん末を描いています。

科挙に通ったものの官職につくのを嫌い、女遊びや書画に興じている風流男チョ・ウォン。従姉弟のチョン氏夫人と、9年間貞節を守り通している女性、ヒヨンを落とせるか賭けをします。なかなか屈しないヒヨンとの攻防場面では、わざとらしいまでのあの手この手が披露され、どこまでもユーモラスですが、チョ・ウォンがヒヨンの攻略に成功したあたりから一転様子が変わり、人間関係が緊張を帯びていきます。

映画デビューとなるペ・ヨンジュンは、『冬のソナタ』とは180度違う大変身。強烈だけれど冷めたような眼差し、好色そうないやらしい眼の輝き、すべてに恵まれた人間の余裕と遊び人のちょっと自堕落な倦怠感、退廃ぶりなどが体現されていて、ドラマでの貴公子イメージが強ければ強いほど、ペ・ヨンジュンにこんな妖しい魅力があったとは…と驚かされます。そして、なまめかしく艶っぽいだけではなく、この映画の前半はプレイボーイが手練手管を使ってお堅い夫人をどう落とすかという過程をコミカルに描いているので、口では愛を説きながら心で舌を出しているというとぼけた感じなど、ユーモア演技もたっぷり。観客はもっぱらペ・ヨンジュンの表情や行動で笑わされていきます。

一方で、いざというときには最小限の切れのある動きで悪人をやっつける洗練された両班(ヤンバン)の身のこなしは、鮮やかで美しく、ペ・ヨンジュンは、多様な演技の可能性をこの1作で示しています。

そしてこの作品は2大女優の対決でもあります。イ・ミスクは1980年代を代表する最高の女優の一人。チョン・ドヨンはそれまで映画界を支える若手映画女優3本柱の一人として高い評価を得てきました。『スキャンダル』は、まさに3大スターの絢爛豪華な共演作品です。

それから見逃してはならないのが衣装や家具調度の魅力。優雅で華麗な美しさを再現するべく凝りに凝った力の入れようで、色合いの鮮やかさは目を見張るほどです。

当時新人だったチョ・ヒョンジェとイ・ソヨンも印象的な役どころで出演していますのでご注目を。

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チョ・ウォンもチョ氏夫人も、素直な気持ちを感じることなどとは無縁で来た貴族たち。‘洗練’という名の元に自分の心を仮面で隠して生きているところに‘愛’という厄介な感情が沸き上がって来ても、長年の退廃ですれてしまった心ではそれが信じられなかったんでしょうね。そんな風に自分の気持ちに懐疑的だった二人の男女が、それぞれが最後の最後に、失って初めて愛を知りますが、「とき既に遅し」という残酷さ。
『冬のソナタ』などの韓国作品は悲しみをこれでもかとこってりと描く傾向にありますが、『スキャンダル』ではその辺が乾いたタッチというか、あえてさらりとかわしているのが、かえって余韻を残していました。
純然たるコスチューム劇なのに、軽快なクラシックのリズムが全編を覆っていたのも新鮮で、役者、美術、音楽に至るまで、すべてにおいて品格が感じられ、エロチシズムがにじむ王朝絵巻を格調高いものにしていました。